赤箱

夢幻成人

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箱隠しの章

調査

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視聴覚室に入ってみると、藤宮はまだ到着していなかった。

(ちょっと、早く、着すぎたか)

良太が時計に視線を向けた時に、藤宮が視聴覚室に到着した。

「ごめん、待たせちゃったかな?」

「いや、俺も、今、来たところだよ」

「それで聞きたい噂って何?」
さすが、藤宮だ。
オカルト話になると、途端に真剣な顔つきになる。

「その、噂の話何だが、赤い箱の話って、知ってるか?」

「あぁ、知ってるよ!!僕も、最近、知ったんだけどね」

(そうなのか・・・)
てっきり、藤宮の事だから、前から知っているのかと思っていたが、
予想外な回答が飛び出してきた。

「その、赤い箱なんだけど、好きな子の名前を書くと…
 付き合えるって、話じゃん」
 
「うん、そうだよ」

「でもそれには箱を隠さないといけないんだろ?」

「そうだね、箱を隠さないと付き合えないって話だから…」

「その箱が、もし、見つかったら…どうなってしまうんだ」

「中身を見られなければ、大丈夫みたいだけど…」
「でも、中に書かれている内容を見られると効果が出ないみたいだよ」

「効果が無いって言うのは、付き合えないって事なのか」

「そうみたいだね、実際見られた人が、いるのかわからないから」
「確証は持てないけど」

「ふ~ん、やっぱりそうなのか」
良太は自分の予想が当たっていた事で、
隠す場所が最重要になると考えた。

「あっ、もう一つ教えてほしいんだ」
「その隠すってのはどこでもいいのか?」

「う~ん…僕の見立てでは、神鳴高校内じゃないと…駄目かもしれない」

「えっ?」
良太は、思いもよらぬ回答に、一瞬驚愕した。

「町では、そんな噂がないからね。赤い箱の噂って、神鳴高校だけの極一部の噂だから」
「それに、この噂って、実は男子しか広まってないんだよね」
「女子に聞いても、知らない人が多くて」
「知ってても、効果が無いとか、そんな回答しか貰えなかったよ」
藤宮は淡々と述べているが、良太にとってはさらに驚愕の回答だった。

「普通、噂って男女共通だろ」
「まして、誰かと付き合えるなら、女子達が実行するに決まってる。と思うんだが…」
真っ当な、反論であった。
恋愛系の噂なら、女子達は少なからず、実行したいと思うのは当然だ。

「僕もそう思ってね、確認してみたんだよ」
「そしたら、なかには試してみたって子もいるんだけど…」
「効果が無いから、見つかる前に、捨てたって話だよ」
藤宮も自分が、調査した結果を教えてくれる。

「その女子は自分で、箱を用意したのか?」
女子が実行したのであれば、その子も箱が手に入ったはずだ…
だが、女子の事だから、なかには自分で作成したとも考えられる。
恋愛に関しての女子達の行動力は、発情期の獣と変わらないからな。
良太はそんな事を考えながら、藤宮に確認をする。

「そうみたいだね」
「赤い箱が出現するって噂は、男子しか知らないんだよ」
「女子の間では、赤い箱が出現するって話は、聞けなかったよ」
藤宮の回答に、良太はしばらく考え込んだ。

「それにしても、杉山君にしては、こんな話するの珍しいね」

「うん?あぁ…噂を聞いて、関か慎也を、ドッキリに引っかけてやろうと思ってね…」

「うわっ、杉山君、結構、えげつないね」
藤宮はそう答えると、

「そろそろ、教室に戻ろうかと思うんだけど、
 杉山君、もういいかな?」
 
「おぅ、時間とらせちゃって、悪いな」
「皆には、内緒にしておいてくれよ」
「関とか慎也にばれたら、面白味が無いからさ」
改めて良太は、秘密にしてくれと打診する。

「うん、わかったよ、皆には秘密にしておくね」
そう言い終わると、藤宮は視聴覚室から出て行った。

良太は、しばしば、考え込んだ。
話に若干の食い違いはあるが、整理すると

1、赤い箱は男子にしか出現しない
2、自分で作成した箱では効果が無い
3、中身を確認されると効果が無い
4、隠す場所は神鳴高校のどこか

(こんなとこか…)
(3番目と4番目がかなり重要だな)
(高校のどこかに隠して、見つからなければ、
 俺は晴れて笹川と交際が出来る。)
(喜ばしいことだが、藤宮の話を聞いて、
 ハードルが、一気に高くなったな。)

良太は一旦教室に戻り、放課後に改めて、
箱の隠し場所を探す事に決めた。

キーン・コーン・カーン・コーン

授業の始まりのチャイムが鳴ったが、
良太の頭は、今後の事を考えることで一杯だった。

「とりあえず、教室に戻るか」
授業に遅れた理由を考えながら、良太は教室へと戻って行った。
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