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エルフ王国
訓練場の後始末
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――翌日の早朝、ナオは朝日が昇らぬ時間帯に目覚めてしまう。不思議な事に昨日の疲れは取れており、昨日の内に強化させた「回復力超強化」のお陰なのか少し眠っただけで十分に回復できたようだ。
「ううん……ちょっと早く起きすぎたかな」
ナオは身体を起き上げながら準備体操を行い、昨日のうちに覚えた新しい技能スキルを使用する事にした。まず、彼が使用したのは「気配感知」と「魔力感知」と呼ばれる能力を使用し、前者は文字通りに気配を感じ取り、後者はどうやら生物の身体から滲み出る魔法の力を感知する能力らしい。
「あれ?見張りの人がいないな……休憩かな?」
基本的にナオの部屋は出入口が見張りの兵士が立っており、外に赴くときは彼等も同行しなければならない。この部屋にはトイレがないので用を足す時は彼等と同行して部屋の外に存在するトイレに向かわならなかった。しかし、気配感知と魔力感知を発動させると、扉の外にいるはずの兵士の気配が感じられなかった。
「誰もいないのかな?」
不思議に思いながらナオは扉を開くと、予想通りというべきか見張りの兵士の姿がなく、この隙にナオは場内を移動する事に決めた。だが、念のために部屋の中に空間魔法の黒渦を作り出し、誰にも見つからないように気を配りながら移動を行う。
「うわ、凄い。本当に足音が鳴らないな」
移動の最中にナオは存在感を消す「隠密」と足音を殺す「無音歩行」を発動させ、持ち前の移動速度の高さを利用して通路を移動する。人が近づいてくる気配を感じたら物陰に姿を隠し、場合によっては黒渦を利用して部屋に戻る準備を行いながら場内を進む。
「こうしてみるととんでもなく広いよなこの城……これが大樹の内部を改造して作ったというだから凄いよな」
通路を進みながらナオは迷わないように気を配り、階段を降りる。だが、その際に下の階から階段を移動する音が聞こえ、慌てて彼は立ち止まって天井に視線を向ける。
「ていっ(小声)」
ナオは天井付近に黒渦を作り出し、勢いよく跳躍して黒渦の中に入り込む。黒渦を飛び出した瞬間に部屋の床に倒れこみ、身体を痛めながらもナオは自分が飛び出した黒渦に近づいて聞き耳を立てる。
「ひいいっ!!どうしていつものトイレが壊れてるんだよ……!!」
聞き覚えのある男性兵士の声が聞こえ、どうやら見張り役がいなかったのは交代も待てずに下の階のトイレに駆け込んでいたらしい。黒渦から足音や人間の声が聞こえないことを確認したナオは顔を覗き込み、階段の様子を確認しながら飛び込む。
「ふうっ……何とかなったな。この調子で進もう」
天井に黒渦を隠す手段は功を奏し、今度から人間が訪れた場合はこの方法で隠れる事を決めてナオは一階に向かう。彼の今回の目的は訓練場の様子を伺うためであり、昨夜の緑鼠の死骸とグリドンの木の実がどうなっているのか様子見するために移動を行う。
「……よし、あそこだ」
何度か兵士の巡回を潜り抜けたため、多少の時間は掛かったがナオは訓練場の扉の前に辿り着く。しかし、ここで彼は鍵が掛かっている事に気付き、室内に入れない事に気付く。
「駄目だ、開かない。無理やり壊すわけにはいかないし……あ、そういえばまだ覚えていないスキルの中にこういう時に便利そうなものがあったような……」
ステータス画面を開き、周囲の警戒を怠らずにナオは未収得スキルの一覧から「開錠」と呼ばれるスキルを発見する。こちらは技能スキルではなく、何故か固有スキルとして登録されており、不思議に思いながらもナオは習得すると、ついでにレベルを限界まで上昇させた。
『開錠――施錠された物体の鍵を開く。開錠には魔力を必要とする レベル:5(限界値)』
「あ、これ魔法なのか」
スキルの説明文を確認したナオは掌を鍵に構え、スキルを発動させる。その直後、ナオの掌に魔法陣が浮き上がり、鍵が開いた音が響き渡る。
「お、本当に開いた。これは便利だな……って、うわっ」
鍵を開いて中の様子を覗き込むと、ナオは室内の光景に顔を引きつらせ、そこには食い荒らされたグリドンの殻と緑鼠の死骸が並んでおり、流石に生き残った緑鼠達も食いきれなかったのか今回は死骸も残っていた。
「これは不味いな……誰かに気付かれる前に掃除しないとやばい。でも、どうすればいいんだ?」
訓練場に広がっている死骸と木の実の殻にナオは頭を掻き、どう考えても1、2時間程度で1人で掃除しても片付ける量ではない。しかも床には血の跡も残っており、死骸と殻を片付けるだけではどうしようもない。
「そうだ、こういう時は困ったときのスキル頼りだ」
この状況を打開するスキルが無いのか確かめるためにナオは再び未収得スキルの一覧を開き、掃除に関するスキルを探す。そして固有スキルの中に「清浄」と呼ばれる文字を発見する。
「これだ!!」
『清浄――魔力を消費してあらゆる汚れを消し去る レベル:1』
「いけっ!!」
スキルを覚えたナオはついでにレベルを最大限にまで上昇させ、スキルを発動させる。すると掌から魔法陣が浮き上がり、地面に残っていた血液の痕跡が消え去った。
「やった!!この調子で……あ、でも死骸と殻はどうしようも出来ないのか」
清浄の能力では死骸や殻を消し去る事は出来ず、あくまでも表面上の汚れを消し去るのか両者にスキルを発動させても効果はなく、ナオは別のスキルを探し出す。
「風の魔法とかで死骸を一か所に集められないのかな……ん?これは……ブラック・サイクロン?」
戦技の項目の中にナオは気になるスキル名を発見し、名前の響きから風属性の魔法とは思わるが、頭に「ブラック」という文字が付いている事が気にかかる。しかも暗殺者向けの戦技なのか魔法の項目の中では一番上に表示されており、気になった彼は試しに習得した。
「ううん……ちょっと早く起きすぎたかな」
ナオは身体を起き上げながら準備体操を行い、昨日のうちに覚えた新しい技能スキルを使用する事にした。まず、彼が使用したのは「気配感知」と「魔力感知」と呼ばれる能力を使用し、前者は文字通りに気配を感じ取り、後者はどうやら生物の身体から滲み出る魔法の力を感知する能力らしい。
「あれ?見張りの人がいないな……休憩かな?」
基本的にナオの部屋は出入口が見張りの兵士が立っており、外に赴くときは彼等も同行しなければならない。この部屋にはトイレがないので用を足す時は彼等と同行して部屋の外に存在するトイレに向かわならなかった。しかし、気配感知と魔力感知を発動させると、扉の外にいるはずの兵士の気配が感じられなかった。
「誰もいないのかな?」
不思議に思いながらナオは扉を開くと、予想通りというべきか見張りの兵士の姿がなく、この隙にナオは場内を移動する事に決めた。だが、念のために部屋の中に空間魔法の黒渦を作り出し、誰にも見つからないように気を配りながら移動を行う。
「うわ、凄い。本当に足音が鳴らないな」
移動の最中にナオは存在感を消す「隠密」と足音を殺す「無音歩行」を発動させ、持ち前の移動速度の高さを利用して通路を移動する。人が近づいてくる気配を感じたら物陰に姿を隠し、場合によっては黒渦を利用して部屋に戻る準備を行いながら場内を進む。
「こうしてみるととんでもなく広いよなこの城……これが大樹の内部を改造して作ったというだから凄いよな」
通路を進みながらナオは迷わないように気を配り、階段を降りる。だが、その際に下の階から階段を移動する音が聞こえ、慌てて彼は立ち止まって天井に視線を向ける。
「ていっ(小声)」
ナオは天井付近に黒渦を作り出し、勢いよく跳躍して黒渦の中に入り込む。黒渦を飛び出した瞬間に部屋の床に倒れこみ、身体を痛めながらもナオは自分が飛び出した黒渦に近づいて聞き耳を立てる。
「ひいいっ!!どうしていつものトイレが壊れてるんだよ……!!」
聞き覚えのある男性兵士の声が聞こえ、どうやら見張り役がいなかったのは交代も待てずに下の階のトイレに駆け込んでいたらしい。黒渦から足音や人間の声が聞こえないことを確認したナオは顔を覗き込み、階段の様子を確認しながら飛び込む。
「ふうっ……何とかなったな。この調子で進もう」
天井に黒渦を隠す手段は功を奏し、今度から人間が訪れた場合はこの方法で隠れる事を決めてナオは一階に向かう。彼の今回の目的は訓練場の様子を伺うためであり、昨夜の緑鼠の死骸とグリドンの木の実がどうなっているのか様子見するために移動を行う。
「……よし、あそこだ」
何度か兵士の巡回を潜り抜けたため、多少の時間は掛かったがナオは訓練場の扉の前に辿り着く。しかし、ここで彼は鍵が掛かっている事に気付き、室内に入れない事に気付く。
「駄目だ、開かない。無理やり壊すわけにはいかないし……あ、そういえばまだ覚えていないスキルの中にこういう時に便利そうなものがあったような……」
ステータス画面を開き、周囲の警戒を怠らずにナオは未収得スキルの一覧から「開錠」と呼ばれるスキルを発見する。こちらは技能スキルではなく、何故か固有スキルとして登録されており、不思議に思いながらもナオは習得すると、ついでにレベルを限界まで上昇させた。
『開錠――施錠された物体の鍵を開く。開錠には魔力を必要とする レベル:5(限界値)』
「あ、これ魔法なのか」
スキルの説明文を確認したナオは掌を鍵に構え、スキルを発動させる。その直後、ナオの掌に魔法陣が浮き上がり、鍵が開いた音が響き渡る。
「お、本当に開いた。これは便利だな……って、うわっ」
鍵を開いて中の様子を覗き込むと、ナオは室内の光景に顔を引きつらせ、そこには食い荒らされたグリドンの殻と緑鼠の死骸が並んでおり、流石に生き残った緑鼠達も食いきれなかったのか今回は死骸も残っていた。
「これは不味いな……誰かに気付かれる前に掃除しないとやばい。でも、どうすればいいんだ?」
訓練場に広がっている死骸と木の実の殻にナオは頭を掻き、どう考えても1、2時間程度で1人で掃除しても片付ける量ではない。しかも床には血の跡も残っており、死骸と殻を片付けるだけではどうしようもない。
「そうだ、こういう時は困ったときのスキル頼りだ」
この状況を打開するスキルが無いのか確かめるためにナオは再び未収得スキルの一覧を開き、掃除に関するスキルを探す。そして固有スキルの中に「清浄」と呼ばれる文字を発見する。
「これだ!!」
『清浄――魔力を消費してあらゆる汚れを消し去る レベル:1』
「いけっ!!」
スキルを覚えたナオはついでにレベルを最大限にまで上昇させ、スキルを発動させる。すると掌から魔法陣が浮き上がり、地面に残っていた血液の痕跡が消え去った。
「やった!!この調子で……あ、でも死骸と殻はどうしようも出来ないのか」
清浄の能力では死骸や殻を消し去る事は出来ず、あくまでも表面上の汚れを消し去るのか両者にスキルを発動させても効果はなく、ナオは別のスキルを探し出す。
「風の魔法とかで死骸を一か所に集められないのかな……ん?これは……ブラック・サイクロン?」
戦技の項目の中にナオは気になるスキル名を発見し、名前の響きから風属性の魔法とは思わるが、頭に「ブラック」という文字が付いている事が気にかかる。しかも暗殺者向けの戦技なのか魔法の項目の中では一番上に表示されており、気になった彼は試しに習得した。
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