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天宮神社の義兄妹

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  関東某県の山の中、そこに十代後半の男女二人が歩いていた。
 一人は天宮刀護。
 男子で顔は整っているが身体が華奢なため、女子のように見える。
 もう一人は天宮美兎。
 艶やかな長い黒髪をアップ気味のポニーテールで束ねたスレンダーながら凛とした容姿の少女だった。
 釣り上がった大きな黒い瞳に赤みがかった光を放つ美人だったが、何処か未熟なところがあるため幼さが残っていた。
 二人とも同じ名字だが、美兎は生まれる前に遠縁の母親が刀護の家に居候をしているため幼い頃から兄妹のように一緒に過ごしてきた。

「そろそろだね美兎」
「はい、あに様」

 町から離れ人気の無い山奥までやってくると、二人は荷物を下ろし、服を脱ぎ始め裸体を外気に晒す。
 そして、持ってきた荷物の中から刀護は水色の袴と白い小袖を、美兎は、緋色の袴に白い小袖を取り出し身につける。
 神社の禰宜と巫女の服装だった。
 それもそのはず、二人は天宮神社の子供で在り、見習い禰宜と巫女だった。

「美兎、準備できた?」
「はい、あに様」
「じゃあ、行こうか」

 先ほどとより、ピンと気を引き締めた二人は更に人気の無い山奥へ向かっていく。

「今回の妖魔は強いみたいだから気をつけて」

 厳かに緊張感をもって刀護は言った。
 小さい天宮神社だが、代々、神気というエネルギーを扱うことに長けている人間を生み出してきた。
 この神気は妖魔を討つときに使われ、古来より人間に害を及ぼす妖魔を密かに葬ってきた。そのため天宮神社は時の権力者に保護され、千年以上も続いている。
 現在でも現れる妖魔を倒しており、刀護も美兎もその役目を幼い頃から果たしていた。

「は、はい、なのです!」

 上ずった声で美兎が答える。

「そんなに緊張しないで。いつも通りやろう」
「は、はい」

 苦笑する刀護に、美兎は恥ずかしそうに頷く。
 妖魔を恐れたことはないが、刀護のあしだけは引っ張りたくない。

「もし、またなってしまったら……」

 二人が仕事を、しくじったことはない。
 だが、美兎はある事を恐れていた。

「大丈夫だよ。僕が付いているから」
「で、ですが、美兎が、あに様にご迷惑をかけてしまうかも」
「大丈夫。美兎は、しっかり僕を手伝って、お役目を果たしてくれるよ」
「あに様」

 刀護の言葉に美兎は感極まり目尻に涙を浮かべる。
 明るい気持ちになった美兎は涙を拭い明るい笑顔で、刀護と共に進んでいく。
 暫くして刀護は前方を見つめた。

「見つけた」

 見つめた先には、黒い靄のような物体。
 実体化する前の妖魔がいた。
 ここ最近、近くのほこらがマナーの悪い登山客に破壊され、封印が解けて、解放され、周辺の人間を襲っていた。
 そのため天宮神社に討伐要請が来て、二人がお役目を果たすことになったのだ。

「強力そうな妖魔だな」
「あに様、お任せください」

 そう言うと美兎は、鈴を鳴らし、精神を統一し神気を自分の身体に流し始めた。
 美兎の身体は光り始め、身につけていた小袖や緋袴が光の粒になって周囲を回る。
 やがて光の粒は美兎の身体に張り付き、新たな衣装となっていく。
 肩が剥き出しの赤縁の付いた白いハイレグスーツ。
 緋袴がクロッチを覆うがミニの上に横に隙間が在り、きわどい角度が丸見えだ。
 脚は、白いロングタイツと、緋色のブーツに包まれている。
 腕は肘まである白いロンググローブを包むのはゆったりとした裾で、右手には弓を持っている。
 官能的ながらも、これが天宮神社の退魔巫女の装束だった。

「私が仕留めます。あに様は、封印を」
「でも、大丈夫かい」
「平気です」
「……じゃあ、頼むよ」
「はい」

 自信満々に見せる、美兎に刀護は頼んだ。
 変身した美兎は神気で矢を作りだし、弓で放った。

「ぐおおっっ」

 矢が命中すると妖魔から悲鳴が上がった。
 逃れようとするが刀護が右手で印を作り祝詞を唱える。すると周りに紙垂が飛び回り妖魔の周りを封じ固める。
 妖魔は逃れようとするが逃れられない

「さすがです! あに様!」

 封印の術に関しては刀護は優れており、天宮神社でも一、二を争う使い手だ。
 美兎が放った一撃で弱まっていたこともあり、妖魔は封印された、かに見えた。

「くっ」

 だが刀護は、苦悶の表情を浮かべた。

「どうしました、あに様」
「妖魔の力が強い」

 接触したときの感触から強い事は分かっていたが、自分より強いとは思わなかった。

「このままだと破られる」

 次の瞬間封印の一部が解けて、妖魔の身体が刀護達に向かう。

「あに様に触れるな!」

 美兎が前に出て再び弓を放つ。
 だが、放たれた矢は妖魔に弾き飛ばされた。

「ううう、練習したのに」

 血の滲むような修行で弓を放てるようになったのに妖魔に弾き飛ばされて美兎は悲しかった。
 再び放とうとするが、妖魔の方が早かった。

「きゃあっ」

 靄のような妖魔に捕まり、全身に巻き付かれ美兎が悲鳴を上げる。

「は、放すのです!」

 神気を練って、靄のような妖魔を跳ね返そうとするが上手くいかなかった。
 奥の手があるが、使いたくない。
 その間にも妖魔の一部が美兎に襲いかかる。
 身体の隅々まで靄が這い寄り、美兎のスレンダーだが整った身体を這い回る。
 大胆に露出した肌を舐め上げ、流麗な四肢を締め上げ、未熟な膨らみを揉み上げ、開口部から衣装と身体の隙間に入る込もうとする。

「ま、待つのです! 止めるのです!」

 身体を嬲られる感触に美兎は悲鳴を上げる。
 陵辱される恐怖もそうだが、最愛の人に、刀護に自分が穢されるところを見られたくなかった。
 だが妖魔は止めず身体に更に巻き付き、乙女の聖域へ食指を動かす。

「そ、そこはダメなのです!」

 最も敏感な部分に触れようとして悲鳴を上げた。
 恐怖と緊張でクロッチ越しにも形が露わになるほどプックリと膨らんだ二枚貝の裂け目に、膨らんで肉厚の恥肉に妖魔の靄が伸びていく。

「あうっ」

 触れられた瞬間、美兎は一瞬だけ悲鳴を上げ、口を固く閉ざす。
 はしたない声だけは出したくない、刀護に聞かれたくないという一心で口を閉ざす。
 しかし伝わってくる快感に、今にも洩れそうな声を押し殺そうとして美兎の顔が苦悶に歪む。

「美兎!」

 捕まり、苦悶の表情を浮かべる美兎を見て動揺した刀護が、刀を引き抜き斬りかかる。
 しかし、一部を切断したが、妖魔はすぐに修復し刀護を叩きのめす。

「ぐはっ」

 衝撃で刀護が悲鳴を上げた。

「あに様!」

 刀護が叩かれた事に美兎が伝わる快感を忘れ、悲鳴を上げる。
 そして、こみ上げる怒りを声にして出した。

「あに様を傷つけるな!」

 激怒と共に、美兎の身体から神気とは違うエネルギーがあふれ出てきた。
 それは美兎の身体から放たれ抑えていた妖魔の一部すら吹き飛ばし、周囲を白く染めた。
 やがて光が収まると、その中心にいたのは巫女服姿の美兎、ではなく、バニーガールだった。
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