【更新再開】ショコラ伯爵の悩ましい日常〜イケメン騎士様とのBL営業が甘すぎる!〜

あさひてまり

文字の大きさ
55 / 73

手紙 ※ミリ

しおりを挟む
一つだけ救いだったのは、シエラ様が不埒な奴等に目を付けらなかった事だ。
シエラ様の美貌では、思春期の盛った猿共…んんっ。
お年頃の貴族令息達に目をつけられて、無理矢理婚約者にされたりしかねない。

現にマリーナは学生時代、相当そう言った事で苦労した様子だった。
当時の私はこの国の貴族制度など良く分からなかったけれど、どうも男爵家の次女である彼女は後ろ盾が無かったらしい。

高位貴族が権力を使ってマリーナに言い寄って来たり、無理矢理婚約しようとしてきた事も一度や二度では無かった。

そんな内容の手紙を受け取っていた私は気が気では無かったけれど、ある日の手紙で彼女は凄く嬉しそうにこう告げた。

『言い寄られて困っている所を、高学年の方に助けていただいたの!
とってもお強いのよ!彼の前では、散々私に絡んで来た男子生徒達も大人しくしているわ!』

それが、後に彼女の夫となるコンウォール伯爵(当時は伯爵子息)だった。
元々、学院の騎士科に所属する彼と貴族科のマリーナに接点は無かったらしい。

だけど、偶々この日、中庭に出ていたコンウォール伯爵が困り果てた顔のマリーナを見て声をかけて来たそうだ。
邪魔されて逆上した男子生徒をデコピンで吹き飛ばすと言うオマケ付きで…。

後から知った事なのだけど、国防の要であるコンウォール家は王に大変重宝されていて、伯爵位でありながら侯爵家や公爵家もおいそれとは手を出せないポジションを確立しているそうだ。

しかもデコピンで人を吹っ飛ばすなんて…。
本格的に「不死鳥」で訓練していない段階でこれなんて、まぁ恐ろしくて敵に回したい人間はいないだろう。

コンウォール伯爵のお陰でマリーナの周りは治安が良くなった。
彼は卒業した後もその名前でマリーナを護り、これが縁で二人は結婚したのよね。


だけど、マリーナにとってのコンウォール伯爵のような人が必ずいるとは限らない。
認識阻害の魔術をかけるのは反対だったけれど、シエラ様が猿共の危害を被らなかった事に関しては喜ぶべきよね。

当の本人は、友人が出来なかった事に対して苦笑するだけだった。

「僕には君達がいるからそれでいいよ。」

主にそんな風に言われて嬉しくない訳がない。
だけど、私は一抹の不安を覚えた。
シエラ様の世界は、ショコラと私達とトッド様だけで完結してしまっているのだ。

それは…なんと言うか、危うい気がするーー。


だけど、その危うさの原因が何処にあるのか確信が持てなかった。

私が一人悶々としている間に、シエラ様は学院在学中から準備を進めていたショコラトリーをオープンさせて、オーナーとして生活を始めたわ。
タウンハウスの一つを譲り受けたシエラ様は、全くと言っていい程実家には寄り付かなくなった。

当然よね。
それでも、マリーナの命日だけは忘れずに墓前に花を供えに行っていたわ。
誰の目にも触れないようにひっそり立ち去るシエラ様の背中を見ていると、いっそ実家とは縁を切ってしまった方が幸せなのではないかと思ってしまう。

でもそうすると、マリーナとの縁も切れてしまうことになるのよね。
それはシエラ様にとって辛い事だろう。


色々と思い悩んでいた私は、久方ぶりにマリーナからの手紙を読み返す事にした。
母国から転移して来た時、私の服の中に入れていたこの手紙はほとんどがズタズタになって、私の血でグッショリ濡れてしまっていた。

修復は不可能かと思って落ち込んでいたら、なんとエヴァンス公爵が復元してくださったの。

彼は大陸一の魔術師で、幸運な事に、偶々コンウォールに視察に来ていた。
私はそこに転移してきたって訳だ。

転移の魔術は、人間には使えない。
大昔、まだ魔術師が多くいた時代、転移の魔術を使った暗殺が横行したから。

それを阻止するべく、転移の魔術の創始者である当時の大魔術師が、その術に呪いをかけたのだ。

人間に使用すれば、術者も転移対象者も死ぬ。
空間の裂け目に肌を、内臓を、骨を抉られて、激しい痛みと大量の血を流しながら無残な死を遂げる。

私が生きているのは、もう死ぬ寸前だった私をエヴァンス公爵が魔術で蘇生してくれたからだ。
そんな事は彼にしかできないから、実質転移できる人間は存在しない。

私は一命を取り留めてからも死の縁を彷徨ったけれど、息を吹き返した。

生きている事を喜んでいいのか、悲しむべきなのか…。悩む私に、エヴァンス公爵が差し出してくれたのがこの手紙達だった。




●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
エヴァンス公爵は大陸随一の魔術師であると共に、大陸一と称される美貌の持ち主です。
彼のお話し(主従系BL♡)もあるんですが長くなりそうなので、機会があればこちらとは別で書きたいなと思ってます(*´∀`*)







しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

攻略対象に転生した俺が何故か溺愛されています

東院さち
BL
サイラスが前世を思い出したのは義姉となったプリメリアと出会った時だった。この世界は妹が前世遊んでいた乙女ゲームの世界で、自分が攻略対象だと気付いたサイラスは、プリメリアが悪役令嬢として悲惨な結末を迎えることを思い出す。プリメリアを助けるために、サイラスは行動を起こす。 一人目の攻略対象者は王太子アルフォンス。彼と婚約するとプリメリアは断罪されてしまう。プリメリアの代わりにアルフォンスを守り、傷を負ったサイラスは何とか回避できたと思っていた。 ところが、サイラスと乙女ゲームのヒロインが入学する直前になってプリメリアを婚約者にとアルフォンスの父である国王から話が持ち上がる。 サイラスはゲームの強制力からプリメリアを救い出すために、アルフォンスの婚約者となる。 そして、学園が始まる。ゲームの結末は、断罪か、追放か、それとも解放か。サイラスの戦いが始まる。と、思いきやアルフォンスの様子がおかしい。ヒロインはどこにいるかわからないし、アルフォンスは何かとサイラスの側によってくる。他の攻略対象者も巻き込んだ学園生活が始まった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】白豚王子に転生したら、前世の恋人が敵国の皇帝となって病んでました

志麻友紀
BL
「聖女アンジェラよ。お前との婚約は破棄だ!」 そう叫んだとたん、白豚王子ことリシェリード・オ・ルラ・ラルランドの前世の記憶とそして聖女の仮面を被った“魔女”によって破滅する未来が視えた。 その三ヶ月後、民の怒声のなか、リシェリードは処刑台に引き出されていた。 罪人をあらわす顔を覆うずた袋が取り払われたとき、人々は大きくどよめいた。 無様に太っていた白豚王子は、ほっそりとした白鳥のような美少年になっていたのだ。 そして、リシェリードは宣言する。 「この死刑執行は中止だ!」 その瞬間、空に雷鳴がとどろき、処刑台は粉々となった。 白豚王子様が前世の記憶を思い出した上に、白鳥王子へと転身して無双するお話です。ざまぁエンドはなしよwハッピーエンドです。  ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

愛人少年は王に寵愛される

時枝蓮夜
BL
女性なら、三年夫婦の生活がなければ白い結婚として離縁ができる。 僕には三年待っても、白い結婚は訪れない。この国では、王の愛人は男と定められており、白い結婚であっても離婚は認められていないためだ。 初めから要らぬ子供を増やさないために、男を愛人にと定められているのだ。子ができなくて当然なのだから、離婚を論じるられる事もなかった。 そして若い間に抱き潰されたあと、修道院に幽閉されて一生を終える。 僕はもうすぐ王の愛人に召し出され、2年になる。夜のお召もあるが、ただ抱きしめられて眠るだけのお召だ。 そんな生活に変化があったのは、僕に遅い精通があってからだった。

騎士が花嫁

Kyrie
BL
めでたい結婚式。 花婿は俺。 花嫁は敵国の騎士様。 どうなる、俺? * 他サイトにも掲載。

処理中です...