種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

飛行船

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大将軍であるレミアが加入してから数時間後、時刻は昼頃を回り、ホノカは全員を引き連れて闘人都市からそれほど離れていない平原に誘い込む。レノ達は黒猫酒場はバルの女部下に任せ、ホノカに誘われるままに移動を平原に辿り着くと、そこには驚くべき乗用船が用意されていた。


「……これ?」
「これだね」
「マジで?」
「マジだよ」
「ガチで?」
「ガチだ」
「ホンマに?」
「ホンマやで」
「いつまで漫才みたいなやり取りを続ける気だい」


何度も問いただすソフィアとそれに応えるホノカにバルがツッコミを入れる。しかし、彼にとっては何度も問いただしたいほどに眼前に存在する代物が驚愕的だった。



――都市外に存在する平原地帯、そこにはサメの形を模した「飛行船」が着陸していた。しかも、複数の魔石や魔水晶を利用した構造であり、現実世界の飛行船よりも優れている可能性が高い。その全長は300メートルを軽く超し、最大で100人まで乗車出来る。



この世界にも飛行船が存在する事も造り出す技術が存在したのも驚きだが、彼女が魔道電話と呼ばれる現実世界の携帯電話と酷似した物を持っていたのもソフィアにとっては衝撃的だった。もしかしたら、ソフィアが生きている間に彼女が知っている現実世界の科学技術に追いつく可能性も出てきた。


「わああっ……すごい大きいです」
「けど、これ車輪とか無いっすね?どうやってこんな大きい物を運んできたんすか?」
「馬鹿!!さっき飛行船って言ってただろうが……飛ぶんだよこれが」
「ええ~?それは幾ら何でも大ぼら吹きすぎっしょ!こんな翼の無い乗り物が浮くわけないじゃないすか」
「それが飛ぶんだな……まあ、とりあえず乗ってみようか」


ホノカに促され、全員が恐る恐ると飛行船「フライングシャーク(命名:ヨウカ)号」に乗り込む。この船はつい最近、学園都市で開発された乗り物であり、貴族たちの間で行われたオークションでホノカが買い取ったという。

元々は軍事用に開発されたものだが、開発費が非常に高く、量産は今現在では不可能であるため、世界でたった一つしか作り出されていない。開発費を取り戻すために泣く泣くオークションに掛けられ、ホノカがアトラス金貨100枚を支払って購入した代物である。


「へえ……意外と広いんだね」
「わふっ……すごいです」
「おおっ……」


飛行船の中を案内され、ソフィアたちは物珍しそうに首を回しながら歩き回る。想像以上に大きく、さらには独自の開発も施されており、用途が分からない機器も存在する。

この飛行船には「魔導大砲(火薬の砲弾ではなく、火属性の魔石を練り込められた砲弾を撃ち込む大砲)」と呼ばれる物も実装されており、さらには「火属性」の魔石を燃料として利用して最高速度は300キロまで出せるという。この時点で既に現実世界の飛行船よりも何一つ劣っていない。


「蒸気機関を利用する列車という乗り物も欲しかったが……あれは線路を作らないといけないからね。少しだけ車輪の部分を改造すれば動かせないことも無いだろうが……ヨウカがこちらの方を欲しがってね」
「だって空を飛べるんだよ!?飛行魔法無しで空を飛ぶなんて、普通に考えれば有り得ない事だし!!」
「こ、これほど巨大な物が浮かぶんですか……?」
「ああ。が、今は燃料の補給でしばらくは動けないが」
「燃料?」
「この船に取り付けられている機器の動力源は魔石だからね。一度動かすたびに大量の魔石を使用するんだ」
「へえ……」
「まあ、その燃料も僕の国では生産可能だからそれほど費用は問題ないんだが、搭載できる量に限りがあるんで飛行船が移動できる範囲は限られてるんだけどね」


現実世界の飛行船には色々な燃料が存在するが、こちらの飛行船の燃料は魔石のみであり、1時間の飛行で火属性の魔石の使用量は軽く500個を必要とする。この世界では火属性の魔石はそれなりに価値が高いが、ホノカが収める交易都市にはあり溢れた物らしい。

唯一の欠点は飛行の離着陸が時間が掛かり、その隙を狙われて攻撃されたらどうしようもない。ホノカの転移魔方陣を使えば飛行船そのものを転移する事も出来なくもないが、彼女の転移は生物は転移させる事はできないため、誰かが乗車している間は飛行船を転移できない。


「……俺も乗れるのが、嬉しい」
「もともと複数の種族が乗り込むように設計されているからね」


ゴンゾウが少し興奮気味に船内を歩き回る。彼の巨体も収納できる程の広さであり、巨人族の性として大抵の乗り物が乗車(馬や馬車にも乗れないため、常に歩きで移動していた)できない彼にとっては嬉しい誤算である。ポチ子も彼の後に続いて走り回り(歩幅が違いすぎるため、ゴンゾウがただ歩くだけでも彼女の場合は小走りが必要となる)、他の面々も興奮気味で飛行船を見学する。

ソフィアはそんな彼等の姿を微笑まし気に観察しながらも、この飛行船ならば深淵の森に隠されている「魔物」が眠っているという遺跡までたどり着ける可能性が出てきたことに頷く。
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