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闘人都市崩壊編
まさかの遭遇
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「おい、あんた達いい加減に起きなよ」
「水でもかけて……おっと、その必要はなさそうかな」
「うっ……?」
「わうっ……?」
気を失っていたリノンとポチ子は身体を揺さぶられ、目を開くとそこには意外な人物達が心配そうに覗き込んでいた。
「……バル、さん?」
「わふっ……ホノカさん……?」
「そうだよ。たくっ……あんた達、こんな所で呑気に寝てるんじゃないよ」
「どうやら、レノ君がやったようだね」
2人の視界にどちらもボロボロの姿のバルとホノカの姿が映り、服は薄汚れ、片方に至っては何故か服の一部が焼け焦げており、2人に肩を貸されて起き上がる。
「一体、何が……」
「それは僕が聞きたいね……何とか化物から逃げ帰ってきたというのに、もう全部終わっていたようだ」
「はあっ……この都市の再興は難しそうだね」
怪我を負ったリノンをバルが背負い込み、脚を挫いた様子のポチ子をホノカが肩を貸し、周囲の状況に全員が目を当てられない。
――闘技場から降り注ぐ隕石により、闘人都市の大部分の建物が半壊し、さらに暴走した冒険者やゴーレムによってあちこちで未だに被害が勃発しており、すぐに避難をしなければこの場にいる疲労した彼女達も危ない。
「ていうか、あんた生きてたのかい?よく、あんな化け物に襲われて平気だったね」
「そう簡単に言わないで欲しいな……僕も必死に逃げて来たんだよ。貴重な高位転移を発動させる魔水晶を2つも消費したんだからね……」
「ああ……そう言えば生物の転移は出来ないって言ってたっけ?」
「あの……話が見えないんだが……」
事情を知らないリノンとポチ子は首を傾げるが、すぐにポチ子は鼻を引くつかせ、街中の至る所で火の手が上がっているため、煙の臭いが混じって分かりにくいが知人の臭いを感じ取る。
「すんすん……テンさんの臭いです!あっちの方から感じます!」
「テン……ああ、あたしと口調が被ってる女騎士かい?」
「……そうだ、思い出した!!私達はテンさんに助けられて……」
センチュリオンの一員と思われる青年と交戦し、隙を突かれて彼の操るゴーレムの自爆に巻き込まれた際、意識が途切れる中、テンが自分たちを救い出したことをうろ覚えながらに思い出してリノンはポチ子に視線を向けると、
「すんすん……わ、わうっ……?」
「ど、どうしたんだい?」
「それが……テンさん以外にも何か……人の臭いがします」
「敵か!?」
「いえ……これは、レノさんの……でも」
ポチ子は何故か感じられる臭いがレノと酷似している事に気が付き、それによく鼻を鳴らすと微妙な違いがある。
「……誰かは分かりませんけど、嫌な臭いじゃありません。多分、良い人です」
「いい人って……」
「獣人族(あたしたち)ならではの感覚だね。悪意とか、善意とか、そう言った物を感じ取れるんだよ」
基本的に獣人族は単純な性格嗜好の者達が多いが、彼らは本能で善悪を判断出来る。彼らは自分にとって善意か悪意を向ける者を嗅覚で判断する事が出来るという。信憑性は不明だが、少なくともここはポチ子の勘を信じ、全員がテンのいる場所に向けて移動を行う。
距離的にも彼女はそれほど離れた場所ではなく、少し街路を進むだけで倒れこんでいるテンと、彼女の傍に黒いフードで覆った人物が立っており、
――ウォンッ!!
2人の傍には白色の美しい毛並みの狼が立っており、接近してくるリノン達に気が付くと、警戒するように黒いフードの人物の隣で唸り声を上げる。
「ん……誰だ?」
「……女かい?」
テンの様子を伺う人物が振り返り、その際にフードが翻し、僅かだが隙間から赤い髪の毛のエルフの顔が露わになり、全員が顔を見合わせる。誰も顔見知りではないようだが、どうにも見覚えがある気がする。
「あっ……あの時の奴じゃないかい?」
「そう言えばあの恰好……」
「確か大会参加者の……」
少し前に剣乱武闘の闘技場で、レノが試合を終えて戻ってきた時に見かけた人物であり、何故か5日目の試合には参加していなかった事から第二次予選で敗退していたと思っていたが、
「君……その人は私達の知り合いでね。何をしているんだい?」
「え、いや……私はこいつが倒れているから……」
「ウォンッ!」
「ん?ポチ子君どうしたんだい?いきなり吠え出して……」
「今のは私じゃありませんよ!?」
フードの人物と白い狼、つまりはフレイとウルは突然現れたリノン達に慌てふためきながらも、自分が怪しい者ではないという風にフードを脱ぎ払い、
「私はただ、この女が倒れているから、介抱しようとしただけで……」
「森人族の君が?」
基本的に森人族と人間の仲は不和であり、例え相手が子供であろうと森人族は人間というだけで容赦はしない。現にシャドウは幼少の頃に薬草を採取するために間違って入った森人族の領地で悲惨な目に遭い、歪んだ人生を送っているが、
「……この女は知り合いでね……ガキの頃に面倒を見てやったのさ」
「テンさんの、知り合い……?」
「あんた達は聞いてないのかい?私の名前はフレイ……ついでにこのワンコロはウルさ」
「フレイ……?」
フレイという単語にリノン達は顔を見合わせ、何処かで聞いたことがある名前であり、すぐにバルが思い出したように彼女を指さし、
「あんた……まさか、うちの子の親戚のエルフかい!!」
「え!?」
「クゥ~ンッ?」
「ん?どうしたポチ子、お腹でも空いているのか……?」
「今のも私じゃありませんよ!?」
今度はフレイが驚愕する番であり、隣のウルは事態に着いて行けず、首を傾げた――
「水でもかけて……おっと、その必要はなさそうかな」
「うっ……?」
「わうっ……?」
気を失っていたリノンとポチ子は身体を揺さぶられ、目を開くとそこには意外な人物達が心配そうに覗き込んでいた。
「……バル、さん?」
「わふっ……ホノカさん……?」
「そうだよ。たくっ……あんた達、こんな所で呑気に寝てるんじゃないよ」
「どうやら、レノ君がやったようだね」
2人の視界にどちらもボロボロの姿のバルとホノカの姿が映り、服は薄汚れ、片方に至っては何故か服の一部が焼け焦げており、2人に肩を貸されて起き上がる。
「一体、何が……」
「それは僕が聞きたいね……何とか化物から逃げ帰ってきたというのに、もう全部終わっていたようだ」
「はあっ……この都市の再興は難しそうだね」
怪我を負ったリノンをバルが背負い込み、脚を挫いた様子のポチ子をホノカが肩を貸し、周囲の状況に全員が目を当てられない。
――闘技場から降り注ぐ隕石により、闘人都市の大部分の建物が半壊し、さらに暴走した冒険者やゴーレムによってあちこちで未だに被害が勃発しており、すぐに避難をしなければこの場にいる疲労した彼女達も危ない。
「ていうか、あんた生きてたのかい?よく、あんな化け物に襲われて平気だったね」
「そう簡単に言わないで欲しいな……僕も必死に逃げて来たんだよ。貴重な高位転移を発動させる魔水晶を2つも消費したんだからね……」
「ああ……そう言えば生物の転移は出来ないって言ってたっけ?」
「あの……話が見えないんだが……」
事情を知らないリノンとポチ子は首を傾げるが、すぐにポチ子は鼻を引くつかせ、街中の至る所で火の手が上がっているため、煙の臭いが混じって分かりにくいが知人の臭いを感じ取る。
「すんすん……テンさんの臭いです!あっちの方から感じます!」
「テン……ああ、あたしと口調が被ってる女騎士かい?」
「……そうだ、思い出した!!私達はテンさんに助けられて……」
センチュリオンの一員と思われる青年と交戦し、隙を突かれて彼の操るゴーレムの自爆に巻き込まれた際、意識が途切れる中、テンが自分たちを救い出したことをうろ覚えながらに思い出してリノンはポチ子に視線を向けると、
「すんすん……わ、わうっ……?」
「ど、どうしたんだい?」
「それが……テンさん以外にも何か……人の臭いがします」
「敵か!?」
「いえ……これは、レノさんの……でも」
ポチ子は何故か感じられる臭いがレノと酷似している事に気が付き、それによく鼻を鳴らすと微妙な違いがある。
「……誰かは分かりませんけど、嫌な臭いじゃありません。多分、良い人です」
「いい人って……」
「獣人族(あたしたち)ならではの感覚だね。悪意とか、善意とか、そう言った物を感じ取れるんだよ」
基本的に獣人族は単純な性格嗜好の者達が多いが、彼らは本能で善悪を判断出来る。彼らは自分にとって善意か悪意を向ける者を嗅覚で判断する事が出来るという。信憑性は不明だが、少なくともここはポチ子の勘を信じ、全員がテンのいる場所に向けて移動を行う。
距離的にも彼女はそれほど離れた場所ではなく、少し街路を進むだけで倒れこんでいるテンと、彼女の傍に黒いフードで覆った人物が立っており、
――ウォンッ!!
2人の傍には白色の美しい毛並みの狼が立っており、接近してくるリノン達に気が付くと、警戒するように黒いフードの人物の隣で唸り声を上げる。
「ん……誰だ?」
「……女かい?」
テンの様子を伺う人物が振り返り、その際にフードが翻し、僅かだが隙間から赤い髪の毛のエルフの顔が露わになり、全員が顔を見合わせる。誰も顔見知りではないようだが、どうにも見覚えがある気がする。
「あっ……あの時の奴じゃないかい?」
「そう言えばあの恰好……」
「確か大会参加者の……」
少し前に剣乱武闘の闘技場で、レノが試合を終えて戻ってきた時に見かけた人物であり、何故か5日目の試合には参加していなかった事から第二次予選で敗退していたと思っていたが、
「君……その人は私達の知り合いでね。何をしているんだい?」
「え、いや……私はこいつが倒れているから……」
「ウォンッ!」
「ん?ポチ子君どうしたんだい?いきなり吠え出して……」
「今のは私じゃありませんよ!?」
フードの人物と白い狼、つまりはフレイとウルは突然現れたリノン達に慌てふためきながらも、自分が怪しい者ではないという風にフードを脱ぎ払い、
「私はただ、この女が倒れているから、介抱しようとしただけで……」
「森人族の君が?」
基本的に森人族と人間の仲は不和であり、例え相手が子供であろうと森人族は人間というだけで容赦はしない。現にシャドウは幼少の頃に薬草を採取するために間違って入った森人族の領地で悲惨な目に遭い、歪んだ人生を送っているが、
「……この女は知り合いでね……ガキの頃に面倒を見てやったのさ」
「テンさんの、知り合い……?」
「あんた達は聞いてないのかい?私の名前はフレイ……ついでにこのワンコロはウルさ」
「フレイ……?」
フレイという単語にリノン達は顔を見合わせ、何処かで聞いたことがある名前であり、すぐにバルが思い出したように彼女を指さし、
「あんた……まさか、うちの子の親戚のエルフかい!!」
「え!?」
「クゥ~ンッ?」
「ん?どうしたポチ子、お腹でも空いているのか……?」
「今のも私じゃありませんよ!?」
今度はフレイが驚愕する番であり、隣のウルは事態に着いて行けず、首を傾げた――
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