神見習いになった俺は見聞を広める為に異世界に放り込まれる

夢幻成人

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いざ異世界へ

第12話 追憶の魔王

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 上半身と下半身に泣き別れた、魔王の身体は、

無造作に地面に落ちる。

「もぅ、死にたい……誰か……私を……殺して……」

もう涙すら出てこない、ただ、ただ、虚しいだけ。

助けてほしいと懇願したところで、目の前の規格外の化け物は

決して逃がさないだろう。

まるで、男の子がおもちゃのロボットを扱うように

私が壊れるまで、遊び続けるのだろう。

魔王は朦朧とする意識の中、自分の記憶を走馬灯のように

思いだしていた。



 最初に死んだのは高校生の時だった。

仲の良い友達も付き合っている彼氏もいた。

皆、優しかった。

虐められるきっかけは、大した事ではなかった。

課題をしてこなかった子が、ノートを貸してほしいと頼んできた。

私は……貸さなかった。

クラスで嫌がらせを受けるようになった。

最初はまわりの友達も、一緒に怒ってくれていた。

でも、虐めが酷くなるにつれ、徐々に友達は私の元を去っていた。

それでも最後まで、傍に一緒にいてくれた友達も数人いた。

彼氏も私の味方をしてくれていた。

だから、私は何とか頑張れた。



 ある日、何の連絡も無しに、彼氏の家に遊びに行った。

彼氏の親は留守だった。

見慣れない靴が、玄関にあったのが印象的だった。

私は彼氏を脅かそうとしただけだった。

急にドアを開けたらビックリするだろうな、

そんな茶目っ気を見せたかった。

勢いよくドアを開けると、彼氏の上に裸の女が跨ってた。

彼氏はビックリしていた。

女は私の顔を見ると、ゴミでも見るような目で見下していた。

私を虐めてるアイツだった。

わけのわからないまま、彼氏の家を飛び出した。

自分の家に着くと、布団の中で泣き続けた。

携帯が部屋中にブーブーと、音を立てていた。

私は泣くのに夢中で電話にでなかった。

次の日は学校に行きたくなかった、でも、親がうるさかったから、

嫌々、登校した。

教室に入ると、皆の視線がおかしかった。

とても冷たい視線だった。

友達に挨拶に行ったら、無視された。

必死に引き留めて理由を聞いた。

「最低だ!」と罵倒されて、信じられない答えが返ってきた。

私が虐められないようにする為に、彼氏を差し出したことになっていた。

学校を飛び出した私は、赤信号を無視して横断歩道で跳ねられた。

これが、私の初めての死だった。



 次に目覚めると、男の人が前に立っていた。

私に能力を与えると、生まれ変わったら、

きっと、良い人生が待ってると、そう教えてくれた。

男の言うとおりだった。

私は、どこかの貴族の令嬢として生まれ変わった。

能力は千里眼だった。

隣国の王子と結婚して、幸せな毎日を過ごしていた。

不幸は突然訪れた、私に子供が出来ない体だと知らされた。

別の国から側室が嫁いできた。

すぐに懐妊して、次の王子が生まれた。

私はすぐに用済みになった。

子も産めない正室など、ただの邪魔でしかなかった。

それでも、王子は王になっても私を正室として傍に置いてくれた。

私の能力は遠くの敵はすぐに見つけられたのに、

近くの敵は見つけられなかった。



その日は、王がとても優しかった。

濃厚な愛はいつも以上に感じ取れた。

側室がきてから、寂しい日々を全て取り除いてくれた。

王と共に過ごした夜は、私の寂しさを全て洗い流した。



 目を覚ますと、私は知らない部屋に立っていた。

そこには、男が一人、立っていた。

男は今度こそ幸せになれると私に行った。

初めて会う私の何を、知っているのか?

男は私に異世界の物を、召喚できる能力を与えてくれた。

次の人生では、最初はひどかった。

だけど、現代武器を召喚すると、国の重役たちはこぞって私を祭り上げた。

とても気持ちが良かった。

誰も私に逆らわなかった。

私の出す武器を手に取り勝利を収めて行った。

その国が全権を制覇すると、危険人物として私は殺された。



 次の世界では魔王になっていた。

次のスキルは再生だった。

どんなに傷つけられても、瞬く間に私の傷は治った。

魔王になった私には、最初から配下がいた。

私の忠臣たちは世界の国々を滅ぼしていった。

配下たちは祝杯を挙げて私を称えた。

私は配下たちを皆殺しにした。

一人残らず、怪物たちの種を根絶やしにしたのだ。

滅ぼした世界の神と名乗る男が、私の前に現れた。

なぜ、配下を殺したのか?

と、問い詰めてきた。

私は一言だけ男に伝えた。

「お前が造った世界だから」と

男は驚いた顔をしたかと思うと、

男の首は床に転がっていた。

それと同時に世界は崩壊し始めた。

これで、やっと死ねると思った。

静かに自分の四回の人生が終わると、私は安堵していた。



 そして、目を覚ますと、また、魔王になっていた。

今度の世界も同じだった。

きっと誰かが私を裏切ると、この世に信じれらるものは自分だけだと。

私はまた、世界を滅ぼすことに決めた。

新しく得た、異世界の物を召喚できる能力を携えて……

次は世界の神を殺さず、永遠に地獄を味合わせてやると……



 今、私は規格外の化け物に殺されかけてる、

否、すでに殺された。

私の死は再生で阻まれている。

世界の神を殺したくても、この化け物の前には、赤子をひねるように扱われた。

私はどうなるのだろう?

私は無敵で無双が出来るはずだったのに……

これでは終わらない、儚い夢物語ではないか……



 魔王は自分が、いつ、どのように殺されるのか怖かった。

記憶の断片を垣間見て、目を開くと、

一人の男が、決して通さないというと意思を示すかのように

怪物の前に立ちはだかっていた。

どうして?私の人生にこういう人は居なかったのだろう?

魔王は思い出す度に、目から雫が零れ落ちていた。
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