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黒坊編1

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「さて、今日も一仕事終えるとしようか」

「そうね、折角町に出てきたんだからパフェが食べたいわ。最近山ばっかりだったし」

 白い純白の小袖に浅葱色の袴を履き刀を提げた黒髪短髪の少年に、同じく白い小袖に緋色の袴を履き鈴付の榊を手にしたポニーテールの少女が答えた。
 二人の名前は伊庭一刀と天宮雅。
 天宮神社の見習い神職と見習い巫女である。
 二人が今居るのは開発途中の地下道だ。
 ここ最近、この工事現場で原因不明の失神をする作業者が増えており工事が中断していた。
 報道では原因不明とされているが既に妖魔の仕業と断定されていた。そして妖魔討滅を務めとする天宮神社へ密かに依頼があり二人が討滅に赴いていた。

「こんな殺風景な場所じゃ町に出てきた気分になれないわ」

 雅の実家であり、郊外と山間部の境界線上にある天宮神社は緑豊かなド田舎という感じだ。
 そのため久方ぶりに町に出てきた雅は年頃という事もあり目に映る町の風景が眩しく見えてしまう。
 着飾って遊びに行く同世代を目にした後、暗い地底を仕事のための衣装として巫女服を着ていると何処か焦燥感を感じる。

「じゃあ、さ。終わったら遊びに行こうか」

 隣で聞いていた一刀が気軽に答える。同い年の一刀も年相応の少年であり町で遊びたい。

「いいの?」

「ああ、折角町に出てきたんだし」

「討滅が終わってから遊びに出たんじゃ変えるのが遅くなるわよ」

「構わないよ。何だったら泊まっていけばいい。というか泊まろうよっ」

「それはダメ!」

 早口に捲し立てる一刀の口を雅は顔ごと塞いだ。
 思春期という事もあり性欲が増しているが、一刀のはここ数日凄く押してきていて、雅は返すだけで精一杯だ。
 自分が原因でもあるし、一刀とするのは嫌いでは無い。だが性欲を丸出しにするのは情緒が無いので時間と場所を弁えて欲しい雅である。

「居たわ」

 雅が言うとそれまでの雰囲気を霧消させ一刀は首位を警戒する。
 雅は精気を操り周囲にいる妖魔の精気を感じ取ることが出来る。雅が気配を察知したら確実に妖魔が居ると見て間違いない。

「何処にいるか分かる?」

「左前の側坑よ」

 雅の指摘に反応するかのように側坑から肌の黒い相撲取りが三倍の大きさになったような巨大な妖魔が現れ二人を見下ろす。

「黒坊か」

 江戸時代の絵巻物に出てくる妖怪で正体はよく分からない。
 だが天宮の家では人の欲望が集まって出来た妖魔と考えられていた。
 巨大な身体で人を叩いたり、女性を襲ったりする厄介な妖魔だ。

「うおおおおっっっ」

「せいっ」

 咆哮を上げてやって来る黒坊に一刀は刀を抜いて迎え撃つ 。

「ぐぎっ」

 鋭い斬撃に黒坊は一瞬怯む。

「よし叩き込むぞ」

 黒坊が見せた隙へ追い打ちを掛けようとする一刀。だが黒坊は近づいて来る一刀に向かって大きく息を吸うと更なる大声を張り上げた。

「おああああああああっっ」

「ぐはっ」

 強烈な大音響による衝撃波で一刀は跳ね返されてしまった。

「ふむ、やるな。だが時間は稼げた」

 一刀が攻撃を仕掛けている間に、後ろにいた雅が術式を展開、黒坊に向かって放つ。

「滅せよ」

 雅の周辺に展開していた人形が光り一斉に黒坊に向かって飛んで行き光を爆ぜる。

「ぐおおおう」

 攻撃で黒坊は悲鳴を上げるが尚も抵抗する。

「くっ、倒しきれない。こうなったら」

 雅は榊に印を込め、術式を展開すると変身。ショルダーオフのインナーに同じくショルダーオフの小袖、ミニのような丈の短い緋色の袴の戦闘巫女服に変わる。
 そして雅は榊に精気を込めて弓に変形させて矢をつがえた。

「倒れなさい」

 弓矢に自分の精気を込めてミニ袴が揺れて緋色のインナーが丸見えになるのも構わず、衝撃波を周囲にまき散らすほどの高速で弓矢を放つ。
 矢自体の速力と込められた精気で黒坊を叩きのめす。
 爆風の余波を二人は片腕を前にやってかわしていく。

「やったの」

 一刀が尋ねたとき、黒坊が爆煙の中から現れた。
 咄嗟に一刀が前に出るが質量差がありすぎて壁に飛ばされる。

「ぐはっ」

 壁に叩き付けられて、一刀は床に倒れた。

「くそっ、やっぱり黒坊は相性が悪い」

 体重の軽い一刀や雅だとどうしても寄り切られてしまう。

「あうっ」

「雅!」

 振り向くと雅が黒坊に捕まり床に押さえつけられていた。
 黒坊は雅の戦闘巫女服の胸元に手を掛けて白い小袖と緋色のインナーごと引きはがす。

「い、いや!」

 豊満な乳房を露出させられた雅は悲鳴を上げるが黒坊の手は止まらない。
 太くゴツい指が胸を鷲掴みして乱暴に握る。

「い、いたい。止めて!」

「雅から離れろ!」

 痛む身体に発破を掛けて一刀は立ち上がり、黒坊に向かって刀を振り下ろした。
 しかし黒坊は腕を一振りして一刀をはじき返した。

「ぐはっ」

 後ろに吹き飛ばされた一刀は再び床に倒れる。

「い、一刀、い、いや」

 雅は叫ぶが直ぐに魔の手は矛先を向けてくる。
 黒坊の手がミニ袴の結び目を引き千切り、ハイレグインナーで覆われた雅の腰を露わにする。そして魔の手は雅の大事な部分に伸びようとしていた。

「雅!」

 一刀が再び駆けつけようとしたとき、雅の身体からから光が溢れた。
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