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大騒ぎ ※リフエール
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…そうだった。
手紙を渡された時、あの場に俗物的な人もいたんだった…。
「僕が朝起きて食堂に行ったら、夜勤務が終わったジェシー先輩とパン屋に朝食を買いに行った筈のメルドラ副隊長補佐が、大興奮で帰って来たんですよ。」
後輩によると2人は「不死鳥の姫がいた!」「リフがイチャイチャを見せつけて来た!」「姫を連れ去った!」なんて大騒ぎしたらしい。
そして、ワラワラ集まって来た隊員達が俺達の関係や出会いなんかを推測し出した所でメルドラさんが吠えた。
「あー!!あンの野郎、ただの礼状とか言ってた癖にちゃっかり文通してやがったんだな!?」と。
その失言によって俺とシエラ様は、文通から始まった恋人関係にあると誤解されている…と。
「因みにこの一部始終は第ニ部隊全員が知ってます。昼から勤務のメルドラ副隊長補佐が本部に来るなり余す事なく話してましたから。」
「俺もメルドラから聞いた!」「私もだよ。」
胸を張るヴァン隊長とニッコリ笑うニール副隊長に頭を抱える。
「俺はジェシーから聞いたけどな。」
実に楽しそう言うのはハリマーさんだ。
つまり家持ち組は、それを聞いて態々寮に足を運んでまで俺を待っていた、と。
暇なのか、この人達…
いや、それよりも…
「ジェシー…ここにはいないけどメルドラさんも…後で話がある…」
「チョ、チョイ待ち!悪かったってリフ!」
自分でも驚くほどの低い声に、流石のジェシーもたじろぐ。
「けどホラ、女の子達の説得はしたから!もうここには来ないってさ!」
「えっ?」
思わぬ言葉に驚いていると、ジェシーは俺達が去った後の女性達とのやり取りを話した。
それによると、どうやらジェシーとメルドラさんはここが王宮の敷地内だと女性達に説明してくれたらしい。
すっかり大人しくなった彼女達は俺に対して謝罪までしていたと言う。
しかも、何故か俺とシエラ様を見守る同盟を結んでいた、と。
「いや、理解してくれたのは有難いんだが…どうしてそんな事に…」
「そりゃあ、相手が相手だからなぁ。」
頭を過るのは、作戦を言い渡した時のミリ殿の誇らしげな顔と台詞。
『恋敵が強力すぎて戦意喪失作戦』本当にその通りになったようです、ミリ殿…。
因みにメルドラさんは、シエラ様の名前は明かさず『ある店のオーナー』とだけ伝えたらしい。
その配慮はできるのに、俺のプライベートには土足のスキップで乗り上げてくるのはどうしてなんだ…。
「何はともあれ、これで騎士団寮にいられるぞ!良かったなリフ!」
笑顔の隊長の言葉にハッと居住まいを正す。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ここでまた皆んなと過ごせる事を嬉しく思います。」
周りを囲む面々を見渡すと「俺も嬉しいぞー」
「リフがいないと寂しいぞー」なんて愛のある野次が飛ぶ。
騎士団寮に残れる事も、いい仲間(ちょっとゴシップ好きだが)に恵まれた事も自分は本当に幸運だ。
そんな温かい笑いに包まれた談話室を切り裂いたのは、ニール副隊長の一言。
「それで、リフと不死鳥の姫はお付き合いしてるって認識でいいのかな?」
和やかだっただった雰囲気は一瞬で無くなり、全員の目がギラリと光る。
突き刺さる視線に気圧されながらも否定しようとして、ふと思った。
これから俺とシエラ様は恋人のふりをする契約だ。
ならば、勘違いを正さない方が都合がいいのではないだろうか。
だけど、肯定すれば嘘を付く事になるし…こう言う時の答え方は…
「シエラ様とは、親しくさせていただいております…」
記憶の中でチカッと光った台詞を引っ張り出すと、ドッとその場が沸いた。
再び大騒ぎになった部屋の中で、彼の方が発した同じ台詞を思い出す。
『リフエール様とは親しくさせていただいております』
小首を傾げたあれは、悶えるほど可愛らしかったな…。
現実逃避で癒しの光景に意識を飛ばす俺を尻目に、周りは盛り上がり続けたのだった。
●●●
第二部隊は男子校みたいなノリがありますが、全員身体能力が高く優秀です。これでも笑
手紙を渡された時、あの場に俗物的な人もいたんだった…。
「僕が朝起きて食堂に行ったら、夜勤務が終わったジェシー先輩とパン屋に朝食を買いに行った筈のメルドラ副隊長補佐が、大興奮で帰って来たんですよ。」
後輩によると2人は「不死鳥の姫がいた!」「リフがイチャイチャを見せつけて来た!」「姫を連れ去った!」なんて大騒ぎしたらしい。
そして、ワラワラ集まって来た隊員達が俺達の関係や出会いなんかを推測し出した所でメルドラさんが吠えた。
「あー!!あンの野郎、ただの礼状とか言ってた癖にちゃっかり文通してやがったんだな!?」と。
その失言によって俺とシエラ様は、文通から始まった恋人関係にあると誤解されている…と。
「因みにこの一部始終は第ニ部隊全員が知ってます。昼から勤務のメルドラ副隊長補佐が本部に来るなり余す事なく話してましたから。」
「俺もメルドラから聞いた!」「私もだよ。」
胸を張るヴァン隊長とニッコリ笑うニール副隊長に頭を抱える。
「俺はジェシーから聞いたけどな。」
実に楽しそう言うのはハリマーさんだ。
つまり家持ち組は、それを聞いて態々寮に足を運んでまで俺を待っていた、と。
暇なのか、この人達…
いや、それよりも…
「ジェシー…ここにはいないけどメルドラさんも…後で話がある…」
「チョ、チョイ待ち!悪かったってリフ!」
自分でも驚くほどの低い声に、流石のジェシーもたじろぐ。
「けどホラ、女の子達の説得はしたから!もうここには来ないってさ!」
「えっ?」
思わぬ言葉に驚いていると、ジェシーは俺達が去った後の女性達とのやり取りを話した。
それによると、どうやらジェシーとメルドラさんはここが王宮の敷地内だと女性達に説明してくれたらしい。
すっかり大人しくなった彼女達は俺に対して謝罪までしていたと言う。
しかも、何故か俺とシエラ様を見守る同盟を結んでいた、と。
「いや、理解してくれたのは有難いんだが…どうしてそんな事に…」
「そりゃあ、相手が相手だからなぁ。」
頭を過るのは、作戦を言い渡した時のミリ殿の誇らしげな顔と台詞。
『恋敵が強力すぎて戦意喪失作戦』本当にその通りになったようです、ミリ殿…。
因みにメルドラさんは、シエラ様の名前は明かさず『ある店のオーナー』とだけ伝えたらしい。
その配慮はできるのに、俺のプライベートには土足のスキップで乗り上げてくるのはどうしてなんだ…。
「何はともあれ、これで騎士団寮にいられるぞ!良かったなリフ!」
笑顔の隊長の言葉にハッと居住まいを正す。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。ここでまた皆んなと過ごせる事を嬉しく思います。」
周りを囲む面々を見渡すと「俺も嬉しいぞー」
「リフがいないと寂しいぞー」なんて愛のある野次が飛ぶ。
騎士団寮に残れる事も、いい仲間(ちょっとゴシップ好きだが)に恵まれた事も自分は本当に幸運だ。
そんな温かい笑いに包まれた談話室を切り裂いたのは、ニール副隊長の一言。
「それで、リフと不死鳥の姫はお付き合いしてるって認識でいいのかな?」
和やかだっただった雰囲気は一瞬で無くなり、全員の目がギラリと光る。
突き刺さる視線に気圧されながらも否定しようとして、ふと思った。
これから俺とシエラ様は恋人のふりをする契約だ。
ならば、勘違いを正さない方が都合がいいのではないだろうか。
だけど、肯定すれば嘘を付く事になるし…こう言う時の答え方は…
「シエラ様とは、親しくさせていただいております…」
記憶の中でチカッと光った台詞を引っ張り出すと、ドッとその場が沸いた。
再び大騒ぎになった部屋の中で、彼の方が発した同じ台詞を思い出す。
『リフエール様とは親しくさせていただいております』
小首を傾げたあれは、悶えるほど可愛らしかったな…。
現実逃避で癒しの光景に意識を飛ばす俺を尻目に、周りは盛り上がり続けたのだった。
●●●
第二部隊は男子校みたいなノリがありますが、全員身体能力が高く優秀です。これでも笑
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