不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

文字の大きさ
987 / 2,090
真・闘技祭編

生き延びてやる!!

しおりを挟む
「うおおおおっ!!こんな場所で死ねるかぁっ!!」
『ギィイイイッ!!』


コボルトとオークの大群を振り払い、ダインは走り出す。近付いてくる敵はシャドウマンが相手を行う中、今度はゴブリンの集団が出現した。コボルトやオークと比べると力も弱いが、知能は高いので自作の武器を手にして襲い掛かる。

次々と押し寄せるゴブリンに対してダインは杖を振り払い、吹き飛ばす。何だかんだでダインのレベルも高く、普段の戦闘では全く使わないがバルに仕込まれた槍術を繰り出す。


「このっ……負けるかぁっ!!」
「ギィアッ!?」
「ギギィッ!?」


マリアから受け取った杖は金属製であった事が幸いし、適格に接近してくるゴブリンの急所を狙い撃つ。まだ冒険者になりたての頃に半ば無理やりにバルに教え込まれた技術の一つだったが、チンピラに絡まれた時やどうしても自分が叩かないといけないときぐらいしか使った事がなかった。

魔術師であろうと別に武術を身に付ける事は悪い事ではなく、彼等とて身を守る術として身体を鍛える人間は少なくない。しかもダインの場合はバルの方針で並の冒険者よりも鍛え上げられた事により、逃げ足の速さならば誰にも負けない自信がある。


「うおおおっ!!僕の逃げ足を舐めるなよぉっ!!」
『ギギィッ!?(早っ!?)』


ゴブリンを振り払い、遂にダインは魔物達を振り切って魔の草原から抜け出そうとしたとき、彼の前に何処からか馬の足音が鳴り響く。


「ふははははっ!!」
「うわぁっ!?な、何だ!?」


笑い声と共に現れたのはケンタウロス族にして六聖将の一人でもあるギンタロウだった。彼は配下のケンタウロスの兵士達を引き連れ、ダインの前に立ちふさがる。唐突に現れたギンタロウにダインは戸惑い、この状況で彼が現れた事に驚く。

ギンタロウは顔見知りではあるが、別にそれほど親しい間柄ではない。エリナの叔父でもあるが、ダインはヨツバ王国に滞在中はあまり接点はなかった。そんなギンタロウが現れた事にダインは動揺するが、すぐに助けを求めた。


「あ、あの……エリナの叔父さん、俺の事を覚えてます!?」
「ん?何を言ってるんだ、もちろん覚えているとも!!エリナから君の事はよく聞いているよ!!変な魔法を使う面白いお兄さんだとな!!」
「いや、どんな説明してんだあいつ!?」


ギンタロウの言葉にダインはエリナのあまりにも適当過ぎる説明に若干腹が立つが、ギンタロウはしっかりと自分の事を覚えていた事に安堵する。だが、どうしてこの状況でギンタロウが駆けつけてきたのかをダインは問う。


「あ、あの……ギンタロウさん」
「はっはっはっ!!そんな他人行儀な呼び方はするな!!俺の事はギンさんと呼べばいい!!」
「ギンさん!?今まで誰もそんな呼び方してませんでしたよね!?」
「まあ、そんな事よりも間に合って良かったよ!!マリア殿から話を聞いてるよ、まさか君が僕達の狩猟を手伝ってくれる協力者だとは思わなかったがな!!」
「はっ!?狩猟!?協力者!?」


ダインはギンタロウの言葉に驚き、いったい何の話をしているのかと尋ねるようとしたが、その前にギンタロウは魔の草原の様子を確認する。この草原は常日頃から魔物が集まってくるが、今日はいつもよりも数が多い事に気づき、両手の鉞を振り回す。


「ほう、今日は一段と多いな!!これはいい、大量に狩る事が出来そうだ!!さあ、いくぞダイン君!!」
「え、ちょっ……ちょっと!?」
「悪いが君の事を守る余裕はない!!こちらも自分の身を守るのが手一杯だからな!!さあ、共に行こう!!」
「いや、僕はかえっ……うわぁあああっ!?」


がっしりとダインの腕を掴んだギンタロウは草原へと駆け出し、折角逃げられそうだったダインだが、強制的に彼に連れ出されてしまう。いったい何が起きているのか理解できなかったが、現在の彼が巻き込まれている状況を把握しているのはマリアだけだった。



――実は先日、マリアはギンタロウの元に訪れ、彼が魔の草原で連日のように狩猟を行っている事を聞く。なんでも南の森に生息する魔獣の一部が東聖将の領地にも流れてきたらしい。恐らく南の森でゴウライが魔獣達を大量に狩りつくした影響で彼女の存在を恐れた魔獣が他の地方に逃げ込んだのが理由らしく、その魔獣の大半が魔の草原に集まっているという。



東方の領地には元々生息していなかった種も混じり、ギンタロウも軍勢を率いて対処を行っているがいかんせん数が多すぎて困っていた。東聖将軍の大半は軍隊が激減した南聖将の援軍として派遣した事もあり、彼も自ら出向いて草原に集まった魔物の対処を行う事態に陥っていた。

そこでマリアは近いうちに彼に強力な見方を送り込むと約束し、そして草原にバルトロス王国へと帰ったはずのダインが存在した事からギンタロウは彼がマリアが話していた協力者と判断して共に戦おうとする。


「さあ、行くぞ!!今日は勝ったら肉鍋だ!!」
「うわぁあああっ!?もうどうにでもなれぇえええっ!!」


ダインは逃げたところで自分一人では生き延びられる自信はなく、半ば自棄になりがらも杖を構えてギンタロウと共に草原に集まった魔物達に挑む――




※ダインの冒険はこれからだ!!
しおりを挟む
感想 5,092

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。