神見習いになった俺は見聞を広める為に異世界に放り込まれる

夢幻成人

文字の大きさ
7 / 23
いざ異世界へ

第6話 これが神獣?

しおりを挟む
 何かザラザラしていて、柔らかい物が顔に当てられ、

目の前を暗闇に包む。

「微妙にくっさ」

変な臭いが鼻にまとわりつく。

何なんだこれは?

イノがそんな事を考えていると、

頭上から声が鳴り響いた。

「我は破壊と創造より生まれし、銀灰の王……」

まさか、魔界神の手先か?

俺は今、その銀灰の王に抑えつけられているのか?

くそっ、周りが花畑だったし、気配も感じなかったから、

完全に油断した。

例え、神になったと言えども所詮は見習いのイノ、

自分の置かれてた状況の中で最善の方法を考え出す。

「大賢……」

銀灰の王は続けて叫ぶ。

「名はゴン……シルバーカイザーウルフだ」

「はっ?」

一瞬にして緊張が解けた。



 シルバーカイザーウルフと名乗った正体が、

言い間違えでゴンまで聞こえてそいつが誰かもわかった。

そして、この微妙に臭い、

顔覆っている物体が獣の足である事もわかった。

イノは拳を作り、肉球と肉球の合間にねじ込んでいく。

グリグリグリッ!

「キャイン! ご主人痛いです。やりすぎです。」

やっぱり、こいつわかってて、俺の顔に足を置きやがったな。

「ひどいです。ご主人、愛犬の肉球の間をグリグリするなんて!」

「やかましいわ! てか、いつからしゃべれるようになった?

なんで、そんなでかくなってるんだよ?」

「そんな……覚えてないんですか?こんな体にしたのは、

ご主人様なのに……」

「はぁ?」

ゼニスもゼニスだが、ゴンタもゴンタだ。

一体、俺の周りはどんだけアホに囲まれてるんだ?

そう悩んでいると少女が話しかかてくる。

「あの、こちらの神獣はイノ様のペットですか?」

「神獣?!」

何を言い出してるんだ! いくら、このアホ犬が、

でかくなったからと言って、神獣なんて呼び出したら、

神獣さん達に失礼じゃないか。

「はい、この大きさ、立派な銀灰色の毛並、

そして、鋭い眼光、全てをかみ砕く牙、どこから見ても

立派な神獣ですよ! それで、お名前は何というんですか?」

「シル……」

「ゴンタ!」

ゴンタは、よほどこの名前が嫌らしい。

「ゴンタちゃんですか、これからよろしくね」

ゴンタはアホ面のまま、ただ頷いていた。

「ゴンタが大きくなったのは後回しで、

さっき名前を聞きそびれたのだが……」

「あっ、私はティコアです」

「ティコアさんか……」

「ティコアでいいですよ、イノ様」

「俺の『様』もいらないぞ、じゃぁティコア、

お世話係と言っていたが、一体どんなことを

ゼニス爺に頼まれてきたんだ?」

少女は俯きながら、恥ずかしそうに語りだす。

「はい、私は昔、天界軍 参丸弐 高機動支援部隊に所属をしていて、

フルバトルサポートエンジェルのティコアと呼ばれてました。

それで、部隊が解散してしまい、そこをゼニス様に拾われて、

フルバトルサポートメイドエンジェルとして、ゼニス様の元で

働いていたのですが、ゼニス様の大切な物を壊してばかりで、

あまり仕事が貰えなかったのです、だけど、こうして、イノ様の元に

送られてきて、ようやく、ティコアも」

「へぇ、そうなんだ。これからはよろしくね」

あのぉ爺、自分のところで手に負えないから、

俺に押し付けやがったな。

「はい、一杯、イノさ……イノのために頑張ります」



 ティコアまだ良さそうだ。

問題は、あのでかくなってしまったアホ犬だ

一体、どうしてゴンタは、大きくなってしまったんだ?

「ティコア、ゴンタはさっきまで、自分とあまり変わらないほどの

大きさだったんだ。なぜ、こうなったのか、何かわかるかい?」

ゴンタは陽気に蝶を追いかけて、遊んでいる。

ただ、走るたびに凄い振動がこちら側まで、伝わってくる。

「あれ?これ、神獣おやつじゃないですか?」

ティコアがおもむろに拾い上げた紙袋は、

先ほど、ゴンタにあげた茶色の紙袋に入っていた、ペット用おやつだった。

「何それ?」

「自分のペットを神獣化させたい時に、食べさせる物ですよ。

神様の間では結構、有名なお菓子ですよ」

あのぉ爺、結局あいつが原因じゃねぇかよ!

「それで……元に戻るの?」

「一度、神獣化させたら……元には戻れないと思います」

頭が痛くなってきた。ただでさえ、食糧不足なのに

あの大きさになったら、どのくらい食糧が必要なんだ。

「ねぇねぇ、ご主人、見てみて、ワイ火吹けるようになったんだよ」

口を高く空に突き上げると、一気に噴き出した炎は、

周りに熱波を生み出し、ゴンタの周りの花は一瞬にして萎れてしまった。

炎吹いた後のゴンタはアホ面で、こちらを見ている。

「駄目だ……もぅこれ以上、何も起きないでくれ」

悩んでいるイノを元気づけようと、炎を吹いたが、

それは余計に、自分の主人を悩ませるとは、

ゴンタは微塵にも考えていなかった。



 一行はゴンタに乗り、丘の向かいの湖を目指すために

歩み始めた。

「ゼニス様に聞きましたけど、湖の畔には妖精の村があるんですよ。

きっと、イノ様をそこに向かわせたいんですね」

ニコニコしながら話すティコア。

しかし、丘を登りきると、そこには見た事のないような

怪物が湖に向かって進軍していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...