不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

レミアの焦り

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「それでは私は先に地下迷宮に行かせて貰います」
「待て、一人で行くつもりか?」
「そのつもりですが……何か問題が?」


レミアは地下迷宮に向かおうとするとシノビが引き留め、彼はため息を吐きながらレナに振り返る。


「いくら依頼人が身内とはいえ、今回は冒険者として依頼を引き受けた身だ。ならば我々も同行するべきだろう」
「それは違うんじゃないですか?今回の依頼はあくまでも討伐ではなくて調査でしょう?調査報告は依頼人に伝えたんですから仕事は終了してますよ」
「う、うむ。確かにそうだな」


ホネミンの言葉にナオは頷き、彼女の依頼はあくまでも調査であって地下迷宮に潜む死霊の討伐を依頼したわけではない。しかし、シノビは地下迷宮にレミアだけを行かせる事に反対した。


「これは俺の勘だが、俺達を襲った死霊は普通ではない。単独で討伐に向かわせるのは危険だろう」
「私の力が信用できないという事ですか?」
「そういうわけではないが……七魔将の件もある。俺にはあの地下迷宮には奴等とは別に厄介な存在が居てもおかしくはないと思っている」
「確かにその可能性もありますね」


七魔将という脅威は排除されたとはいえ、地下迷宮には大量の死霊が潜んでおり、それにレナ達が逃げ出す際に襲い掛かってきた死霊の集合体も気がかりだった。もしかしたら地下迷宮には七魔将に匹敵する脅威がまだ潜んでいるかもしれず、そんな場所にレミアだけを送り込むのは不安があった。

レミアは死霊などの敵に対しては絶対的な力を持つが、敵が死霊だけとは限らず、他にも敵になり得る存在が居たと考えた場合、彼女だけに任せるのは危険な気がしてきた。しかし、レミアは自分自身を鍛え直し、以前よりも力を身に着けたと確信しているだけに今回の任務は自分一人で解決しようとする。


「お気持ちは有難いですが、もう私は以前の私ではありません……必ずや大将軍としてこの国の脅威を取り除いてみせましょう」
「……少し気負い過ぎているのではないか?」
「余計なお世話です!!陛下、どうか今回の一件は私にお任せください!!」
「う、ううむ……」


ナオはレミアに嘆願されて困り果て、彼女の事を信頼していないわけではないがシノビの言葉にも一理ある気がした。バルトロス王国の大将軍はレミアしか存在せず、もしも彼女に何かあったらバルトロス王国は大変な損失を被る。


「レナさん、どうするんですか?本当にレミア大将軍だけ行かせるつもりですか?」
「そう言われても……あ、そうだ。こういう時こそ相談しないと」
「相談……なるほど、その手がありましたね」


レナはアイリスと交信を行い、彼女に判断を仰ぐ事にした。アイリスならば死霊の正体も掴み、レミアだけに対処できるのかどうかも分かる。そう考えて交信を行おうとすると、事情を聞いた彼女は面倒そうな声を上げた。


『なるほど、そんな事になってるんですか。しかし、久々の登場なのにまた面倒な相談をしてくれますね』
『それでさっきの死霊の正体は?』
『地下迷宮の死霊は自分が死んでいる事を理解できていませんでした。しかし、レナさん達の生者の気配を感じた事で自分達が死霊であると認識し、生気を放つレナさん達に襲い掛かったんです。もう浄化する以外に救う方法はありません』
『レミアだけに行かせて大丈夫かな?』
『聖剣を所有しているなら問題はないでしょう。ですけど、少し気負い過ぎていますね……前回の闘技祭の失態を何とか挽回したいと必死なんですよ』


闘技祭でレミアは敗北したのは彼女の傲りもあるが、単純に実力不足だった事も事実である。だから彼女は一から鍛え直してきたが、自分が本当に強くなったのか不安を抱えているらしい。

レミアの不安を払しょくさせるには彼女が一人で大きな功績を上げなければならず、そのために地下迷宮に潜む悪霊を全て浄化するつもりだった。彼女の本来の実力が発揮できれば問題はないが、どうにも気合が入り過ぎていた。もしも今回の任務が失敗すれば彼女は責任を感じて大将軍の座を辞職するかもしれない。


『レミア大将軍はバルトロス王国の唯一の大将軍ですからね、彼女が辞めるとなると他国からも下に見られますよ』
『ならどうすればいいんだよ』
『そうですね……こういうのはどうです?』


アイリスに相談した結果、レナは彼女から意外な助言を受けた。それを聞いたレナはレミアのために自分が危険を冒す覚悟を決め、交信を終えるとため息を吐き出す。


「仕方ないか……ここはレミア大将軍に任せよう」
「……本気か?」
「別に私は困りませんけど、それでいいんですか?」
「レナがそういうなら……」
「あ、ありがとうございます!!」


レナの提案に他の者は反対せず、レミアは自分に大任を任せたレナに頭を下げる。だが、レナは更に条件を付けくわえた。
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