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冒険者編
老婆
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女性は口元を隠していた布を取り払い、冷や汗を流しながら小太刀を構える。ルノの予想よりも年老いており、それでいながら帝国四天王のギリョウのような歴戦の武人のような雰囲気を纏っている。しかし、その老婆を相手をしているには恐らくは人類最強の魔術師であり、大切なローブを傷つけられて怒りを抱いているルノは彼女にとっては「鬼神」のように見えた。
「まさかこの年齢でこれほどの威圧を放つガキと巡り合うとは……嫌になるね」
「降参してください。でないと許しませんよ」
「ああ、そうかい!!」
ルノの言葉を聞き届けた瞬間に老婆は両手の小太刀を投げ飛ばす。だが、2つの小太刀はあらぬ方向に放たれ、最初は狙いが狂ったのかと思われたが、柄の部分にはワイヤーのような糸が結び付けられており、ルノの肉体に糸が触れた瞬間、彼の身体に噛みつく。
「うわっ!?」
「どうだい!!これが日影の捕縛術さ!!」
「あ~……びっくりした。ふんっ!!」
「うなっ!?」
自分の身体に絡みついた糸に対してルノは力尽くで引き千切り、その光景に老婆は驚愕の表情を浮かべる。彼女が小太刀に巻き付けていた糸は牙馬でさえも捕獲できるように作り出された「鋼糸」と呼ばれる糸であり、この糸は元々は大型魔獣の捕獲用に作り出された道具なのだが、ルノが軽く力を込めるだけで糸を振り払う。それを目撃した老婆は自分の想像以上に危険な相手であると判断し、別の手段に移る。
「ちっ、それならこれはどうだい!?」
「煙玉?」
老婆はルノに向けて包帯で巻き付けられた球体を投擲し、それを確認したルノはテレビで見た忍者が使用する煙玉ではないのかと判断し、迂闊に触れるのは危険と判断して掌を構える。
「風圧」
「うおっ!?」
威力を調整してルノは投げ飛ばされた玉を風の力で吹き飛ばし、逆に老婆に向けて返す。自分に迫りくる玉に対して老婆は慌てて避けようとするが、更にルノは指を動かして風を操作して方向転換を行う。
「逃がさない!!」
「嘘だろおいっ!?」
避けたはずの玉が自動追尾するように老婆の身体に移動し、咄嗟に彼女は上空に跳んで回避に成功するが、ルノが指を動かす度に玉は方向転換して追跡する。
「しつこいね!!」
だが、自分に接近する玉に対して女性は天井を足場にして別の場所に避難すると、仕方がないとばかりに口元を布で再び覆い隠し、腰に差していた短剣を突き刺す。その直後、切り裂かれた箇所から黄色の煙が噴き出し、周囲に煙が拡散する。それを確認したルノは煙の色合いから只の目眩しではないと判断し、全身を氷塊の魔法で覆い尽くす。
「氷鎧」
「なんだそりゃっ!?」
煙の中から老婆の驚きの声が上がり、ルノは全身を氷の鎧で覆い尽くすと、煙を遮る。風圧の魔法で吹き飛ばせば良かったのかも知れないが、こちらの方が全身を防御できるため、ルノは煙に覆われた室内に目を凝らす。
(参ったな……何も見えないや。だからと言ってこの状態だと他の魔法は仕えないし、迂闊に直に煙に触れると危険そうだな)
黄色の煙に覆われている状態では暗視の能力も意味はなく、視界を塞がれている以上は相手の位置を把握できない。しかし、煙の中でもルノは自分の記憶を頼りに室内の位置を把握し、一度外に避難するべきかと考える。
(確か扉はあっちの方に……)
煙で覆われているので視界は頼りにならないが、扉が存在する方向に向けて移動を行おうとした瞬間、何処からか老婆の声が響く。
「引っかかったね!!これで終わりだよ!!」
『うわっ!?』
老婆の声が聞こえた瞬間、ルノの足元の床が左右に動き、落とし穴が誕生する。そのまま氷鎧を身に着けたルノが落下したが、冷静さを取り戻したルノは氷塊を操作して空中に浮揚させる。
『ふうっ、危なかった……うわ、下の方は水が溜まってる』
落とし穴の下には水が溜まっており、底が見えない程に深い。しかも上空を見上げると床が再び動き出し、出入口を塞ごうとしていた。その様子を何時の間にかゴーグルのような物で目元を覆っていた老婆が見下ろしており、顔面を覆い隠しているので分かりにくいが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「ここまでのようだね」
『あ、そこ危ないですよ』
「はっ?」
だが、ルノは気にせずに氷鎧を上昇させ、浮上してくるルノに老婆は呆気にとられるが、ルノは完全に床が塞がる前に落とし穴から抜け出す。
『よっと』
「うおおっ!?」
『おっと、逃がしませんよ』
落とし穴から抜け出したルノは逃げようとする老婆を掴み、逃がさないように後ろから抱き着く。慌てて老婆は抜け出そうと必死に暴れるが、氷鎧を身に着けているルノに攻撃する事は出来ず、更にルノに口元の布を奪われる。
『この煙の正体は何なんですか?』
「ちょ、止めっ……ぶあっくしょん!!くしゅんっ!!へっくしょんっ!!」
布を奪われた老婆は煙を吸い込んだ瞬間、派手なくしゃみを繰り返し、鼻水と涙を噴き出す。それ以外に特に身体の不調は確認できず、ルノは仕方なく老婆を抱えた状態で建物の外に移動した。
「まさかこの年齢でこれほどの威圧を放つガキと巡り合うとは……嫌になるね」
「降参してください。でないと許しませんよ」
「ああ、そうかい!!」
ルノの言葉を聞き届けた瞬間に老婆は両手の小太刀を投げ飛ばす。だが、2つの小太刀はあらぬ方向に放たれ、最初は狙いが狂ったのかと思われたが、柄の部分にはワイヤーのような糸が結び付けられており、ルノの肉体に糸が触れた瞬間、彼の身体に噛みつく。
「うわっ!?」
「どうだい!!これが日影の捕縛術さ!!」
「あ~……びっくりした。ふんっ!!」
「うなっ!?」
自分の身体に絡みついた糸に対してルノは力尽くで引き千切り、その光景に老婆は驚愕の表情を浮かべる。彼女が小太刀に巻き付けていた糸は牙馬でさえも捕獲できるように作り出された「鋼糸」と呼ばれる糸であり、この糸は元々は大型魔獣の捕獲用に作り出された道具なのだが、ルノが軽く力を込めるだけで糸を振り払う。それを目撃した老婆は自分の想像以上に危険な相手であると判断し、別の手段に移る。
「ちっ、それならこれはどうだい!?」
「煙玉?」
老婆はルノに向けて包帯で巻き付けられた球体を投擲し、それを確認したルノはテレビで見た忍者が使用する煙玉ではないのかと判断し、迂闊に触れるのは危険と判断して掌を構える。
「風圧」
「うおっ!?」
威力を調整してルノは投げ飛ばされた玉を風の力で吹き飛ばし、逆に老婆に向けて返す。自分に迫りくる玉に対して老婆は慌てて避けようとするが、更にルノは指を動かして風を操作して方向転換を行う。
「逃がさない!!」
「嘘だろおいっ!?」
避けたはずの玉が自動追尾するように老婆の身体に移動し、咄嗟に彼女は上空に跳んで回避に成功するが、ルノが指を動かす度に玉は方向転換して追跡する。
「しつこいね!!」
だが、自分に接近する玉に対して女性は天井を足場にして別の場所に避難すると、仕方がないとばかりに口元を布で再び覆い隠し、腰に差していた短剣を突き刺す。その直後、切り裂かれた箇所から黄色の煙が噴き出し、周囲に煙が拡散する。それを確認したルノは煙の色合いから只の目眩しではないと判断し、全身を氷塊の魔法で覆い尽くす。
「氷鎧」
「なんだそりゃっ!?」
煙の中から老婆の驚きの声が上がり、ルノは全身を氷の鎧で覆い尽くすと、煙を遮る。風圧の魔法で吹き飛ばせば良かったのかも知れないが、こちらの方が全身を防御できるため、ルノは煙に覆われた室内に目を凝らす。
(参ったな……何も見えないや。だからと言ってこの状態だと他の魔法は仕えないし、迂闊に直に煙に触れると危険そうだな)
黄色の煙に覆われている状態では暗視の能力も意味はなく、視界を塞がれている以上は相手の位置を把握できない。しかし、煙の中でもルノは自分の記憶を頼りに室内の位置を把握し、一度外に避難するべきかと考える。
(確か扉はあっちの方に……)
煙で覆われているので視界は頼りにならないが、扉が存在する方向に向けて移動を行おうとした瞬間、何処からか老婆の声が響く。
「引っかかったね!!これで終わりだよ!!」
『うわっ!?』
老婆の声が聞こえた瞬間、ルノの足元の床が左右に動き、落とし穴が誕生する。そのまま氷鎧を身に着けたルノが落下したが、冷静さを取り戻したルノは氷塊を操作して空中に浮揚させる。
『ふうっ、危なかった……うわ、下の方は水が溜まってる』
落とし穴の下には水が溜まっており、底が見えない程に深い。しかも上空を見上げると床が再び動き出し、出入口を塞ごうとしていた。その様子を何時の間にかゴーグルのような物で目元を覆っていた老婆が見下ろしており、顔面を覆い隠しているので分かりにくいが勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「ここまでのようだね」
『あ、そこ危ないですよ』
「はっ?」
だが、ルノは気にせずに氷鎧を上昇させ、浮上してくるルノに老婆は呆気にとられるが、ルノは完全に床が塞がる前に落とし穴から抜け出す。
『よっと』
「うおおっ!?」
『おっと、逃がしませんよ』
落とし穴から抜け出したルノは逃げようとする老婆を掴み、逃がさないように後ろから抱き着く。慌てて老婆は抜け出そうと必死に暴れるが、氷鎧を身に着けているルノに攻撃する事は出来ず、更にルノに口元の布を奪われる。
『この煙の正体は何なんですか?』
「ちょ、止めっ……ぶあっくしょん!!くしゅんっ!!へっくしょんっ!!」
布を奪われた老婆は煙を吸い込んだ瞬間、派手なくしゃみを繰り返し、鼻水と涙を噴き出す。それ以外に特に身体の不調は確認できず、ルノは仕方なく老婆を抱えた状態で建物の外に移動した。
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