清色恋慕 〜溺れた先は異世界でした〜

月峰

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最終章

53 〜え、何ですって?

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まだ、入りのみ…
──────────────



「なんでこんな事になっているのかしら…」

 智美は肌が透ける、服の意味の無さ無い寝間着を着せられて、ベッドに腰掛けていた。



 実はあれから数日経っているのだが、一度もカイの顔も見ていない。

 まともに言葉を交わす前に、儀式の為に引き離されてしまった。
と言うか、本来の入るべきだった、独身女性皇族が住う、男子禁制の区域の部屋に案内されたうえ、カイが儀式の準備をしている為に会えないでいる所に、生理が来て終わったと思った途端準備がなされ、また来た事のない部屋に通され、カイが来るのを待ていた。

 智美は、アイの泉でのことを思い出す。




 青龍が去って、ミエルが今後の事を話しだした。

『さて、儀式の準備をせねばなりません。
 サトミ様、核をお渡しいただけますか』

 ミエルの言葉に素直に従い、智美は手に握りしめていた、青魔晶の核を渡す。

『…どうやら【言祝ぎ】の為のもの以外の【言の葉】は掛けられて無い様ですね』
『それは俺がすると、以前から青龍に話してある』

 ミエルの言葉にカイが答えると、ミエルはなるほどと言う様に納得した顔をして、核をカイに手渡した。

『では、身体機能変容、言語識字変換、術式起動──』
『分かってる、俺が全部掛けるから』

 カイはミエルの言葉を遮って、話しを終わりにした。

『お分かりになっているのなら、だいじょうぶでしょう。
 では準備が整うまで、サトミ様はランソルデの指示に従って下さい』
「あ、はい」

 急に話し掛けられて、少々驚きながらも智美が返事をすると、カイが何か言いたそうにしたが、ミエルに瞳で何かと問われると、無言で諦めた様に目を閉じた。

 ミエルはさして思惑があったわけでは無い。これからなされる儀式を鑑みて、皇族の男性に嫁ぐ前に、嫁ぐ女性はランソルデの元にしばし身を寄せる習わしがあったので、ランソルデに託しただけである。しかし、それは智美にとっても好都合な事だったと後で思う事となる。

(結局儀式の内容はカイからじゃ無くて、ランソルデ様に説明されたし…)



「え、何ですって?」
『ですから、【言の葉】を施された青魔晶を子宮に入れて、お相手の、この度の場合カイ皇子の精を受けるのです』
「……」

(!!何なのそのエロゲ設定!!!)

 智美は白目を向きそうになった。

 最初は青龍との閨で、龍妃が魔力を内包した事が始まりで、青龍が龍妃の魔力を内包させた身体をこちらの世界に合わせて、声帯や聴覚を作り替え、全く持ち合わせていない魔力回路の機能を加えたそうで、まず下地としての身体に魔力をなじませるのに、男性の精が媒介になっている様で、なので必然的にそうなるのだろう。

 龍妃の後の別盤者にも同じように身体を変えて、こちらの言葉を理解させようと言う研究がなされたようなのだが、変える事が出来る魔術は、固定させるには、施術者当人の膨大な魔力を使う事で、出来ることは龍妃の前例でわかっていたが、大前提に別盤者には魔力が無いので、まず別盤者に術に必要な膨大な魔力をなじませなければなら無い。
 そうしないと一時的には掛かるが直ぐ解けてしまうとの事で、まさか青龍に龍妃と同じ事を頼むわけにもいかず、代案として高濃度の魔力の塊である青魔晶を使用する事が提示されたが、青魔晶をただ持っているだけでは身体に馴染まない、龍妃の事例から、粘膜に接した状態で男性の精による媒介が唯一の成功例だと言う、青魔晶をなじませるのに、長い間粘膜内で留めておける場所が男性には無いので、この儀式は女性しか出来ないそうだ。

 詳しく聞けば、そう言う事かと思うのだが、その説明を抜かして、身も蓋もない言葉で言えば、核を子宮の中に入れてもらい、中出しされろという事で、智美は今更やめたいとは言い出せずにいる、どんな内容だかわかってなかったので、断らなかった事が仇となり、もう儀式はするものと思われているし、カイとは智美は泉侶なので、当たり前の様にカイがあてがわれているし、この前の龍泉による結界引きこもりのこともあって、よもや智美が断るとは思われてないようで、智美の心が決まる前に色々と物事が進んでいく。

「中出しって、妊娠したらどうすんのよ」
『ああ、それは大丈夫です、
 施術中に妊娠してしまうと、魔力が子供の方に供給されてしまうので、避妊の魔法を使います。
 男性用と女性用とありますが、この場合男性にしてしまうと意味がないので、女性に施します』

 ランソルデの返答に智美は呆然とする。

「別にそこまでこだわりがあって、夢見てるわけじゃ無いけど、婚姻前に性交渉ですか…』

 まともな告白すら受けてないのにという思いが、智美にそんな言葉を呟かせた。

『ああ、それは別盤者と婚姻契約するのに、好ましいのは魔力回路を構成させてからのが良いからでしょう、魔力回路機能が無い状態での婚姻契約だと、魔力の共有という契約が上手く発動できないので、寿命の延命を願うなら儀式の後の事になりますし、今回は【言祝ぎ】の事で急いでいるのもあって、婚姻式と結婚式を後で、盛大にしようとなってるのだと思います』
「そうですか…」
『まあ、初夜を迎えて直ぐに、魔法が使えるようになるわけでは有りません、そうですね通例ですと一ヶ月ほどかけて、魔力が身体に馴染んでいき、青魔晶にかけられた【言の葉】が発動して身体が変化していきますので、焦る事はありませんよ』

 その時はもう、どう考えて良いのか分からず、智美は相槌だけをうった。


 ぼんやりと、そんな事を考えて気を紛らわせていたけれど、自分の格好が目に入り思わず、あさっての方向を向いて黄昏ていた。

(この脂肪の塊に着せる服じゃないよ…)

 智美が唯一着ているのは、薄衣で出来たガウンの様なもので、かなり肌が透けて見える。
 オーガンジーの様な透け感に、睡蓮の花が見えてはならないところに豪華絢爛に刺繍されて、全てが見えるわけではないのが、セクシーさを出させるのだろうが、智美は身体に自信がないので、辛くてたまらない。
 昼間から侍女達に、エステもどきで磨かれて、いつもと違う部屋に案内されて、有無を言わさずこの服を着付けさせられたので、どうしようもない。
 ブラどころか、ふんどし下着もつけていない薄衣一枚の状態で、寝室であろうこの部屋で待つのは智美にはキツかった。





──────────────
後書き

自分の格好と向き合いたく無い智美。

別にエロゲの世界ではありません。
これもテンプレだよなとは、作者も思います。
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