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S級冒険者編
剣士として……
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「……まあ、冗談はさておき実は儂は引退を考えておる」
「引退、ですか?」
「うむ、流石にもう年には勝てん。こうして歩くだけで精いっぱいの身体では碌に指導も出来んからのう」
「そうなんですか……」
「だが、老いたとはいえ、儂も剣士じゃ……最後に剣を置く前にどうしても試したい事がある」
ケンゾウは表情を一変させるとレナと向き直り、自分が剣士を辞める前に心残りを果たしたい事を告げた。
「同じ剣鬼であるお主に頼みたい事がある。どうか、儂と本気で試合をしてくれぬか?」
――その後、レナはケンゾウの道場に案内されると、真剣を手にした彼と向き合う。まさか命を救った相手に勝負を挑まれる事になるなど予想外の出来事ではあったが、引退する前に剣士として最後に戦いたいと言われればレナとしても断りにくかった。
相手が同じ剣鬼という理由もあってケンゾウの事は放置出来ず、仮に自分が断ったとしても強制的に勝負を挑まれると判断したレナは彼の誘いに応じて退魔刀と大太刀を構えた状態で向き合う。ケンゾウの方は日本刀を構えると、老人とは思えない程の気迫を放ちながらレナと向き合う。
「試合とはいえ、手加減は無用……本気でいかせてもらう」
「分かりました……ハンゾウ、合図を頼む」
「拙者でいいのでござるか?」
ハンゾウはレナとケンゾウの勝負に自分が関わる事に躊躇するが、二人の意思が固い事を悟って合図を行う。
「では……始めっ!!」
「ぬんっ!!」
「ふっ!!」
試合開始の合図の直後、ケンゾウとレナは同時に動く、ケンゾウは前に出ると刀を正面から構え、一方でレナの方は退魔刀と大太刀を横薙ぎに振り払う。
「かあっ!!」
「せいっ!!」
二人が刃を振りぬいた瞬間、ケンゾウの日本刀の刃が退魔刀と大太刀の刃に衝突し、激しい金属音と共に砕け散ってしまう。普通ならばこれで勝負ありだが、ケンゾウは瞳の色を紅色に輝かせながら身体が屈めると、そのままレナの懐に飛び込む。
「峰打ちっ!!」
柄だけの状態の日本刀を振り翳し、そのままレナの胸元に向けて叩きつけようとした。刃が折れても挑む事を止めないケンゾウに対してレナは驚くが、すぐに後ろに下がってケンゾウの攻撃を回避する。
「遅いっ!!」
「ぬうっ!?」
「はああっ!!」
攻撃を躱されたケンゾウは驚いた表情を浮かべるが、それに対してレナは左手の大太刀を上空に構えると、柄の部分をケンゾウの右肩に叩き込む。その結果、ケンゾウの身体に衝撃が走り、地面に膝を付く。
「ぐはぁっ!?」
「……終わりです」
「それまで!!」
最後にレナが退魔刀の刃をケンゾウの首筋に構えると、ハンゾウが試合終了の合図を行う。ケンゾウは右肩を抑えながらも苦笑いを浮かべ、素直に敗北を認める。
「ぐうっ……見事だ、レナ殿。やはり、儂の見立て通りに見事な剣の腕前だ」
「……ケンゾウさんが全盛期だったら、今の攻撃で俺が倒れていたかもしれません」
「ふっ……謙遜するな、仮に儂が剣王と呼ばれていた時代で挑んでいたとしてもお主には勝てんよ」
右肩を抑えながらケンゾウは力なく座り込むと、レナは彼に回復魔法を施そうとした。だが、そんなレナの腕をケンゾウは抑え、治療は不要だと告げた。
「右肩は完全に砕けたか……これではもう、剣は握れないだろう」
「大丈夫です、まだ治療すれば……」
「いや、このままでいい。儂は剣士として今日死んだ……ならば、もう剣鬼である必要はない」
「えっ?」
何時の間にかケンゾウの瞳の色が黒色へと変化しており、彼はもう自分が剣鬼ではない事を告げる。剣鬼に堕ちた人間は生涯が剣鬼として生きなければならないと聞いていたレナだが、ケンゾウによると剣士として機能しなくなればもう剣鬼ではないという。
剣鬼とはただの称号ではなく、宿命である。剣鬼として生まれてきた人間は剣士として生き続ける事を強要されるが、逆に言えば剣士として戦えない状態に陥ればもう剣鬼ではなくなるという。
「儂は……何十年も剣鬼で居続ける事に疲れていた。剣の道から外れた友を切り捨て、剣鬼として大成を果たした。しかし、ずっと儂は友を殺して得たこの力が恐ろしかった。だが、剣士で居続ける限り儂は剣鬼からの宿命には逃れられん」
「…………」
「お主に出会えて本当に良かった……これで儂も普通の人間として生きる事が出来る。本当にありがとう……最後に出会えた最強の剣士よ」
「レナ殿……」
「……行こう」
ケンゾウの言葉を聞いてレナはハンゾウを連れて立ち去ると、そんな彼に対してケンゾウは右肩を抑えながらも頭を下げる。数十年も剣鬼として生きてきた自分を解放してくれたレナに感謝する一方、剣鬼として誰かに敗北するまで生き続けなければならないレナの事を思うと同情する。
――同じ剣鬼と言えど、レナの場合はこの力を大切な人から受け取った物だと考えていた。しかし、ケンゾウの場合は友を切り捨てて手に入れた力だと思っていた。二人の価値観の違いはどちらが正しいのかは誰にも分からなかった――
「引退、ですか?」
「うむ、流石にもう年には勝てん。こうして歩くだけで精いっぱいの身体では碌に指導も出来んからのう」
「そうなんですか……」
「だが、老いたとはいえ、儂も剣士じゃ……最後に剣を置く前にどうしても試したい事がある」
ケンゾウは表情を一変させるとレナと向き直り、自分が剣士を辞める前に心残りを果たしたい事を告げた。
「同じ剣鬼であるお主に頼みたい事がある。どうか、儂と本気で試合をしてくれぬか?」
――その後、レナはケンゾウの道場に案内されると、真剣を手にした彼と向き合う。まさか命を救った相手に勝負を挑まれる事になるなど予想外の出来事ではあったが、引退する前に剣士として最後に戦いたいと言われればレナとしても断りにくかった。
相手が同じ剣鬼という理由もあってケンゾウの事は放置出来ず、仮に自分が断ったとしても強制的に勝負を挑まれると判断したレナは彼の誘いに応じて退魔刀と大太刀を構えた状態で向き合う。ケンゾウの方は日本刀を構えると、老人とは思えない程の気迫を放ちながらレナと向き合う。
「試合とはいえ、手加減は無用……本気でいかせてもらう」
「分かりました……ハンゾウ、合図を頼む」
「拙者でいいのでござるか?」
ハンゾウはレナとケンゾウの勝負に自分が関わる事に躊躇するが、二人の意思が固い事を悟って合図を行う。
「では……始めっ!!」
「ぬんっ!!」
「ふっ!!」
試合開始の合図の直後、ケンゾウとレナは同時に動く、ケンゾウは前に出ると刀を正面から構え、一方でレナの方は退魔刀と大太刀を横薙ぎに振り払う。
「かあっ!!」
「せいっ!!」
二人が刃を振りぬいた瞬間、ケンゾウの日本刀の刃が退魔刀と大太刀の刃に衝突し、激しい金属音と共に砕け散ってしまう。普通ならばこれで勝負ありだが、ケンゾウは瞳の色を紅色に輝かせながら身体が屈めると、そのままレナの懐に飛び込む。
「峰打ちっ!!」
柄だけの状態の日本刀を振り翳し、そのままレナの胸元に向けて叩きつけようとした。刃が折れても挑む事を止めないケンゾウに対してレナは驚くが、すぐに後ろに下がってケンゾウの攻撃を回避する。
「遅いっ!!」
「ぬうっ!?」
「はああっ!!」
攻撃を躱されたケンゾウは驚いた表情を浮かべるが、それに対してレナは左手の大太刀を上空に構えると、柄の部分をケンゾウの右肩に叩き込む。その結果、ケンゾウの身体に衝撃が走り、地面に膝を付く。
「ぐはぁっ!?」
「……終わりです」
「それまで!!」
最後にレナが退魔刀の刃をケンゾウの首筋に構えると、ハンゾウが試合終了の合図を行う。ケンゾウは右肩を抑えながらも苦笑いを浮かべ、素直に敗北を認める。
「ぐうっ……見事だ、レナ殿。やはり、儂の見立て通りに見事な剣の腕前だ」
「……ケンゾウさんが全盛期だったら、今の攻撃で俺が倒れていたかもしれません」
「ふっ……謙遜するな、仮に儂が剣王と呼ばれていた時代で挑んでいたとしてもお主には勝てんよ」
右肩を抑えながらケンゾウは力なく座り込むと、レナは彼に回復魔法を施そうとした。だが、そんなレナの腕をケンゾウは抑え、治療は不要だと告げた。
「右肩は完全に砕けたか……これではもう、剣は握れないだろう」
「大丈夫です、まだ治療すれば……」
「いや、このままでいい。儂は剣士として今日死んだ……ならば、もう剣鬼である必要はない」
「えっ?」
何時の間にかケンゾウの瞳の色が黒色へと変化しており、彼はもう自分が剣鬼ではない事を告げる。剣鬼に堕ちた人間は生涯が剣鬼として生きなければならないと聞いていたレナだが、ケンゾウによると剣士として機能しなくなればもう剣鬼ではないという。
剣鬼とはただの称号ではなく、宿命である。剣鬼として生まれてきた人間は剣士として生き続ける事を強要されるが、逆に言えば剣士として戦えない状態に陥ればもう剣鬼ではなくなるという。
「儂は……何十年も剣鬼で居続ける事に疲れていた。剣の道から外れた友を切り捨て、剣鬼として大成を果たした。しかし、ずっと儂は友を殺して得たこの力が恐ろしかった。だが、剣士で居続ける限り儂は剣鬼からの宿命には逃れられん」
「…………」
「お主に出会えて本当に良かった……これで儂も普通の人間として生きる事が出来る。本当にありがとう……最後に出会えた最強の剣士よ」
「レナ殿……」
「……行こう」
ケンゾウの言葉を聞いてレナはハンゾウを連れて立ち去ると、そんな彼に対してケンゾウは右肩を抑えながらも頭を下げる。数十年も剣鬼として生きてきた自分を解放してくれたレナに感謝する一方、剣鬼として誰かに敗北するまで生き続けなければならないレナの事を思うと同情する。
――同じ剣鬼と言えど、レナの場合はこの力を大切な人から受け取った物だと考えていた。しかし、ケンゾウの場合は友を切り捨てて手に入れた力だと思っていた。二人の価値観の違いはどちらが正しいのかは誰にも分からなかった――
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