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エルフ王国
戦技 〈指弾〉
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――訓練の騒動から数時間後、ナオはベッドの上で目を覚ます。最初に彼が感じたのは左頬の鈍い痛みであり、ナオは身体を起き上げると頬に触れる。
「いててっ……あれ、そんなに痛くない?」
気絶する前は頬が引きはがされるのではないかというほどの衝撃を受けたはずだが、特に鏡を見ても傷跡のような物は見られず、痣すら残っていない。ナオは気絶する前にリンが「回復薬」を用意するように兵士に伝えていた事を思い出し、どうやら自分の怪我を貴重な回復薬を使用して治してくれたらしい。
「はあっ……まさかビンタされて気絶するなんて、どれだけひ弱なんだよ……」
平手打ちだけで気絶どころか死にかけた自分にナオは溜息を吐き出し、奥歯がぐらついているような感覚に襲われる。傷は回復したようだが痛みまでは完全には消え切っておらず、ナオは溜息を吐きながらもステータス画面を開く。
「これ、使うしかないのかな」
ナオはステータス画面の「SP」の項目に視線を向け、彼の持つ「貧弱」の異能の効果でどんなスキルも覚える事や強化が出来る。通常の人間はSPを使用する度に消費量が増加するが、貧弱の能力によってナオの場合はどんな場合でも消費するSPは「1」に固定化されている。
「強力な戦技を覚えられないかな……いや、攻撃力が1の俺だとあんまり期待できないな」
戦技を覚えたとしてもナオの能力値が1である事に変わりはなく、もしも戦技の威力が能力値に比例するとしたら本来は凄い戦技だとしても攻撃力が1の状態では見かけ倒しになる可能性が高い。ならば能力値に関係ないスキルを覚える方が有利かも知れず、必然的に「技能」あるいは「固有」のスキルを覚えた方が良いのかもしれない。
「何か言いの無いかな。無敵、とまではいかなくても強い能力が欲しいな」
SPの使用方法はリンから既に聞いており、ナオはステータス画面のSPの項目に触れると、視界に新しく3つの画面が表示される。それぞれ「戦技」「技能」「固有」に分かれており、職業に関しては変更できないのか表示されないかった。
「一応は戦技も確認しておくか」
現時点で覚えても効果があるのかは不明だが、ナオは戦技から確かめる事にした。だが、表示されているのはあくまでも戦技の名前だけらしく、詳細の説明文などは表示されていないので名前だけでどのような効果なのかを想像するしかない。
「う~んっ……色々あるけど、なんで不穏な名前が上の項目に並んでいるんだろう。不意打ち、辻斬り、闇討ち……やばいのばっかだな」
何故か表示されている戦技の殆どが不穏な文字列ばかりが並んでおり、ナオは自分の職業が「暗殺者」である事を思い出し、画面に表示されている戦技が暗殺者専用の戦技だと推理する。
「色々とあるけど、どう見ても勇者が扱うような必殺技じゃないよな……あれ?なんだこの指弾って……」
画面の中で一際目立った名前を発見し、不思議に思ったナオは画面を動かせないのか掌を近付けたとき、間違って指先が触れてしまう。
『戦技「指弾」を習得しました』
「あっ!?またかっ!?」
狭間の世界で間違って2つの異能を覚えた時のように画面に指が触れた瞬間に選択されるシステムらしく、ナオは貴重なSPを消費して「指弾」を覚えてしまう。同じミスを繰り返したことにナオは頭を抑えるが、こうなった以上は覚えた戦技を試すしかない。
「くそう……まあ、いいか。ちゃんと説明文も表示されたな」
『指弾――親指で弾となる物体を弾いて相手を攻撃する。大きさは指で弾ける程の大きさの物体でなければならない 熟練度:1』
ステータス画面の戦技の項目に「指弾」が追加されており、ステータス画面内のスキルは右側に説明文も追記されているため、指弾の能力の確認も行える。内容を見る限りでは指で「弾丸」を弾いて相手に攻撃する戦技らしく、試しにナオはこの世界に訪れる際に一緒に持ってきていた財布を取り出す。
「確か小銭があったはず……一円玉で試すか」
一番軽く、失っても特に問題ない硬貨を取り出してナオは握り拳を作り、人刺し指の中に一円玉を挟む。これで使用方法は正しいのかは不明だが、ナオは部屋の机の上に置かれている花瓶に視線を向ける。
「どれくらいの距離まで当たるかな……指弾っ!!」
戦技を使用するのは初めてだが、適当に名前を告げて親指で硬貨を弾いた瞬間、花瓶の横を通り過ぎて反対側の壁に衝突した。その光景を見たナオは予想外の飛距離に驚き、同時に狙いを外した事を残念に思う。
「あ~……練習が必要みたいだな。でも威力はそんなになさそう」
空間魔法でボールペンを弾き飛ばした時と違い、硬貨は壁に簡単に弾かれて落ちてしまう。ナオは小銭にまだ余裕があるのを確認し、花瓶に衝突するまで練習を繰り返す。
「ていっ!!駄目か……とうっ!!」
よくよく考えたらこちらの世界では持ち込んできた地球の通貨など役に立たず、全ての硬貨を利用して花瓶を狙い撃つ。
「いててっ……あれ、そんなに痛くない?」
気絶する前は頬が引きはがされるのではないかというほどの衝撃を受けたはずだが、特に鏡を見ても傷跡のような物は見られず、痣すら残っていない。ナオは気絶する前にリンが「回復薬」を用意するように兵士に伝えていた事を思い出し、どうやら自分の怪我を貴重な回復薬を使用して治してくれたらしい。
「はあっ……まさかビンタされて気絶するなんて、どれだけひ弱なんだよ……」
平手打ちだけで気絶どころか死にかけた自分にナオは溜息を吐き出し、奥歯がぐらついているような感覚に襲われる。傷は回復したようだが痛みまでは完全には消え切っておらず、ナオは溜息を吐きながらもステータス画面を開く。
「これ、使うしかないのかな」
ナオはステータス画面の「SP」の項目に視線を向け、彼の持つ「貧弱」の異能の効果でどんなスキルも覚える事や強化が出来る。通常の人間はSPを使用する度に消費量が増加するが、貧弱の能力によってナオの場合はどんな場合でも消費するSPは「1」に固定化されている。
「強力な戦技を覚えられないかな……いや、攻撃力が1の俺だとあんまり期待できないな」
戦技を覚えたとしてもナオの能力値が1である事に変わりはなく、もしも戦技の威力が能力値に比例するとしたら本来は凄い戦技だとしても攻撃力が1の状態では見かけ倒しになる可能性が高い。ならば能力値に関係ないスキルを覚える方が有利かも知れず、必然的に「技能」あるいは「固有」のスキルを覚えた方が良いのかもしれない。
「何か言いの無いかな。無敵、とまではいかなくても強い能力が欲しいな」
SPの使用方法はリンから既に聞いており、ナオはステータス画面のSPの項目に触れると、視界に新しく3つの画面が表示される。それぞれ「戦技」「技能」「固有」に分かれており、職業に関しては変更できないのか表示されないかった。
「一応は戦技も確認しておくか」
現時点で覚えても効果があるのかは不明だが、ナオは戦技から確かめる事にした。だが、表示されているのはあくまでも戦技の名前だけらしく、詳細の説明文などは表示されていないので名前だけでどのような効果なのかを想像するしかない。
「う~んっ……色々あるけど、なんで不穏な名前が上の項目に並んでいるんだろう。不意打ち、辻斬り、闇討ち……やばいのばっかだな」
何故か表示されている戦技の殆どが不穏な文字列ばかりが並んでおり、ナオは自分の職業が「暗殺者」である事を思い出し、画面に表示されている戦技が暗殺者専用の戦技だと推理する。
「色々とあるけど、どう見ても勇者が扱うような必殺技じゃないよな……あれ?なんだこの指弾って……」
画面の中で一際目立った名前を発見し、不思議に思ったナオは画面を動かせないのか掌を近付けたとき、間違って指先が触れてしまう。
『戦技「指弾」を習得しました』
「あっ!?またかっ!?」
狭間の世界で間違って2つの異能を覚えた時のように画面に指が触れた瞬間に選択されるシステムらしく、ナオは貴重なSPを消費して「指弾」を覚えてしまう。同じミスを繰り返したことにナオは頭を抑えるが、こうなった以上は覚えた戦技を試すしかない。
「くそう……まあ、いいか。ちゃんと説明文も表示されたな」
『指弾――親指で弾となる物体を弾いて相手を攻撃する。大きさは指で弾ける程の大きさの物体でなければならない 熟練度:1』
ステータス画面の戦技の項目に「指弾」が追加されており、ステータス画面内のスキルは右側に説明文も追記されているため、指弾の能力の確認も行える。内容を見る限りでは指で「弾丸」を弾いて相手に攻撃する戦技らしく、試しにナオはこの世界に訪れる際に一緒に持ってきていた財布を取り出す。
「確か小銭があったはず……一円玉で試すか」
一番軽く、失っても特に問題ない硬貨を取り出してナオは握り拳を作り、人刺し指の中に一円玉を挟む。これで使用方法は正しいのかは不明だが、ナオは部屋の机の上に置かれている花瓶に視線を向ける。
「どれくらいの距離まで当たるかな……指弾っ!!」
戦技を使用するのは初めてだが、適当に名前を告げて親指で硬貨を弾いた瞬間、花瓶の横を通り過ぎて反対側の壁に衝突した。その光景を見たナオは予想外の飛距離に驚き、同時に狙いを外した事を残念に思う。
「あ~……練習が必要みたいだな。でも威力はそんなになさそう」
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