43 / 70
刃
しおりを挟む
「・・・アナタは?」
ポールはかすれた声で尋ねた。
見たところ警察では無さそうだ。それどころか男は柔和な笑みを浮かべてはいるモノの、カタギの人間では無いようにすら思えた。
その柔らかな笑みの裏側に、隠しきれない狂気が潜んでいるような圧をポールは感じ取ったのだ。
「私の名前はジョセフ、ジョセフ・ボールドウィンだ・・・まあ名前などどうでもいいか。君の問いに答えようポール・T・ジャスティス」
ジョセフは真っ直ぐな目線でポールの瞳を覗き込む。
何もかもが見透かされたような気がして少し居心地が悪くなった。
「・・・そうだな。私という存在を一言で表すのならば・・・”正義の味方になり損ねたモノ” とでも言おうか」
正義の味方に・・・なり損ねた・・・。
ポールはジョセフが言った言葉を頭の中で繰り返す。何故かその言葉は、モヤが掛かったように正常に働いていないポールの思考の奥底に、ストンと抵抗なく入り込んでくるようだった。
「ポール、私の顔に醜い火傷の跡があるだろう? 私は幼少の頃に大きな火事に巻き込まれてしまってね、この傷はその時に負ったモノなんだ」
ジョセフは静かな声で語り始める。
「我が愛しき母君は、大火事の中幼い私の手をふりほどいて一人でサッサと逃げてしまった・・・炎の燃えさかる建物の中で取り残された幼い少年。生存は絶望的だ。だがそんな生きることを半ば諦めた私の前に颯爽と現れたのは一人のヒーローだった」
そう語り聞かせるジョセフの目は、まるで輝かしい過去を懐かしむかのように優しく細められていた。
「その時私は初めて正義を知った・・・そして憧れたさ、”正義の味方” ってやつにね」
そしてジョセフはゆっくりと自身の懐に手を入れると中から安物のハロウィンマスクを取り出すと何故かそのままマスクを被った。
不気味なゴム製のマスクは、まるでソレが彼の本当の顔であるかのような表情をして、違和感なくその立ち姿に馴染んでいる。
「・・・しかし残念ながら私は正義を行う事ができなかった。正義を行おうと試みる度に、炎の中私の手を振り払った母親の姿が頭を過ぎって・・・そして世界を憎んでしまうんだ」
今ジョセフはどんな表情を浮かべているのだろうか。
自身の過去を語るその声は淡々としており、表情の無いゴム製のマスクだけが不気味にポールを見つめている。
「どうやら私は正義に憧れる事はできても、正義を行う事は出来ない人間らしい」
皮肉げにそう言ったジョセフの言葉に、ポールは雷に打たれたような衝撃を受けた。
気がついてしまったのだ。
目の前のこの男は自分と同じなのだと。
「ポール、君のことは調べさせて貰ったよ・・・どうやら君も私の同類らしいね」
ジョセフの視線がちらりとポールの腕に向けられる。
「体を刃に変化させる能力・・・素晴らしい力だ。その力を私の目的のために貸してはくれないだろうか?」
「・・・アナタの目的?」
「ああ」
そこでジョセフは一呼吸置いて、ゆっくりとポールの元まで歩み寄る。
ポールの肩に手をおいて、ジッと目線を合わせた。
「正義になりそこねた我々が、悪を持って正義に問いを投げかけるのさ」
◇
ポールはかすれた声で尋ねた。
見たところ警察では無さそうだ。それどころか男は柔和な笑みを浮かべてはいるモノの、カタギの人間では無いようにすら思えた。
その柔らかな笑みの裏側に、隠しきれない狂気が潜んでいるような圧をポールは感じ取ったのだ。
「私の名前はジョセフ、ジョセフ・ボールドウィンだ・・・まあ名前などどうでもいいか。君の問いに答えようポール・T・ジャスティス」
ジョセフは真っ直ぐな目線でポールの瞳を覗き込む。
何もかもが見透かされたような気がして少し居心地が悪くなった。
「・・・そうだな。私という存在を一言で表すのならば・・・”正義の味方になり損ねたモノ” とでも言おうか」
正義の味方に・・・なり損ねた・・・。
ポールはジョセフが言った言葉を頭の中で繰り返す。何故かその言葉は、モヤが掛かったように正常に働いていないポールの思考の奥底に、ストンと抵抗なく入り込んでくるようだった。
「ポール、私の顔に醜い火傷の跡があるだろう? 私は幼少の頃に大きな火事に巻き込まれてしまってね、この傷はその時に負ったモノなんだ」
ジョセフは静かな声で語り始める。
「我が愛しき母君は、大火事の中幼い私の手をふりほどいて一人でサッサと逃げてしまった・・・炎の燃えさかる建物の中で取り残された幼い少年。生存は絶望的だ。だがそんな生きることを半ば諦めた私の前に颯爽と現れたのは一人のヒーローだった」
そう語り聞かせるジョセフの目は、まるで輝かしい過去を懐かしむかのように優しく細められていた。
「その時私は初めて正義を知った・・・そして憧れたさ、”正義の味方” ってやつにね」
そしてジョセフはゆっくりと自身の懐に手を入れると中から安物のハロウィンマスクを取り出すと何故かそのままマスクを被った。
不気味なゴム製のマスクは、まるでソレが彼の本当の顔であるかのような表情をして、違和感なくその立ち姿に馴染んでいる。
「・・・しかし残念ながら私は正義を行う事ができなかった。正義を行おうと試みる度に、炎の中私の手を振り払った母親の姿が頭を過ぎって・・・そして世界を憎んでしまうんだ」
今ジョセフはどんな表情を浮かべているのだろうか。
自身の過去を語るその声は淡々としており、表情の無いゴム製のマスクだけが不気味にポールを見つめている。
「どうやら私は正義に憧れる事はできても、正義を行う事は出来ない人間らしい」
皮肉げにそう言ったジョセフの言葉に、ポールは雷に打たれたような衝撃を受けた。
気がついてしまったのだ。
目の前のこの男は自分と同じなのだと。
「ポール、君のことは調べさせて貰ったよ・・・どうやら君も私の同類らしいね」
ジョセフの視線がちらりとポールの腕に向けられる。
「体を刃に変化させる能力・・・素晴らしい力だ。その力を私の目的のために貸してはくれないだろうか?」
「・・・アナタの目的?」
「ああ」
そこでジョセフは一呼吸置いて、ゆっくりとポールの元まで歩み寄る。
ポールの肩に手をおいて、ジッと目線を合わせた。
「正義になりそこねた我々が、悪を持って正義に問いを投げかけるのさ」
◇
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる