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変身したのはバニーガール

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 それはまさしくバニーガールだった。
 肩と腰に付いた丸い尻尾まで背中が露出した黒いバニースーツ。
 エグい角度でカットされたハイレグからは黒いタイツに包まれた脚が膝まであるロングブーツに収まり、高いヒールが美兎の背筋を更に凜々しくする。
 腕は黒いロンググローブに包まれ右手には黒い檜扇が握られている。
 肩の部分は左右一体の肩当てがつき、そこから裏地の赤い黒マントが伸びている。
 華奢な体つきだったが胸が豊満となり縁取りされたファーが隠そうとするが、圧倒的なボリュームを隠しきれず深い谷間をより強調していた。
 マントで隠れて見えないが、お尻も少し膨らみ、スーツが食い込んでいて敏感な部分を締め上げている感覚が伝わって来る。
 そして頭には、前髪と後ろ髪の間からカチューシャではなく耳が直に生えていた。

「ううっ、恥ずかしいのです」

 妖魔から解放されるも変身した自分の姿を見て、美兎は羞恥で顔を紅く染める。
 右手に檜扇を握りしめたまま胸をかくし、左手でスースーするハイレグ部分を隠そうとする。
 両足も、ハイレグを隠そうとモジモジするが余計に扇情的な動きとなってしまった。
 動く度にクロッチが動き妖艶な曲面を作るエナメルが妖しい光を反射し、見る者の目を眩ませる。
 それを隠そうとしても、ほっそりとした指はラインだけでも流麗で美しいのに、黒光りするグローブに包まれている上、黒いスーツとタイツが背景となって余計に輪郭が妖しく浮きだっている。
 押さえている胸も先ほどより遙かに豊満なメロンとなり、腕から両半球がこぼれ落ちるどころか、締め上げられて柔らかい肉感を淫靡に伝えてしまっている。
 ただでさえ恥ずかしく淫らな姿がより妖艶になってしまっていた。

「ぐおおっっ」

 そこへ妖魔が再び、身体の一部を伸ばし美兎に襲い掛かろうとした。

「来るな! なのです!」

 美兎は檜扇を広げると妖魔に向けて翻し、熱線を放ち、妖魔の靄を貫き、霧消させた。

「ぎゃあああっっ」

 妖魔から悲鳴が上がる。
 先ほどの矢より遙かに威力のある攻撃に妖魔は焦る。

「うう、どうして矢でこの威力が出せないのですか」

 だが、攻撃した美兎は、弱々しい表情で落ち込みながら言う。
 もし先ほどの矢で同じ威力を出せればピンチにならずに済んだ。

「このような破廉恥な格好になる事も無かったのです」

 再び恥ずかしそうに内股になりながら檜扇も使って胸元を、そして扇情的な全身を隠そうとする。
 だが、隠そうとすればするほど、隙間から隠しきれない部分がチラチラと見えてしまい余計に扇情的になる。
 その間に妖魔は美兎に敵わないとみるやいなや、もう一人、刀護へ向かって行く。
 先ほどまで刀護が封印していたが、捕らえられたために術が弱まり妖魔は解放され自由に動けるようになっていた。
 妖魔は、刀護に纏わり付き、締め上げる。

「ぐああっうううっ」

 全身が軋むような激痛に刀護は悲鳴を上げ悶絶する。

「あに様!」

 刀護の悲鳴と苦悶を浮かべる表情を見て美兎の顔から血の気が引いた。

「おのれ!」

 そして、刀護を苦しめる妖魔に怒りと殺意が湧き上がり、それまで抱いて羞恥を吹き飛ばした。
 怒りで顔が覆われ歯を剥き出しにし、弱々しかった眉を止せ、目に力を入れて睨み付ける。

「あに様から離れろ!」

 身体から湧いてくる怒りが声に出て叫び、檜扇を前に突き出して衝撃波を放つ。

「ぐおおおっっ」

 衝撃波を受けた妖魔は刀護から引き剥がされた。

「がはっ」

 靄が晴れていくように刀護の身体から剥がれて行き、刀護が現れる。

「あに様! 大丈夫ですか!」
「ああ、平気。助かったよ」

 刀護は美兎に答えた。
 絶妙な力加減のため、そして刀護を傷つけまいとする思いから、刀護の身体には衝撃波は当たらず、傷一つ無かった。

「良かった」

 ホッとする美兎だが、妖魔への怒りは収まらなかった。

「よくも、あに様を!」

 美兎は檜扇を妖魔に向けるとその下に左手を添え、エネルギーを集めた。

「はっ」

 かけ声と共にエネルギーが放出されて左手と檜扇の間にエネルギーの塊が球体となって現れる。
 強烈なエネルギーを持つ球体は光を放ち徐々に大きくなっていく。
 やがて球体は美兎の身体より大きくなり、美兎は抱えるように持ち上げ背中を逸らせる。

「あに様を傷つけた愚か者!」

 細く長い左足を膝が胸に付くほど引き上げながら美兎は叫ぶ。

「塵となるのです!」

 引き上げた左足を前に出しヒールを地面に突き刺して軸にしながら、細い腰を捻る。
 流麗なラインを持つ背中を伸ばし、腋を見せるほど肩を前に出す。
 鞭のように黒光りするロンググローブに包まれた腕をしならせる。
 生み出した強い遠心力で檜扇の先に作った巨大な光球を振り回し、高速で妖魔に向かって投げ飛ばした。

「ぎゃああああっっっっっ」

 逃げる余裕もなく妖魔は巨大な光球の直撃を受ける。
 妖魔の体積より遙かに大きな光球に包み込まれ、消滅してしまった。

「ふふふっ、あに様を傷つける者は塵となるのです」

 酷薄な笑みを浮かべて妖魔が消え去った空間を見下ろした。
 自分の最愛の兄を傷つけ痛み付けた妖魔など、邪悪でしかない。
 この世から消え失せるべきだ。
 自分の手で葬り去れたことに美兎は満足し笑みを浮かべた。
 だが凄まじい威力と、悪役のような雰囲気を放つ美兎に流石の刀護は少し引き気味だった。
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