正義の方程式 ~ヒーローにあこがれた少年は気が付くと悪の親玉になっていた~

武田コウ

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スカウト

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 とある街中のオフィスの一室、そう言ってセルジオは目の前の男を睨み付ける。ギロリと大きく見開かれた鋭い目つきは彼の長身も相まって凄まじい迫力を生み出している。




 室内にはデスクを挟んで椅子にかけている二人だけ。睨み付けられたソードと名乗る男は巨体のセルジオに睨み付けられて一切怯む事も無く濃い隈の浮かんだ目で怠そうに視線を返すと、持っていたトランクケースをデスクの上に置いてそれを開いた。




 中にはぎっしりと札束が詰まっている。




「これはとりあえずの手付金と思って貰って良い。うちの組織は巨大だ、金払いはアンタが経験したどんな取引先より良いという事を保証しよう」




「・・・なるほど、どうやら本気でこの麻薬王を買おうとしてるらしいな。もし仮に俺様がお前達の下につくとして・・・お前達は俺様に何を求める?」




 肩眉を上げて脅すような口調で尋ねたセルジオにソードは淡々と答えた。




「基本的にはいつも通りに動いて貰って構わない。もちろんボスからの命令があるときはその仕事をやってもらう事になるがそれ以外の事について行動に制限はかけないつもりだ。それにアンタが希望するなら組織的にアンタの仕事を援助する事もできる」




 話を聞く限りではかなりの好待遇だ。これ以上無いと言っても良い。しかしこれだけの大金をポイと出せる組織の存在を、裏社会に広く顔の利くセルジオが今まで聞いたことも無かったという事も妙な話だった。




「・・・聞く限りではかなり良い条件だ・・・という事はそのボスの頼み事とやらがよっぽどヤバい仕事なのか? 俺の麻薬売買の上納金をせびっても来ない・・・正直その条件だとお前達に利益があるように思えないんだが何が狙いだ?」




 麻薬王であるセルジオを引き入れる最も大きなメリットというのはその強大な麻薬の市場をコントロール出来る事による利益だろう。




 しかし目の前の男はその利益に噛ませろとは一言も言わなかった。




「・・・確かに普通の組織なら組織で仕事を補助する代わりに売り上げの何パーセントかを上納金として取り立てるだろうな。だがさっきも話したようにうちの組織は大きな組織だ、そして金には特に困っていない」




「ならば何故俺様に声をかける?」




「ボスはアンタの麻薬王としての側面では無くてアンタ自身の能力を高く評価している。その加速能力だけじゃない、麻薬王として個人で成り上がったその手腕や引き際を心得ている冷静さもだ。・・・ボスは来たるべきデカい作戦に備えて優秀な手駒を集めてるんだよ」




「デカい作戦だと?」




「内容については俺からは話せない。アンタが仲間になるんだったらボスから直接説明があるだろう」




 言うべきことはすべて言い終えたとばかりに椅子に深く腰をかけてじっとセルジオを見据えるソード。

 セルジオは少し考えたような顔を浮かべてから立ち上がり、部屋の窓まで歩くとそっと外を見た。すっきりしない曇り空が広がっている。




「なるほど今の説明で俺様を欲しがる理由は納得がいった・・・待遇も申し分ないし何よりお前達のボスに興味がある。お前達の下につくのもやぶさかでは無い・・・が、一つだけ大きな問題がある」




「それは?」




 ソードの問いに曇り空を見ていたセルジオはニヤリと笑った。




「俺様は自分より弱い奴の下につく気はねえ」




 次の瞬間セルジオの姿が消える。




 加速の能力を発動したセルジオは一瞬でソードの目の前まで移動すると挨拶とばかりにその巨大な右拳をソードの腹部に叩き込んだ。




「イデェ!?!!」




 しかし悲鳴を上げて無様に転げたのはセルジオの方であった。ソードに叩き込んだ右拳はざっくりと鋭い刃物で斬られたような深い傷がついている。




 床に転げたセルジオに素早く馬乗りになったソードは刃に変化させた己の右手をセルジオの喉元に突きつけた。




「これで最後の問題も解消したな。ようこそセルジオ・バレンタイン。俺たちはお前を歓迎しよう」








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