148 / 2,091
剣鬼 闘技祭準備編
レナの意思
しおりを挟む
色々と考え込むナオを素通りし、マリアはレナの両肩を掴むと、彼女は微笑みながらレナに質問する。
「レナ……一つだけ聞かせてちょうだい。貴方はこの国の王様になりたいと考えた事はある?貴方が本気で国王になりたいと考えているのなら、私は貴方を支援するわよ」
「え、嫌だよ。そんな面倒臭そうなの……そういうのはナオに任せる」
『えっ』
「でしょうね」
レナの返答にその場の全員が呆気にとられるが、彼の答えを聞いてマリアは安心したように溜息を吐き、レナならば彼女の質問を断ると確信していた。だが、他の人間が慌ててレナに問い質す。
「ちょ、ちょっと待てよレナ!!お前、面倒って……王様だぞ?王様になれるんだぞ!?」
「そうだぞレナ、もしかして私に気を遣っているのか?それなら……」
「いやいや、別にそういうのじゃないから。というか、王様なんて面倒そうだし、責任感が大きそうだから嫌だよ」
「そんな事で諦めるのっ!?」
「そんな事で諦めるよ。俺は王様なんか目指さない」
今更自分の正体を晒し、王位を狙うなどレナは考えるはずがなく、そんな事をしてしまったらこれまでの行為が水の泡となる。彼の目的は国王として王国を支配する事ではなく、あくまでも普通の生活を送りたいだけなのだ。最も現在の生活も普通とは言い難いが、それでも仲間に囲まれて暮らす生活を満喫している。
だが、ここでレナが王位を継承するために世間に自分の正体を晒せば当然だが彼の周囲の人間も問題に巻き込んでしまう。まずはこれまで以上に命を狙われるのは間違いなく、王国側の人間も彼を放置するはずがない。そうなれば平穏な生活など望めるはずがなく、そんな事態に陥るならば正体を隠して生きる生活を選ぶ。
例えば野球を知らない人間にプロ野球選手になれる好機を与えられたとしても、大抵の人間はそんな好機を受け入れるはずがないだろう。仮にプロ野球選手になれたとしても野球も知らない自分が上手くやり続けられるのか不安を抱き、取り返しのつかない失敗を行うのではないかと考える。普通の人間には訪れない絶対に訪れない絶好の機会なのかもしれなくとも、レナにとっては国王という称号は何の価値もない。
「俺は今まで通りに皆と一緒に居る方がいいよ。そもそも国王なんてなっても何の教育も受けていない俺が国を支えるなんて出来ないしね」
「だけど、本当ならお前が王様になるはずだったんだぞ?悔しく……いや、納得できるのか?他の人間が自分を差し置いて国を受け継ぐなんて……」
「いや、全然?むしろ、国王になる方が大変そうだよ。だって今の国王は全然羨ましいとは思えないし……」
「ふふっ」
レナの言葉にマリアが笑い声を抑えきれず、確かに現在の国王の立場を知っている人間からすれば誰も彼の地位を羨む者はいないだろう。王妃の傀儡人形として彼女の支持されるがままにしか行動できず、自分の愛していた妻からは息子を見捨てた事で痛めつけられ、数多くの人間に見放されている。彼が「国王」という立場でなければここまでの事態には陥らなかっただろう。
「俺は王位なんて興味ないし、そのハヅキ家という人達にも利用されるのは御免だよ」
「レナ……」
「よく言ったわ。それでこそ姉さんの子供よ」
マリアはレナの言葉を聞いて満足そうに頷き、彼の身体を抱き締める。姉の元を離れても国王の座に興味を抱くような人間に育って居なかった事に彼女は安堵し、同時に自分も覚悟を決める事にした。
「ナオ、聞いての通りよ。レナは王位を引き継ぐつもりがない以上、貴女がこの国を引き継ぎなさい」
「そ、それは……ですが、父上は私の事を……」
「いい加減に目を覚ましなさい。何時までも養父に気遣っていたらこの国は王妃に奪われるわよ」
「くっ……!!」
ナオは自分の養父であり、レナの実父である「バルトロス国王」の事を内心は未だに慕っていた。実際に先王が死去した後に自分と2人の妹を引き取り、何不自由のない生活を送らせていたのだ。しかし、王妃が子供を出産してから関係がおかしくなり、お互いが避けるようになった。
それでもナオは心の何処かで養父である国王との関係を修復出来ないのかと考えており、何度も王妃の危険性を伝え、騎士団を結成して功を立てる事で国王から認められようとした。しかし、結局は国王は王位を引き継がせようとしているのは自分の子供である「第二王子」であり、ナオの事よりも彼と王妃を優先する。
「このまま時が経過すれば国王は間違いなく第二王子を王太子と認め、この王国はあの王妃の手によって狂わされるわ。それを阻止するためには貴女が王太子と認めさせるしかないのよ?」
「ですが、父上は……」
「貴女も分かっているのでしょう?このままどれだけ騎士団を動かして功を立てようと、王妃の正体を伝えても国王は貴女を認めはしない……ここで覚悟を決めなさい。例え、養父と対立するような事態に陥ろうとも国王の座を手に入れる事を」
「そのために……貴女に協力を頼めというのですか?」
「それが貴方の妹と……義弟を守る唯一の道よ」
マリアの言葉にナオは二人の妹の事を思い出し、そして義理の弟であるレナを見る。ここでマリアの提案を受け入れなければナオは養父に認められるように足掻くしかなく、間違いなく王妃の手によって消されてしまうだろう。だが、ここでマリアの手を取れば養父と対立する事になっても自分の大切な妹と義弟は守ることが出来る。最早、選択肢は1つしか存在せず、ナオは決意を固めたように頷く。
「私は……王を目指します」
「レナ……一つだけ聞かせてちょうだい。貴方はこの国の王様になりたいと考えた事はある?貴方が本気で国王になりたいと考えているのなら、私は貴方を支援するわよ」
「え、嫌だよ。そんな面倒臭そうなの……そういうのはナオに任せる」
『えっ』
「でしょうね」
レナの返答にその場の全員が呆気にとられるが、彼の答えを聞いてマリアは安心したように溜息を吐き、レナならば彼女の質問を断ると確信していた。だが、他の人間が慌ててレナに問い質す。
「ちょ、ちょっと待てよレナ!!お前、面倒って……王様だぞ?王様になれるんだぞ!?」
「そうだぞレナ、もしかして私に気を遣っているのか?それなら……」
「いやいや、別にそういうのじゃないから。というか、王様なんて面倒そうだし、責任感が大きそうだから嫌だよ」
「そんな事で諦めるのっ!?」
「そんな事で諦めるよ。俺は王様なんか目指さない」
今更自分の正体を晒し、王位を狙うなどレナは考えるはずがなく、そんな事をしてしまったらこれまでの行為が水の泡となる。彼の目的は国王として王国を支配する事ではなく、あくまでも普通の生活を送りたいだけなのだ。最も現在の生活も普通とは言い難いが、それでも仲間に囲まれて暮らす生活を満喫している。
だが、ここでレナが王位を継承するために世間に自分の正体を晒せば当然だが彼の周囲の人間も問題に巻き込んでしまう。まずはこれまで以上に命を狙われるのは間違いなく、王国側の人間も彼を放置するはずがない。そうなれば平穏な生活など望めるはずがなく、そんな事態に陥るならば正体を隠して生きる生活を選ぶ。
例えば野球を知らない人間にプロ野球選手になれる好機を与えられたとしても、大抵の人間はそんな好機を受け入れるはずがないだろう。仮にプロ野球選手になれたとしても野球も知らない自分が上手くやり続けられるのか不安を抱き、取り返しのつかない失敗を行うのではないかと考える。普通の人間には訪れない絶対に訪れない絶好の機会なのかもしれなくとも、レナにとっては国王という称号は何の価値もない。
「俺は今まで通りに皆と一緒に居る方がいいよ。そもそも国王なんてなっても何の教育も受けていない俺が国を支えるなんて出来ないしね」
「だけど、本当ならお前が王様になるはずだったんだぞ?悔しく……いや、納得できるのか?他の人間が自分を差し置いて国を受け継ぐなんて……」
「いや、全然?むしろ、国王になる方が大変そうだよ。だって今の国王は全然羨ましいとは思えないし……」
「ふふっ」
レナの言葉にマリアが笑い声を抑えきれず、確かに現在の国王の立場を知っている人間からすれば誰も彼の地位を羨む者はいないだろう。王妃の傀儡人形として彼女の支持されるがままにしか行動できず、自分の愛していた妻からは息子を見捨てた事で痛めつけられ、数多くの人間に見放されている。彼が「国王」という立場でなければここまでの事態には陥らなかっただろう。
「俺は王位なんて興味ないし、そのハヅキ家という人達にも利用されるのは御免だよ」
「レナ……」
「よく言ったわ。それでこそ姉さんの子供よ」
マリアはレナの言葉を聞いて満足そうに頷き、彼の身体を抱き締める。姉の元を離れても国王の座に興味を抱くような人間に育って居なかった事に彼女は安堵し、同時に自分も覚悟を決める事にした。
「ナオ、聞いての通りよ。レナは王位を引き継ぐつもりがない以上、貴女がこの国を引き継ぎなさい」
「そ、それは……ですが、父上は私の事を……」
「いい加減に目を覚ましなさい。何時までも養父に気遣っていたらこの国は王妃に奪われるわよ」
「くっ……!!」
ナオは自分の養父であり、レナの実父である「バルトロス国王」の事を内心は未だに慕っていた。実際に先王が死去した後に自分と2人の妹を引き取り、何不自由のない生活を送らせていたのだ。しかし、王妃が子供を出産してから関係がおかしくなり、お互いが避けるようになった。
それでもナオは心の何処かで養父である国王との関係を修復出来ないのかと考えており、何度も王妃の危険性を伝え、騎士団を結成して功を立てる事で国王から認められようとした。しかし、結局は国王は王位を引き継がせようとしているのは自分の子供である「第二王子」であり、ナオの事よりも彼と王妃を優先する。
「このまま時が経過すれば国王は間違いなく第二王子を王太子と認め、この王国はあの王妃の手によって狂わされるわ。それを阻止するためには貴女が王太子と認めさせるしかないのよ?」
「ですが、父上は……」
「貴女も分かっているのでしょう?このままどれだけ騎士団を動かして功を立てようと、王妃の正体を伝えても国王は貴女を認めはしない……ここで覚悟を決めなさい。例え、養父と対立するような事態に陥ろうとも国王の座を手に入れる事を」
「そのために……貴女に協力を頼めというのですか?」
「それが貴方の妹と……義弟を守る唯一の道よ」
マリアの言葉にナオは二人の妹の事を思い出し、そして義理の弟であるレナを見る。ここでマリアの提案を受け入れなければナオは養父に認められるように足掻くしかなく、間違いなく王妃の手によって消されてしまうだろう。だが、ここでマリアの手を取れば養父と対立する事になっても自分の大切な妹と義弟は守ることが出来る。最早、選択肢は1つしか存在せず、ナオは決意を固めたように頷く。
「私は……王を目指します」
33
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。