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アリアの本音
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「酷いわ! 裏切りよ! アリアなんてもう知らない!」
部屋に戻った私は先ほど私を裏切ったばかりのアリアを責めた。とはいえ、あの場で使用人のアリアが口を出せなかったのは分かっている。が、アリアに目を逸らされた私は、それはそれはショックだったのだ。
頬を膨らませる私の髪を整えながら、アリアは「申し訳ありません」と俯く。それを見るとなんともいえない罪悪感に襲われ、私をため息を吐いた。
「分かっているわ。アリアは悪くないもの。ごめんなさい、八つ当たりをしたわ」
「いえ、私がエレナ様をお守りできなかったのは事実ですので……」
微妙な沈黙が降りる。アリアは私の髪をとく手を止めない。
はあぁ、それにしても三科全部か……本当に卒業できるのか不安になってきた。とりあえず試験で合格点をとることだけを考えたらいけるだろうか。いやでも来年からはもっと難しくなるって言ってたし……ひたすら勉強するしかないか。
騎士科に関してはクルトお兄様、魔法科は……教師であるヨハンを頼るのがいいとは思うけど、でもヨハンは攻略対象だしな、と思うとなかなか難しい。リリーは誰を攻略するのだろうか。正規ルートだったらカイだろうけど、でもここは私が思っている以上にゲームに忠実ではないのだ。
リリーが誰を狙うかなんてゲームが始まらないと分からない。
となると、魔法科はヘンドリックお兄様? ……嫌だ。リリーには悪いけどヨハンを頼ろう。あくまでも先生と生徒として。後は文官科。だけど文官科の先輩に知り合いはいないし、お父様もお義母様も忙しいだろう。文官科に関してはできるだけ授業に出て自力でどうにかするしかなさそうだな。
「正直なところ、エレナ様ならできると思ったのです」
アリアが手を止めてポツリと言った。さっきの続きだろうか。
「私は魔法学校の卒業生ではないので授業のレベルがどのくらいかなんて知りません。だけど、エレナ様だったらどんな不可能の可能にできると思ったのです」
「買いかぶりすぎよ。わたくしはちょっと魔法が使えるだけですわ」
「いいえ、ヘンドリック様もエレナ様でしたらできると思ったから言ったのですよ。あの方ができると言ったら本当にできるのです。厳しい方ではありますが、理不尽なことはおっしゃいません」
まあ確かに他の人が同じことを言うよりかは信じられる。が、ヘンドリックお兄様が理不尽なことは言わない? それは嘘だよ。だって母親に似てるからって理由でエレナを嫌ってたんでしょ。それ理不尽でしょ。
私の言いたいことを察したのか、アリアが「あっ」といった表情をした。
「……エレナ様に対しては少し理不尽なところがありましたね」
「ええ、本当に。人の話は聞かないわ、すぐ馬鹿にするわ、威圧してくるわ。ほんっとうにわたくしをなんだと思っているのかしら! ……でも、アリアの言うことも分かる気がするの」
普段の怒りが少し漏れてしまった。いつもならたしなめられるが、アリアは何も言わなかった。
「わたくしが本当に信頼できるのはアリアとクリスと、ヘンドリックお兄様だけ。この三人は何があってもわたくしのそばを離れないと思うし、絶対に助けてくれると確信しているの。本当のエレナではない、私だけど……」
「エレナ様……」
「なんてね!」
ちょっとしんみりしてしまった。空気を換えるために、にこっと笑うとアリアは真剣な表情で私を見ていた。その表情を見ると、笑顔が作れなくなってしまった。私まで真剣な表情になる。
「ええ、エレナ様。おっしゃる通りです。少なくとも私は一生エレナ様について行きます。何があってもエレナ様のおそばを離れませんし、裏切ることも致しません。お約束します」
アリアがどうしてここまで私に尽くしてくれるのかが分からない。本物のエレナではないと知りながら、貴族でもない私の為に。だけどその答えを聞くのはなんだか怖くて、私はただ頷いた。
「大丈夫ですよ、エレナ様でしたらなんでもできます。このアリアが保証します」
そう言って笑ったアリアの笑顔が目に染みて、上手く笑顔が作れなかった。きっと泣きそうな、不格好な笑顔になっていたんじゃないかと思った。
「え!? 全部の科を取るの!? 嘘でしょ!」
翌日、魔法省へ行こうと誘いに来たクリスに馬車の中で昨日のことを話すと、引きつったような笑顔を浮かべて驚いていた。そりゃそうだ。
「ヘンドリック様もまた無茶苦茶なこと言ったね」
「あら、わたくしお兄様が言ったなんて一言でも言ったかしら?」
全部の科を取るように言われたとしか言っていない気がするんだけど……。首を傾げる私に、クリスはけらけらと笑った。
「そんな非常識なことを言うのなんてエレナとヘンドリック様くらいしかいないよ」
そこに私が並べられることが腑に落ちない。だけど自分の行動を振り返ってみると、確かにそう思われても仕方がないところがあったかもしれない。だけど別の世界から来た、本当に常識のない私はともかく、この世界に生まれて育ったヘンドリックお兄様はどういうことだろう。あ、バグか……?
最初に言い出したのは陛下だってことをすっかり忘れていた私がそのことを思い出したのは、お城に着いてからだった。
部屋に戻った私は先ほど私を裏切ったばかりのアリアを責めた。とはいえ、あの場で使用人のアリアが口を出せなかったのは分かっている。が、アリアに目を逸らされた私は、それはそれはショックだったのだ。
頬を膨らませる私の髪を整えながら、アリアは「申し訳ありません」と俯く。それを見るとなんともいえない罪悪感に襲われ、私をため息を吐いた。
「分かっているわ。アリアは悪くないもの。ごめんなさい、八つ当たりをしたわ」
「いえ、私がエレナ様をお守りできなかったのは事実ですので……」
微妙な沈黙が降りる。アリアは私の髪をとく手を止めない。
はあぁ、それにしても三科全部か……本当に卒業できるのか不安になってきた。とりあえず試験で合格点をとることだけを考えたらいけるだろうか。いやでも来年からはもっと難しくなるって言ってたし……ひたすら勉強するしかないか。
騎士科に関してはクルトお兄様、魔法科は……教師であるヨハンを頼るのがいいとは思うけど、でもヨハンは攻略対象だしな、と思うとなかなか難しい。リリーは誰を攻略するのだろうか。正規ルートだったらカイだろうけど、でもここは私が思っている以上にゲームに忠実ではないのだ。
リリーが誰を狙うかなんてゲームが始まらないと分からない。
となると、魔法科はヘンドリックお兄様? ……嫌だ。リリーには悪いけどヨハンを頼ろう。あくまでも先生と生徒として。後は文官科。だけど文官科の先輩に知り合いはいないし、お父様もお義母様も忙しいだろう。文官科に関してはできるだけ授業に出て自力でどうにかするしかなさそうだな。
「正直なところ、エレナ様ならできると思ったのです」
アリアが手を止めてポツリと言った。さっきの続きだろうか。
「私は魔法学校の卒業生ではないので授業のレベルがどのくらいかなんて知りません。だけど、エレナ様だったらどんな不可能の可能にできると思ったのです」
「買いかぶりすぎよ。わたくしはちょっと魔法が使えるだけですわ」
「いいえ、ヘンドリック様もエレナ様でしたらできると思ったから言ったのですよ。あの方ができると言ったら本当にできるのです。厳しい方ではありますが、理不尽なことはおっしゃいません」
まあ確かに他の人が同じことを言うよりかは信じられる。が、ヘンドリックお兄様が理不尽なことは言わない? それは嘘だよ。だって母親に似てるからって理由でエレナを嫌ってたんでしょ。それ理不尽でしょ。
私の言いたいことを察したのか、アリアが「あっ」といった表情をした。
「……エレナ様に対しては少し理不尽なところがありましたね」
「ええ、本当に。人の話は聞かないわ、すぐ馬鹿にするわ、威圧してくるわ。ほんっとうにわたくしをなんだと思っているのかしら! ……でも、アリアの言うことも分かる気がするの」
普段の怒りが少し漏れてしまった。いつもならたしなめられるが、アリアは何も言わなかった。
「わたくしが本当に信頼できるのはアリアとクリスと、ヘンドリックお兄様だけ。この三人は何があってもわたくしのそばを離れないと思うし、絶対に助けてくれると確信しているの。本当のエレナではない、私だけど……」
「エレナ様……」
「なんてね!」
ちょっとしんみりしてしまった。空気を換えるために、にこっと笑うとアリアは真剣な表情で私を見ていた。その表情を見ると、笑顔が作れなくなってしまった。私まで真剣な表情になる。
「ええ、エレナ様。おっしゃる通りです。少なくとも私は一生エレナ様について行きます。何があってもエレナ様のおそばを離れませんし、裏切ることも致しません。お約束します」
アリアがどうしてここまで私に尽くしてくれるのかが分からない。本物のエレナではないと知りながら、貴族でもない私の為に。だけどその答えを聞くのはなんだか怖くて、私はただ頷いた。
「大丈夫ですよ、エレナ様でしたらなんでもできます。このアリアが保証します」
そう言って笑ったアリアの笑顔が目に染みて、上手く笑顔が作れなかった。きっと泣きそうな、不格好な笑顔になっていたんじゃないかと思った。
「え!? 全部の科を取るの!? 嘘でしょ!」
翌日、魔法省へ行こうと誘いに来たクリスに馬車の中で昨日のことを話すと、引きつったような笑顔を浮かべて驚いていた。そりゃそうだ。
「ヘンドリック様もまた無茶苦茶なこと言ったね」
「あら、わたくしお兄様が言ったなんて一言でも言ったかしら?」
全部の科を取るように言われたとしか言っていない気がするんだけど……。首を傾げる私に、クリスはけらけらと笑った。
「そんな非常識なことを言うのなんてエレナとヘンドリック様くらいしかいないよ」
そこに私が並べられることが腑に落ちない。だけど自分の行動を振り返ってみると、確かにそう思われても仕方がないところがあったかもしれない。だけど別の世界から来た、本当に常識のない私はともかく、この世界に生まれて育ったヘンドリックお兄様はどういうことだろう。あ、バグか……?
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