赤箱

夢幻成人

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箱隠しの章

隠匿

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寝すぎてしまった。
良太はハッと目を覚まし、あたりを見回した。
思いのほか頭はすっきりしている。
一度寝たからであろう、あんなに激しく襲い掛かってきた、
睡魔はどこかに消え去っていた。

ベッドから降りて、時計を見ると、11時30分を指している。
保健室の先生は、どこかに行ってしまっただろう、周りには誰もいなかった。
昼休み前に起きれた事で、ホッとして、教室に戻りたかった良太であるが、

(先生が帰ってくるまで、待っていないといけないか)

断らないとまずいだろうと判断して、しばらく居る事に決めた。

良太は保健室に張られている、プリントなどを見て回り、
落ち着かない様子で、あたりをウロウロし始めた。
保健室からはグランドが見渡せ、その奥には、
今では立ち入り禁止となっている、木造建ての旧校舎が見えている。
呆けながら外を眺めていると、保健室に誰かが入ってくる音がした。

がらっ!!

「杉山君、起きていたんですね。」
「体調は良くなりましたか?」

保健室の先生が帰ってきて、良太に体調の確認をする。

「大丈夫ですよ、もぅ良くなりましたから」
「皆が心配していると思うので、教室に戻ろうと思います」

「それでは、戻る前に一度、体温だけは測っておきましょうか」
そういうと先生は、体温計を取り出し、アルコール消毒して
良太に手渡した。

ピピッ!ピピッ!ピピッ!
体温計がなると取り出して、先生に手渡した。

「36.4℃ね、熱はなさそうだし、顔色も良くなったから、大丈夫そうね」
「今から戻っても、授業が中途半端になるけど…」
「教室に戻る?」

先生は、特段戻らなくてもいい雰囲気で話す。
一度戻ると決めた良太であったが、
しばらく考えて、午前中は保健室で過ごす事を選択した。
教室に早く戻りたかったが、途中から授業に参加しても、
無意味に注目の的になるのを、避けたかっただけである。

時刻は11時55分、
今から、教室に戻れば、ちょうど昼休みに着く計算だ。
先生に礼を言うと、教室に辿り着く間に、
如何にして、藤宮に噂の話を聞き出すか考えていた。

キーン・コーン・カーン・コーン

昼休みを知らせるチャイムと共に、
一斉に教室からは、先生と生徒が出てきた。
途中、慎也と関とすれ違った。

「具合よくなったか?」
慎也が体調について聞いてきた。

「あぁ、もぅ良くなったよ」
「午後は大丈夫そうだ」

「そっかぁ、食堂に行かないのか?」

「奢ってくれるのか?」

「何でそうなるんだよ!!」
笑いながら慎也が聞き返してくる。

「財布はカバンに入れてるからな、取ってくるんだよ」

「おぉ、そうか、じゃぁ食堂に先に行ってるわ」
慎也は良太に伝えると、他の生徒達と波に乗って進み始めた。

「早く、行こうぜ」
その先では、関が慎也を急かしている。
よほど、腹が減っていたのだろう。

そんな二人を見送ると、良太は教室へと足早に歩いた。
教室では弁当組の生徒たちが、楽しそうに談笑しながら、
昼食に励んでいる。
藤宮は一人で、黙々と弁当を食べていた。

「藤宮、朝言ったこと覚えてる?」

「おっ、杉山、ちゃんと覚えてるけど、具合大丈夫か?」
藤宮は、心配していないような顔つきで、聞いてくる。

「大丈夫だよ、それより、朝話した事、飯終わってからでいいか?」

「あぁ、別にいいよ」

「じゃぁ悪いんだけど…12時半に視聴覚室に来れるか?」
昼間の視聴覚室は解放されているが、機材が使えない事から
生徒達が出入りする事はまずなかった。

「教室じゃ駄目なのか?」
藤宮が不思議そうに聞き返してくるが、
良太は教室にいると色々、邪魔が入ると考えていた。

「まぁ、そのなんだ、噂の話だけど」
「真剣に聞いてみたいことがあって…」

教室では駄目な理由を、はぐらかしながら、
視聴覚室で、了承してくれと強く願っていた。

「まぁ、構わないけど、12時30分ね、わかったよ」

「ありがとう、そしたら、俺、急いで飯食ってくるわ」

良太はそう告げると、カバンから財布を取り、
教室を抜け出して、急いで食堂に向かうのであった。

食堂についた良太は、調理の早い、うどんを受け取ると、
慎也達の席へと向かった。
二人には気づかれたくない事から、
昼休みは予定がある事を、それとなく伝えて。
うどんを平らげると、さっさと食堂を後にするのだった。

「どうしたんだろうな、あいつ」
「さぁ…」

不思議そうな顔で、慎也と関が良太の後姿を、見送っていた。
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