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高校生編side晴人 事件の始まり…なのにキスとかそれ以上とか⁉︎
42.明日へ向かって(side木村桃)
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そうして私は、今立っている校門の前に来た。
「蓮」に事情を話すとは言ったものの、彼は萱島君のケアが最優先だろう。
だから、彼らが帰る時に会えればいいと思って、何時間でも待つつもりでいたんだけどーーー
「やっぱここか。」
ふいに現れたイケメンに目を丸くする。
どうして分かったんだろう?
「話せる所行こうぜ。」
そう言って歩き出した彼に付いて行くと、周りの人からの視線がグサグサ刺さった。
それはもう、視線で穴が空くんじゃないかと思う程に。「何であんな子が蓮様といるわけ?」なんて声も聞こえる。
うぅ…居た堪れないわ。
萱島君はいつもこんな思いしてたのかなぁ。
そんな時に「相応しくない」なんて言われたら、誰だって弱気になってしまうと思う。
人の少ない校舎裏のような所で彼は止まった。
私を見下ろす目にさっきまでみたいな敵意は無いけど、探るように見ている。
「…あ、あの、萱島君は大丈夫ですか?
本当にごめんなさい。」
「大丈夫じゃなければ来ねーよ。で?」
無表情のイケメンってこんなに怖いんだ。
震え出しそうなのを懸命に堪えて、私は事の次第を話す。
必死すぎて、私の中学の事まで伝えてしまったけど、彼は黙って聞いてくれた。
そして、陽菜ちゃんに頼まれた事も話す。
「…は?ふざけんなよ?」
彼の反応はこうだった。
当然だと思いながら体を強ばらせる。
陽菜ちゃんの言いなりになって萱島君を傷付けようとした私を、この人が許すとは思えない。
「……まぁでも、晴が聞いたら許すんだろ。」
呆れたような口調の中に、萱時君への想いを感じる。
「だから俺的には不本意だけど、今後二度と晴に近付かないなら見逃す。」
それができないなら考えるけど、と言う彼の言葉に私は慌てて強く頷いた。
「本当にごめんなさい…あの、萱島君にも伝えてくれますか?せっかくの楽しい文化祭だったはずなのに…。」
「あぁ、分かった。」
申し訳無くて俯きながら言うと、今までより幾分か柔らかくなった声で彼が言った。
「…木村、だっけ?アンタさ、自分が思ってるより強いって気付いてるか?」
「えっ?」
「自己評価低いみたいだけど、あの相川に抵抗できる奴なんてそうそういねぇからな?」
「…でも、私は…」
「過去は過去だろ。乗り越えて、今は強くなったんならそれでいんじゃね?
今の自分の方が好きって思えれば。」
涙が溢れた。
心の中にずっと澱のように溜まっていた黒い感情。
私はそれを乗り越える事ができたんだろうか。
間違いなく言えるのは、前の自分より今の自分が好きだってこと。
「…ありがとう。蓮さんって優しい人ですね。
萱島君の言う通りだなぁ。」
目を見張る彼に、今から話すのは私の独り言なんですけど、と前置きする。
「私、ここに来るまでに蓮さんと歩いてて、凄く周りの視線を感じたんですよね。
中には確実に悪意だなって分かるものもあったりして、あの短時間で挫けそうだったなぁ。
いつも一緒にいる人なら常にそれに曝されてる訳だから不安になっちゃいそう。
そんな時に、一緒にいるのに相応しくないとか言われたらショックだろうなぁ。
中学の時もそう言う事言ってライバルを蹴落とそうとする子を見たことあるし。」
「………。」
「自分が相手に相応しくないんだって思ったら、私だったら迷惑にならないように距離を置いちゃうかも。
それが、大切な人なら余計に。」
せめてもの償いで私が言えるのはここまでだと思う。
だけど多分、意味は伝わったんじゃないかな。
「あ!私、待ち合わせあるんでした!もう行きますね!」
そう言って歩き出した私の背中を、蓮さんの声が追いかけて来る。
「お前、いい性格してるわ。」
可笑しくて嬉しくて、笑ってしまった。
ナナ、マユ。報告する事がいっぱいあるよ。
楽しい話ばかりじゃないけど、私の汚い所も聞いてくれたら嬉しいな。
そしてね、信じられないくらいのイケメンに褒められたよ。ふふっ。
それからそれから、推しカップルができたの。
絶対絶対、幸せになって欲しいなーーー。
●●●
桃は優しく強くなっていく事でしょう。
次回、一方相川は…と言ったお話し。
「蓮」に事情を話すとは言ったものの、彼は萱島君のケアが最優先だろう。
だから、彼らが帰る時に会えればいいと思って、何時間でも待つつもりでいたんだけどーーー
「やっぱここか。」
ふいに現れたイケメンに目を丸くする。
どうして分かったんだろう?
「話せる所行こうぜ。」
そう言って歩き出した彼に付いて行くと、周りの人からの視線がグサグサ刺さった。
それはもう、視線で穴が空くんじゃないかと思う程に。「何であんな子が蓮様といるわけ?」なんて声も聞こえる。
うぅ…居た堪れないわ。
萱島君はいつもこんな思いしてたのかなぁ。
そんな時に「相応しくない」なんて言われたら、誰だって弱気になってしまうと思う。
人の少ない校舎裏のような所で彼は止まった。
私を見下ろす目にさっきまでみたいな敵意は無いけど、探るように見ている。
「…あ、あの、萱島君は大丈夫ですか?
本当にごめんなさい。」
「大丈夫じゃなければ来ねーよ。で?」
無表情のイケメンってこんなに怖いんだ。
震え出しそうなのを懸命に堪えて、私は事の次第を話す。
必死すぎて、私の中学の事まで伝えてしまったけど、彼は黙って聞いてくれた。
そして、陽菜ちゃんに頼まれた事も話す。
「…は?ふざけんなよ?」
彼の反応はこうだった。
当然だと思いながら体を強ばらせる。
陽菜ちゃんの言いなりになって萱島君を傷付けようとした私を、この人が許すとは思えない。
「……まぁでも、晴が聞いたら許すんだろ。」
呆れたような口調の中に、萱時君への想いを感じる。
「だから俺的には不本意だけど、今後二度と晴に近付かないなら見逃す。」
それができないなら考えるけど、と言う彼の言葉に私は慌てて強く頷いた。
「本当にごめんなさい…あの、萱島君にも伝えてくれますか?せっかくの楽しい文化祭だったはずなのに…。」
「あぁ、分かった。」
申し訳無くて俯きながら言うと、今までより幾分か柔らかくなった声で彼が言った。
「…木村、だっけ?アンタさ、自分が思ってるより強いって気付いてるか?」
「えっ?」
「自己評価低いみたいだけど、あの相川に抵抗できる奴なんてそうそういねぇからな?」
「…でも、私は…」
「過去は過去だろ。乗り越えて、今は強くなったんならそれでいんじゃね?
今の自分の方が好きって思えれば。」
涙が溢れた。
心の中にずっと澱のように溜まっていた黒い感情。
私はそれを乗り越える事ができたんだろうか。
間違いなく言えるのは、前の自分より今の自分が好きだってこと。
「…ありがとう。蓮さんって優しい人ですね。
萱島君の言う通りだなぁ。」
目を見張る彼に、今から話すのは私の独り言なんですけど、と前置きする。
「私、ここに来るまでに蓮さんと歩いてて、凄く周りの視線を感じたんですよね。
中には確実に悪意だなって分かるものもあったりして、あの短時間で挫けそうだったなぁ。
いつも一緒にいる人なら常にそれに曝されてる訳だから不安になっちゃいそう。
そんな時に、一緒にいるのに相応しくないとか言われたらショックだろうなぁ。
中学の時もそう言う事言ってライバルを蹴落とそうとする子を見たことあるし。」
「………。」
「自分が相手に相応しくないんだって思ったら、私だったら迷惑にならないように距離を置いちゃうかも。
それが、大切な人なら余計に。」
せめてもの償いで私が言えるのはここまでだと思う。
だけど多分、意味は伝わったんじゃないかな。
「あ!私、待ち合わせあるんでした!もう行きますね!」
そう言って歩き出した私の背中を、蓮さんの声が追いかけて来る。
「お前、いい性格してるわ。」
可笑しくて嬉しくて、笑ってしまった。
ナナ、マユ。報告する事がいっぱいあるよ。
楽しい話ばかりじゃないけど、私の汚い所も聞いてくれたら嬉しいな。
そしてね、信じられないくらいのイケメンに褒められたよ。ふふっ。
それからそれから、推しカップルができたの。
絶対絶対、幸せになって欲しいなーーー。
●●●
桃は優しく強くなっていく事でしょう。
次回、一方相川は…と言ったお話し。
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