種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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ヒナ編

舌槍

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「クォオオオオッ……!!」


異形の化物はその場を跳躍し、ヒナの放つ右腕の「火炎槍」を躱す。勢いを止められず、そのまま彼女は対象の後方に存在したカプセルに向けて貫手を放つ形となり、


ジュワァアアアッ……!!


右腕から放たれる蒼炎によって形成された火炎の槍は、そのままカプセルを覆うガラスに衝突して右腕ごと貫通してしまう。魔鎧によって形成された彼女の炎は尋常ではない熱量を放ち、いとも容易くガラス溶解させてしまう。


「っと……」


右腕を難なく引き抜いて魔鎧を解除させ、初めて行った技ではあるが想像以上の威力を誇り、これならば天井に逃げるように張り付く化物にも通じるだろう。


「クォウッ……?」


化物は鍵爪のような両脚を天井に張り付け、どういう原理なのかは分からないが逆さまの状態で仁王立ちの状態を保ち、ヒナの様子を確認してくる。まるで重力が反対になったかのような錯覚を受けるが、よくよく確認すると両足の鍵爪を想像させる指が天井にめり込んでおり、恐ろしい握力だ(カゲマルの天井立ちとは少し原理が違う)。


「……降りてきたら?」


ヒナはゆっくりと腰に装着させた聖剣の柄に手を伸ばし、何時でも化物に対して反応できるように注意深く観察していると、


「グェエエエエッ……!!」


化物はまるで呻き声のような音を発し、ひょっとこを想像させる口が徐々に変化していき、大きく開いていく。口内には無数の牙が生えており、その数は尋常ではなく、化物はゆっくりとヒナの方向に顔を向ける。


「イギァアアッ!!」


奇怪な鳴き声と同時に口の中から何かが飛び出し、ヒナの元へ放たれる。その速度は尋常ではなく、まるでバルトロス王国の大将軍のカノンの魔銃から放たれる弾丸にも勝り、彼女は反応に遅れてしまう。


バシィッ!!


「なっ……!?」


腰に装着していたエクスカリバーの柄に的確に命中し、その際にヒナの優れた動体視力が化物の口内から放たれた物体の正体を捉える。それは蛇のように異様に長く伸びた「舌」であり、先端部はまるで槍のように鋭利に尖っていた。


「イギァアアアアッ!!」


ビュンッ!!


化物の口の中から射出された「舌の槍」が今度は胸元に向けて放たれる。狙いは心臓だと見抜き、彼女はすぐに屈んで避けようとするが、


ブシュッ!!


「くあっ……!?」


直前で軌道が変化し、回避行動を取ったヒナの右脇腹を掠める。幸い、軽く服を斬られただけで致命傷ではないが、すぐにその場を離れる。


(しまった……!!)


聖剣の柄を落としてしまい、すぐに周囲の地面に視線を向けるが、先ほどの衝撃で何処かに飛んでしまったのか見当たらない。


「イギィイイイイッ……!!」


ビュンッ!!ビュンッ!!


天井に張り付いたまま、化物の口内から赤い舌がまるで鞭のように周囲に振るわれ、その長さはどうやって体内に収納されていたのかは分からないが、少なくとも6メートルは超える。さらに軌道を変化させることで速度を落とさずに方向転換も可能であり、非常に厄介だった。


「イギァアアアッ!!」


先端が異様に尖った舌が再度放たれ、ヒナは咄嗟に両腕に魔鎧を発動させて舌を掴みとろうとしたが、


バシュッ!!


「あぐっ!?」


寸前でまたもや軌道が変化し、今度は首筋を掠り、あと少し軌道がずれていたら命は無かっただろう。ヒナは何とか下がろうと背後に視線を向けるが、無数のカプセルが障害物となって上手く動けない。


(誘導された?)


ヒナは周囲を確認し、何時の間にか後方にはカプセルの列が並んでおり、左右に逃げようにも位置的に真正面に化物が立っており、隙を見せた瞬間に襲い掛かってくるだろう。この室内には魔装術を施せそうな武器は存在せず、魔鎧だけが頼りだった。


「……やるな」


ゴォオオオオッ……!!



両腕に再び「蒼炎」を纏わせながら、真正面の天井に張り付く化物に構え、攻撃さえ当てられれば敵わない相手ではないと思うが、不用意に接近すればあの「舌の槍」で射抜かれてしまう。こんな時に魔法を使えればと思ってしまうが、泣き言を言っている暇はない。


「強行突破!!」


ドォンッ!!


一か八か、ヒナは瞬脚を発動して天井に張り付いた化物に目掛けて跳躍する。だが、相手はそれを待ち構えていたように口元を大きく開いて舌を瞬時に戻すと、


「クォオオオオッ!!」


ビュンッ!!


舌を警戒していたヒナに左右から化物の両腕が放たれ、まるで一つ一つが刃物ように研ぎ澄まされた12本の指が放たれ、彼女はすぐに両腕を構える。


ズドォオオンッ!!


「グェエッ……!!」
「うぐぅっ……!?」


何とか「魔鎧」で武装した両腕で受け止めるが、鋭利な指先は蒼炎の鎧に阻まれながらも空中でヒナを鋏み込んで固定する。それだけではなく、化物は口元を大きく開き、


「アガァアアアッ!!」


そのままヒナの身体を飲み込もうと持ち上げ、彼女は両腕を塞がれたまま、接近してくる鋭利な牙に対して、


「のおっ!!」


ドゴォッ!!


「グエッ……!!」


まるで新体操の要領で両足を突きあげ、化物の頭部を蹴り上げると、その際の衝撃でそのまま拘束から逃れて地面に落下する。


「くっ……!!」
「グェエエエエッ!!」


ズドォンッ!!


地面に着地したと同時にヒナはその場を転げ回り、直後に頭上から化物が後を追うように落下し、両手を床に突き刺す。特殊金属で構成されているはずの床や天井をいとも簡単に貫くなど、生物とはとても思えない硬度を誇るり、本当に宇宙から訪れた生物ではないかと思い込む。


「このっ……!!」


何とか体勢を立て直し、化物に向けて弾撃を放とうとしたが、既に相手は両手を床に突き刺したままの状態で大きく口を開き、


ドヒュンッ!!


「何度も……喰らわないよ!!」


化物の口内から舌が突きだされ、今度はヒナの顔面に向けて放たれるが、彼女は決して軌道に惑わされない様に右手のみを差し出し、左腕を脇に構える。


ビュンッ!!


予想通り、直前で舌の軌道が変化し、彼女の右足に向けて放たれるが、敢えてそれを避けずに彼女は前に進み、


ドスゥッ!!


「うぐぁっ……!!」


右足に化物の舌が貫かれ、ヒナは苦痛の表情を浮かべるが、すぐに舌が引き抜かれる前に右手で掴みとる。


ガシィッ!!


「イギァッ……!?」


ヒナに舌を拘束され、慌てた様子で化け物は舌を引き抜こうとしたが、その隙を逃さずに彼女はありったけの魔力を左腕に集中させ


「炎斧!!」



――ゴォオオオオッ!!



先ほどの火炎槍のように左腕に纏わせた蒼炎の形状を変化させ、そのまま右手で掴み上げた舌を引きずり、化物の口元に目掛けて突き出す。



ズドォォオオオオンッ!!



「ウゲァアアアアアッ……!?」



ヒナの左肘から放たれる魔鎧が化物の大きく開かれた口に的中し、無数の牙を溶解させ、喉の奥へと深く捻じ込まれる。厄介な舌は一瞬にして焼き焦げ、そのまま地面に堕ちると同時に痙攣する。



「終わりだぁああああああっ!!」



ドパァアアアンッ……!!



左腕から搾りだせるだけの魔力を放出し、遂には化物の後頭部までも貫き、そのまま完全に頭部を崩壊させた――
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