最弱職外伝 〈貧弱の勇者は異世界で生き抗う〉

カタナヅキ

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エルフ王国

疑心暗鬼

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―――――――――――――

レベル:2

SP:1

攻撃力:2

防御力:2

移動速度:2

魔法威力:2

魔法耐性:2

魔力容量:2

―――――――――――――

戦技(攻撃スキル)

・指弾――指で弾いた物で相手を攻撃する 熟練度:5(限界値)

 連射(技術スキル)――指弾を連続で撃ち抜く

 跳弾(技術スキル)――標的物以外の物体に指弾を当てて跳弾させる

―――――――――――――

技能スキル(才能)

・翻訳――あらゆる言語・文字を理解できる

・観察眼――観察能力を高める

・速射――弓矢・拳銃などの遠距離用の道具の攻撃速度を上昇

・狙撃――集中力を高め、命中精度を上昇

―――――――――――――

固有スキル(常時発動)

・無し

―――――――――――――

異能

・貧弱――初期ステータスが最低値になるが、レベル制限が存在しない

・空間魔法――異空間に物体を回収 制限重量は無限


―――――――――――――


ステータス画面に表示された文字を確認すると、意外な事に色々な戦技や技能スキルを覚えている事が発覚する。しかも鼠のような生物を倒したことでレベルが上昇しており、全ての能力値が「2」になっていた。


「おお、やった!!いや、ちょっと待てよ……2?」


遂にレベルが上昇したにも関わらずにナオの能力値は「1」しか上昇しておらず、彼は呆然と視線を向ける。すくなくともリンの話ではレベルが上昇すれば最低でも能力値は10以上は上昇すると聞いていたはずだが、何故かナオの場合は1しか上昇していない。


「まさか、これも貧弱の効果なのか……?」


初期ステータスが最低値から始まるだけだと思っていたが、レベルを上げた時のの能力の上昇値も影響を受けているのか1しか上昇していない。呆然とナオはステータス画面に視線を向け、深いため息を吐き出す。


「……まあ、鼠を倒しただけでレベルアップしたんだから、もしかしたらレベルが上がりやすい可能性もあるか。でも初めて倒した相手が鼠って……あれ!?」


ナオは自分が倒した鼠に視線を向けると、何時の間にか姿が消えており、代わりに突き刺したはずの薔薇だけが残っていた。慌てて周囲を見渡しても死骸は見当たらず、代わりに薔薇が落ちている場所に紫色の灰が残っていた。


「なんだこれ……この世界では死んだら死体は灰になるのか?いや、まさか……」


地面に広がる灰に視線を向け、ナオは疑問を抱いていると、唐突に窓が開いて部屋の中に風が入り込む。


「うわっ!?な、何だ!?」


部屋の中に入り込んだ風が灰を巻き上げ、窓から外に吹き上げられる。ナオは咄嗟に灰に手を伸ばすが、風で飛ばされる灰を掴む事は出来ず、開け開かれた風に押し込まれるように窓が勝手にしまった。


「あっ!?」


慌ててナオは窓の外に視線を向けるが、既に灰は消え去っており、彼は呆然と見つめる。しかし、慌てて窓の鍵を閉めるとベッドの方に座り込み、何が起きたのか分からずに頭を抑える。


「何だったんだ今の……偶然窓が開いた?いや、そんな感じじゃなかった」


灰を飲み込むように入り込んできた突風に対し、ナオは動揺を隠せず、地面に視線を向ける。鼠を殺した時に床に広がっていた灰が綺麗に消え去っており、とてもではないが偶然とは思えない。


「あの鼠も普通じゃなかったし、何が起きてるんだ……?」


魔法が存在する世界なので先ほどの風も人為的な物であり、何者かが鼠の死骸を持ち去ったとも考えられる。それ以前にあの鼠も最初から様子がおかしく、明らかにナオの命を狙おうとしていた。


「誰かに狙われている?いや、まさか……でも」


ナオは自分のベッドの枕が鼠に切り裂かれている事に気付き、まるで鋭利な刃物のような物で切り裂かれている事に気付く。それを確認したナオは冷や汗を流し、自分が誰かに命を狙われているのではないかと思い込む。


「どうしてこんな事に……いや、落ち着け。まずは冷静になれ」


人生で初めて命を狙われた事に動揺を隠せないが、それでも彼は頬を叩いて気を引き締める。誰も信用できる人物がいない状況の中、ナオは恐怖に抗い今の自分が出来る事を探す。


「この国の人は俺を勇者と思って今は優しくしてくれているけど、レベルが上がっても能力値が殆ど伸びていない事を知られるのは不味い。これは隠しておかないと……あと、手に入れたSPを今度は慎重に使わないとな」


迂闊に他人を信用するのは危険であり、ナオは今後は自分の行動に気を付ける必要がある。そして命を狙われた事もしばらくは黙っておかなければならない。今の時点でナオの心象はとても良いとは言い切れず、実際に今日もリンを押し倒してしまったときに男性の兵士を怒らせてしまった。


「証拠も残ってないし、今の時点で命を狙われたことを言っても信じてくれないかもしれない。この枕は変えてもらわないとな」


切り裂かれて羽毛が飛び出した枕を確認しながらナオは溜息を吐き出し、これを証拠として出しても信じてくれるとは思えない。確かに切口は刃物で切り裂いたように見えるが、それだけでは命を狙われたという証拠になる可能性は薄い。むしろナオが枕を切り裂いたのではないかと疑われる可能性もある。この部屋には刃物になるような物は存在しないが、逆にナオが刃物になっている物を隠し持っている疑惑を抱かれるかもしれない。


「いや、考え過ぎかな……違う、疑心暗鬼になるぐらいじゃないと駄目だ」


既に自分の立場の危うさは理解しており、ナオは枕をわざと引き千切り、切口を無茶苦茶に切り裂く。これならば誤って枕を引き千切ってしまったという言い訳が立ち、新しい物に変えてもらえる可能性がある。どうせ隠した所で部屋の中はナオがいないときに使用人が掃除すれば枕の存在も気付くため、隠すぐらいなら自分で枕を裂いてしまったと言い訳をした方が良い。


「絶対に帰るんだ……!!」


このような世界に飛ばされ、味方と思える人物が誰一人として見つからない状況でもナオは諦めず、元の世界に戻るために彼は覚えたばかりSPを使用し、次に覚えるスキルを選択した。
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