37 / 262
高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
21.天敵
しおりを挟む
「萱島くーんっ♪ちょっといいかな?」
可愛いけど恐ろしい、俺の苦手な声に振り返ると、そこにはやっぱり相川さんがいた。
先生に資料運びを頼まれた俺は、一人で資料室前にいる。
校舎の奥まった所にある資料室は、用事が無ければ通りかかるなんて事は無い。
どうして俺が一人でここに来るの分かったんだろう…。
「えっと、何?」
俺は最大限の警戒をしながら尋ねた。
体育祭から約2ヶ月。
俺は蓮と一切接触してないから、何か言われる覚えは無いんだけど。
「やだぁ!そんなに緊張しないで!
あのね、萱島君にお礼が言いたいの。」
お礼?
「蓮の事、分かってくれてありがとう♡
蓮ね、毎日楽しそうなんだ!
萱島くんが離れてくれたおかげだよ!」
それ、お礼なのか??
「それでね。私、蓮と付き合う事になりそうなの。」
一瞬、息が止まった。
「……そうなんだ。」
動揺を押し殺して何とか答えると、相川さんはそんな俺に笑みを浮かべて続ける。
「だけどね、蓮がまだ迷ってるみたいで…。
その原因がね、噂のせいなの。
ほら、萱島君が私に告白したって噂があったでしょ?」
夏休み前後にちょっと流れたあの噂だろうか。
「蓮もその事知ってて、私が断ったと思ってる。
私と蓮が付き合ったら、あまりにも萱島くんが可哀想だって言ってるんだ…。
萱島君に対する負い目があるし、幼馴染としての情だけはあるからって。」
蓮って本当に優しいよね。
そう言う相川さんの言葉に俺は頷けない。
「だからね、萱島君に他に好きな子…ううん、彼女がいるって知れば蓮の決心がつくと思うの。」
……はい?
「私の友達と、付き合ってみない?」
……はい??
「実はね、萱島君のことカッコいいって言ってる他校の友達がいるんだ!
剣道の試合会場で見かけたんだって。
凄くいい子だし、萱島君とお似合いだと思うよ!」
「ま、待って、相川さん。
俺、そんな理由で誰かと付き合うつもりないよ。」
すると、相川さんは何言ってんのって顔をする。
「付き合うきっかけなんて色々だよ?
別に蓮との事が無くても、その子の事は紹介するつもりだったし。
ほら、来週文化祭でしょ?
その時に会うだけでもいいからってお願いされたんだ。」
「いや、でもその気も無いのに会ったら相川さんの友達に失礼だよ。」
「逆に、会えるチャンスがあるのに会ってもらえない方が辛いよ。
面と向かって断られた方が諦めもつくし。」
それに、と相川さんは俺の顔を窺う。
「なんで断る前提なの?凄く気が合うかもしれないよ?」
もしかして、と彼女は続けた。
「萱島君、好きな人いるの?」
心臓がドクッと音を立てる。
「い、いない…よ…。」
思わず口籠もった俺に、相川さんが近付いて来た。
小柄な彼女が背伸びして、俺の耳元で囁く。
「ふーん?じゃあ、蓮と私が付き合うのが嫌だから協力したくないとか?それって、何で?」
ハッとして急いで後ずさる。
背中が資料室のドアに当たって音を立てた。
相川さんはそんな俺の反応にクスクス笑っている。
だけど、その目は冷ややかだ。
「蓮が」を強調した言い方に違和感を感じる。
バレてるんだろうか。
俺が蓮を好きだって事がーーー。
絶対に隠し通さなきゃいけない想い。
もし、蓮に知られてしまったらーー
指先が冷えていくのが分かる。
「私はただ、友達の願いをかなえてあげたいだけだよ。会うだけでいいって言ってるから大丈夫!
萱島君なら、分かってくれるよね?
にっこり笑う相川さんの言葉に、俺は頷くしかなかった。
「ありがとう♡じゃあ、文化祭の日、予定開けておいてね!」
そう言って去っていく彼女の背中に、俺は問いかけた。
「遥の事は、知ってるのーーー?」
それは俺のせめてもの抵抗だったのかもしれない。
相川さんはこっちを振り返ると、少し驚いたような顔をした。
でもすぐに、勝ち誇ったような笑みをうかべる。
「とっくに解決してるから大丈夫。
ご心配どーも♡」
ヒラヒラと手を振るその背中を、俺はただ見送るしかなかった。
●●●
次回はside相川です。
可愛いけど恐ろしい、俺の苦手な声に振り返ると、そこにはやっぱり相川さんがいた。
先生に資料運びを頼まれた俺は、一人で資料室前にいる。
校舎の奥まった所にある資料室は、用事が無ければ通りかかるなんて事は無い。
どうして俺が一人でここに来るの分かったんだろう…。
「えっと、何?」
俺は最大限の警戒をしながら尋ねた。
体育祭から約2ヶ月。
俺は蓮と一切接触してないから、何か言われる覚えは無いんだけど。
「やだぁ!そんなに緊張しないで!
あのね、萱島君にお礼が言いたいの。」
お礼?
「蓮の事、分かってくれてありがとう♡
蓮ね、毎日楽しそうなんだ!
萱島くんが離れてくれたおかげだよ!」
それ、お礼なのか??
「それでね。私、蓮と付き合う事になりそうなの。」
一瞬、息が止まった。
「……そうなんだ。」
動揺を押し殺して何とか答えると、相川さんはそんな俺に笑みを浮かべて続ける。
「だけどね、蓮がまだ迷ってるみたいで…。
その原因がね、噂のせいなの。
ほら、萱島君が私に告白したって噂があったでしょ?」
夏休み前後にちょっと流れたあの噂だろうか。
「蓮もその事知ってて、私が断ったと思ってる。
私と蓮が付き合ったら、あまりにも萱島くんが可哀想だって言ってるんだ…。
萱島君に対する負い目があるし、幼馴染としての情だけはあるからって。」
蓮って本当に優しいよね。
そう言う相川さんの言葉に俺は頷けない。
「だからね、萱島君に他に好きな子…ううん、彼女がいるって知れば蓮の決心がつくと思うの。」
……はい?
「私の友達と、付き合ってみない?」
……はい??
「実はね、萱島君のことカッコいいって言ってる他校の友達がいるんだ!
剣道の試合会場で見かけたんだって。
凄くいい子だし、萱島君とお似合いだと思うよ!」
「ま、待って、相川さん。
俺、そんな理由で誰かと付き合うつもりないよ。」
すると、相川さんは何言ってんのって顔をする。
「付き合うきっかけなんて色々だよ?
別に蓮との事が無くても、その子の事は紹介するつもりだったし。
ほら、来週文化祭でしょ?
その時に会うだけでもいいからってお願いされたんだ。」
「いや、でもその気も無いのに会ったら相川さんの友達に失礼だよ。」
「逆に、会えるチャンスがあるのに会ってもらえない方が辛いよ。
面と向かって断られた方が諦めもつくし。」
それに、と相川さんは俺の顔を窺う。
「なんで断る前提なの?凄く気が合うかもしれないよ?」
もしかして、と彼女は続けた。
「萱島君、好きな人いるの?」
心臓がドクッと音を立てる。
「い、いない…よ…。」
思わず口籠もった俺に、相川さんが近付いて来た。
小柄な彼女が背伸びして、俺の耳元で囁く。
「ふーん?じゃあ、蓮と私が付き合うのが嫌だから協力したくないとか?それって、何で?」
ハッとして急いで後ずさる。
背中が資料室のドアに当たって音を立てた。
相川さんはそんな俺の反応にクスクス笑っている。
だけど、その目は冷ややかだ。
「蓮が」を強調した言い方に違和感を感じる。
バレてるんだろうか。
俺が蓮を好きだって事がーーー。
絶対に隠し通さなきゃいけない想い。
もし、蓮に知られてしまったらーー
指先が冷えていくのが分かる。
「私はただ、友達の願いをかなえてあげたいだけだよ。会うだけでいいって言ってるから大丈夫!
萱島君なら、分かってくれるよね?
にっこり笑う相川さんの言葉に、俺は頷くしかなかった。
「ありがとう♡じゃあ、文化祭の日、予定開けておいてね!」
そう言って去っていく彼女の背中に、俺は問いかけた。
「遥の事は、知ってるのーーー?」
それは俺のせめてもの抵抗だったのかもしれない。
相川さんはこっちを振り返ると、少し驚いたような顔をした。
でもすぐに、勝ち誇ったような笑みをうかべる。
「とっくに解決してるから大丈夫。
ご心配どーも♡」
ヒラヒラと手を振るその背中を、俺はただ見送るしかなかった。
●●●
次回はside相川です。
106
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
だって、君は210日のポラリス
大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺
モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。
一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、
突然人生の岐路に立たされた。
――立春から210日、夏休みの終わる頃。
それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて――
📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。
15,000字程度の予定です。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
天啓によると殿下の婚約者ではなくなります
ふゆきまゆ
BL
この国に生きる者は必ず受けなければいけない「天啓の儀」。それはその者が未来で最も大きく人生が動く時を見せる。
フィルニース国の貴族令息、アレンシカ・リリーベルは天啓の儀で未来を見た。きっと殿下との結婚式が映されると信じて。しかし悲しくも映ったのは殿下から婚約破棄される未来だった。腕の中に別の人を抱きながら。自分には冷たい殿下がそんなに愛している人ならば、自分は穏便に身を引いて二人を祝福しましょう。そうして一年後、学園に入学後に出会った友人になった将来の殿下の想い人をそれとなく応援しようと思ったら…。
●婚約破棄ものですが主人公に悪役令息、転生転移、回帰の要素はありません。
性表現は一切出てきません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる