神見習いになった俺は見聞を広める為に異世界に放り込まれる

夢幻成人

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勇者と魔王と勇者と聖女編

第19話 勇者と聖女

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 「ここは、どこだ?」

宗一が目を覚ますと、薄暗い部屋の中にいた。

床には魔法陣が描かれ、眩い光を発していた。

横を見ると、恋人の加奈が眠りこけている。

「おい、加奈起きろ!」

宗一は加奈を強く揺さぶって起こそうとした。

「おぉ、成功したか!」

部屋の奥から、しわがれた声が聞こえてくる。

「おぃ、加奈起きろってば!」

宗一はさらに加奈を強く揺さぶり、起こそうとする。

「う~~ん……」

加奈が微かに目を開けて宗一にキスをした。

「おはよ―ぅ」

まだ、状況が理解できていない加奈は、半分寝た状態で宗一にしがみつく。

「おぃ、そんなことやってる場合じゃない。

俺たち何か知らない場所にいるぞ!」

「えっ?」

宗一の言葉を聞いて、意識がはっきりした。

辺りを見回すと、宗一の部屋ではない事を認識する。

「えっ?宗ちゃん、これなんなの?」

「おほほほ!心配なされるな勇者と聖女よ」

しわがれた声と共にコツコツと足音が近づいてくる。

「勇者?」

「聖女?」

二人は顔を見合わせて、自分たちが夢でない事を再度確認する。

「貴方たちは選ばれたのです!」

声の主が魔法陣の前に着く。

白髪頭に冠を乗せ、白の法衣に杖を持ち、どこかの司教にも見える。

老人は一礼をして話始める。

「ようこそ、おいでくださいました。勇者と聖女よ。

貴方たちを呼び出すために、国中の神官、司祭を呼び、

この聖堂に神より授かりし、聖なる力を集めて、

貴方たちを別の世界から呼び出しました」

「そんなのどうでもいいわよ! 早く家に帰してよ」

加奈が不機嫌に老人に喚き散らす。

「そうだ! 俺たちは承諾した覚えなんかないぞ」

宗一も老人に食ってかかる。

「どうかお聞きください、向こうの大陸で魔王とその軍勢が現れました。

私どもの力では、魔王に到底太刀打ちできません。

ですが、別世界から入らした勇者様と聖女様なら、その魔王を倒すことが出来るのです」

「倒したら何か貰えるのか?」

「えぇ、それはもう国中から歓喜の声があがり、国王からも恩賞が与えられ

生涯何不自由なく暮らすことが出来るでしょう」

何不自由ないという言葉に二人が食いつき始める。

「へ―ぇ、それってお屋敷みたいなところに住めて、

召使が沢山いて、毎日遊んでても誰も文句言わないって事?」

加奈が老人を茶化しながら聞いてみる。

「もちろんです! 世界を救った勇者と聖女に誰が文句を言えるのでしょうか

どうか、我らにお力をお貸し下さい」

宗一は悩んでいるが、

「ねぇ、宗ちゃん! 面白そうだからやってみない?」

「帰る手段もわからないのにか?」

「私、宗ちゃんと一緒に居られればどこでも構わないわよ!」

「う―ん」

唸りながら宗一が考えている。

「ねぇ? 私とずっと一緒にいたくないの?」

「ずっと、いたいに決まってるだろ!」

「じゃぁ、その魔王倒して、二人で幸せに暮らそう、

魔王倒したら、何もしなくても毎日遊んで暮らせるみたいだし」

「わかったよ!」

宗一が加奈の案に乗る。

「おぉ、ありがとうごいざます」

老人は深々と頭を下げてお礼をいうと、二人を部屋の外に案内するように兵士に伝えた。

それと、部屋を片付けるように伝える。

部屋の扉が開かれると目の前には階段があり、

宗一たちと入れ替わりに兵士たちが、麻袋を持って中に入っていく。

まばゆい光を放っていた魔法陣は、薄らと光を放つ程度になり、

代わりに部屋の壁伝いにはきらきらと光る粒が浮かび上がっており、

法衣と修道服を照らしている。

宗一は何か儀式の後かなと不思議に思いながら、階段を上って行った。



 階段を上りきると聖堂が姿を現した。

広い聖堂の中を騎士たちが整列して、勇者の登場を待ちわびていた。

宗一が聖堂に顔を出すと、一斉に歓声があがる。

「勇者だ! 勇者万歳!我が国に栄光あれ!」

騎士たちの歓声を受け、宗一も勇者としての自覚が芽生える。

宗一が騎士たちに手を振ると、さらに歓声は高まる。

「おぉ、聖女様だ! 聖女様万歳! 我が国は無敵なり!」

加奈にも声援が送られる。

無邪気な笑みで騎士たちに手を振る。

「ねぇねぇ、宗ちゃん、なんだか悪い話じゃないみたいね」

「あぁ、まだ何もしてないのにこれだけの声援だぞ!」

「魔王を倒したら、毎日感謝されるだろうな!」

「そうね、そしたら私たち毎日遊んで暮らせるわよ!」

二人は既に魔王を倒した後の事を想像しながら歩いている。

「さぁ、お二人とも王がお待ちですぞ!」

先ほどの老人がいつの間にか、後ろを歩いていた。

「この聖堂を出ますと、城への道は一直線です」

二人は老人の託されるまま城へと向かうのであった。
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