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エルフ王国
イヤンとの決着
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――う、うわぁああああああああっ……!?
通路内に少年の情けない声が響き渡り、それを聞いたイヤンは顔を上げ、悲鳴の正体がナオであると直感で判断する。声の方向から彼が最初に訪れていた部屋からで間違いなく、イヤンは狂気を取り戻したように駆け出す。
「見つけたぞ……!!」
イヤンは剣を握りしめながらナオの部屋の前の通路に辿り着くと、そこには自分が切り伏せた兵士がうつ伏せで倒れており、他の人間の姿は見えない。それでも声が聞こえた事は間違いなく、イヤンは即座に兵士を乗り越えて部屋の中に駆け込む。
「はっ、ははっ……見つけたぞ!!」
部屋に入って早々にイヤンはベッドが不自然に膨らんでいる事に気付き、誰かが毛布にくるまって隠れている事に気付く。それを確認した彼は笑い声をあげ、情けない姿で隠れているはずのナオに剣を向け、自分はこんな男に恐れていたのかと苛立ちを抱く。
「それで隠れているつもりか!!さあ、今すぐ楽に……!?」
だが、近付こうとしたイヤンはベッドの膨らみに違和感を覚え、いくら恐怖に陥ったからとちって死体がある部屋の中にわざわざ戻るのかと疑問を抱く。彼はゆっくりと毛布に手を近づけ、引きはがす。
「こ、これは!?」
ベッドの上に存在したのはナオではなく、クローゼットから取り出したと思われる衣服の塊が雑に横たわっており、イヤンは嵌められた事に気付く。彼は怒りの声を上げようとしたが、クローゼットの方角から声が聞こえた。
『ッ……!!』
「っ……!?そこかぁっ!!」
イヤンはクローゼットに視線を向け、嬉々とした表情で剣を構え、扉越しに刃を突き刺す。しかし、確実に中に隠れているはずのナオの肉体を突き刺したと思ったが、手元の感触に彼は違和感を抱き、扉を開く。
「こ、これは!?」
クローゼットの中身は空であり、ベッドの上に全ての衣服を放り込んだ事で本当に何も存在しなかった。しかし、この中から声が聞こえたのは間違いなく、イヤンは激しく混乱しながらクローゼットを隈なく探すが、中には誰もいない。
「ど、どういう事だ!!確かにここから……何だ!?」
窓から差す月の光がクローゼットの中を照らすと、イヤンは足元に謎の「黒箱」が存在する事に気付き、その蓋の隙間から不気味な赤色の瞳が覗いている事に気付く。それを見た彼は声の正体が箱の中に隠れている鼠の物だと気付き、そんな彼の背後から声が掛けられた。
「意外と単純な手に引っかかるんですね」
「っ……!?」
今度こそ間違いなく少年の声が聞こえ、驚愕の表情を浮かべたイヤンが振り返ると、そこには兵士の姿をしたナオの姿があった。彼は剣の刀身を空間魔法の黒渦に既に飲み込ませており、狙いを定めてイヤンの身体に向けて柄を構える。
「貴様ぁっ!!」
「遅いっ!!」
イヤンが怒りの表情を浮かべて切りかかろうとするが、ナオは掌を離して空間魔法を解除した瞬間、黒渦に飲み込まれていた長剣が強力なスプリングに跳ね返されるように飛び出す。そして長剣の柄がイヤンの胸元に的中し、彼はあまりの衝撃に吹き飛ばされ、クローゼットの中に押し込まれた。
「ぐはぁっ……!?」
「指弾!!」
相手が動けない隙にナオは小石を撃ち込み、ナオが握りしめていた長剣を弾く。剣はクローゼットの壁に突き刺さり、偶然にもイヤンの顔の横に埋まる形となり、頬に血が滴り落ちる。先ほどまでの威勢はどうしたのか、イヤンは恐怖の表情を浮かべ、ナオを見上げる。
「お、お前……どうして……!?」
「兵士に化けて伏せていたんですよ。兜を被っていたから髪の毛の色の違いには気付かなかったでしょ?」
「く、くそっ……!!」
ナオは助けた兵士の装備を身に着け、クローゼットとベッドに仕掛けを施すと、イヤンをわざと呼び寄せるために悲鳴を上げた。結果として騙された彼は部屋の中に入り込み、ベッドとクローゼットにナオが隠れていると思い込んで通路側からの警戒心を緩めてしまった。
イヤンが部屋の中を探索している間、ナオは冷静に彼の様子を伺い、兵士の長剣を空間魔法の反動を利用して吹き飛ばし、彼を戦闘不能に追い込む。既に装備を拝借した兵士も安全な部屋に避難させており、ナオは小石を構えてイヤンに告げる。
「貴方の負けです」
「くそぉっ……!!」
「ナオ様!!ご無事ですか!?」
やっと騒ぎに気付いたのか通路からリンの声と兵士が駆け付ける足音が響き渡り、彼女は部屋に入り込んで驚愕の表情を浮かべる。クローゼットに倒れているイヤンと、何故か兵士の恰好で彼を見下ろすナオに彼女は戸惑い、事情を問い質す。
「こ、これは一体……!?」
「り、リン将軍……!!」
「王子が俺を襲ってきました。隣の部屋で倒れている兵士の人が証言してくれるはずです」
「ぐっ……!!」
イヤンが何かを言い出す前にナオは先手を打ち、隣で休ませている兵士の事を話す。いくらイヤンが惚けようと既に彼は見張りの兵士に手を出しており、更に暗殺者の格好をしている事から言い訳は出来ない。ナオはリンが現れた事に緊張感が解れ、後の事は彼女に任せることにした。
通路内に少年の情けない声が響き渡り、それを聞いたイヤンは顔を上げ、悲鳴の正体がナオであると直感で判断する。声の方向から彼が最初に訪れていた部屋からで間違いなく、イヤンは狂気を取り戻したように駆け出す。
「見つけたぞ……!!」
イヤンは剣を握りしめながらナオの部屋の前の通路に辿り着くと、そこには自分が切り伏せた兵士がうつ伏せで倒れており、他の人間の姿は見えない。それでも声が聞こえた事は間違いなく、イヤンは即座に兵士を乗り越えて部屋の中に駆け込む。
「はっ、ははっ……見つけたぞ!!」
部屋に入って早々にイヤンはベッドが不自然に膨らんでいる事に気付き、誰かが毛布にくるまって隠れている事に気付く。それを確認した彼は笑い声をあげ、情けない姿で隠れているはずのナオに剣を向け、自分はこんな男に恐れていたのかと苛立ちを抱く。
「それで隠れているつもりか!!さあ、今すぐ楽に……!?」
だが、近付こうとしたイヤンはベッドの膨らみに違和感を覚え、いくら恐怖に陥ったからとちって死体がある部屋の中にわざわざ戻るのかと疑問を抱く。彼はゆっくりと毛布に手を近づけ、引きはがす。
「こ、これは!?」
ベッドの上に存在したのはナオではなく、クローゼットから取り出したと思われる衣服の塊が雑に横たわっており、イヤンは嵌められた事に気付く。彼は怒りの声を上げようとしたが、クローゼットの方角から声が聞こえた。
『ッ……!!』
「っ……!?そこかぁっ!!」
イヤンはクローゼットに視線を向け、嬉々とした表情で剣を構え、扉越しに刃を突き刺す。しかし、確実に中に隠れているはずのナオの肉体を突き刺したと思ったが、手元の感触に彼は違和感を抱き、扉を開く。
「こ、これは!?」
クローゼットの中身は空であり、ベッドの上に全ての衣服を放り込んだ事で本当に何も存在しなかった。しかし、この中から声が聞こえたのは間違いなく、イヤンは激しく混乱しながらクローゼットを隈なく探すが、中には誰もいない。
「ど、どういう事だ!!確かにここから……何だ!?」
窓から差す月の光がクローゼットの中を照らすと、イヤンは足元に謎の「黒箱」が存在する事に気付き、その蓋の隙間から不気味な赤色の瞳が覗いている事に気付く。それを見た彼は声の正体が箱の中に隠れている鼠の物だと気付き、そんな彼の背後から声が掛けられた。
「意外と単純な手に引っかかるんですね」
「っ……!?」
今度こそ間違いなく少年の声が聞こえ、驚愕の表情を浮かべたイヤンが振り返ると、そこには兵士の姿をしたナオの姿があった。彼は剣の刀身を空間魔法の黒渦に既に飲み込ませており、狙いを定めてイヤンの身体に向けて柄を構える。
「貴様ぁっ!!」
「遅いっ!!」
イヤンが怒りの表情を浮かべて切りかかろうとするが、ナオは掌を離して空間魔法を解除した瞬間、黒渦に飲み込まれていた長剣が強力なスプリングに跳ね返されるように飛び出す。そして長剣の柄がイヤンの胸元に的中し、彼はあまりの衝撃に吹き飛ばされ、クローゼットの中に押し込まれた。
「ぐはぁっ……!?」
「指弾!!」
相手が動けない隙にナオは小石を撃ち込み、ナオが握りしめていた長剣を弾く。剣はクローゼットの壁に突き刺さり、偶然にもイヤンの顔の横に埋まる形となり、頬に血が滴り落ちる。先ほどまでの威勢はどうしたのか、イヤンは恐怖の表情を浮かべ、ナオを見上げる。
「お、お前……どうして……!?」
「兵士に化けて伏せていたんですよ。兜を被っていたから髪の毛の色の違いには気付かなかったでしょ?」
「く、くそっ……!!」
ナオは助けた兵士の装備を身に着け、クローゼットとベッドに仕掛けを施すと、イヤンをわざと呼び寄せるために悲鳴を上げた。結果として騙された彼は部屋の中に入り込み、ベッドとクローゼットにナオが隠れていると思い込んで通路側からの警戒心を緩めてしまった。
イヤンが部屋の中を探索している間、ナオは冷静に彼の様子を伺い、兵士の長剣を空間魔法の反動を利用して吹き飛ばし、彼を戦闘不能に追い込む。既に装備を拝借した兵士も安全な部屋に避難させており、ナオは小石を構えてイヤンに告げる。
「貴方の負けです」
「くそぉっ……!!」
「ナオ様!!ご無事ですか!?」
やっと騒ぎに気付いたのか通路からリンの声と兵士が駆け付ける足音が響き渡り、彼女は部屋に入り込んで驚愕の表情を浮かべる。クローゼットに倒れているイヤンと、何故か兵士の恰好で彼を見下ろすナオに彼女は戸惑い、事情を問い質す。
「こ、これは一体……!?」
「り、リン将軍……!!」
「王子が俺を襲ってきました。隣の部屋で倒れている兵士の人が証言してくれるはずです」
「ぐっ……!!」
イヤンが何かを言い出す前にナオは先手を打ち、隣で休ませている兵士の事を話す。いくらイヤンが惚けようと既に彼は見張りの兵士に手を出しており、更に暗殺者の格好をしている事から言い訳は出来ない。ナオはリンが現れた事に緊張感が解れ、後の事は彼女に任せることにした。
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