最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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冒険者編

偽物の末路

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「ゆ、許してください!!まさか、本当の青空組の方だとは……」
「許してくれ、ね。謝るのは俺達じゃないんじゃねえのか兄さん?」
「イサム隊長、こいつぶった切ろうぜ」
「いいから俺に任せろ」


トシゾウという男からイサムと呼ばれた男は土下座するガリュウに笑みを浮かべた直後、片手を伸ばしてガリュウの頭を掴み上げ、力尽くで立ち上がらせると、勢いよく傍の机に向けて振り下ろす。


「おらっ!!」
「うげぇっ!?」
「うわっ!?」


机にガリュウの額が叩きつけられ、ルノが驚きの声を上げるとイサムがガリュウの頭を掴みながら彼に謝罪する。


「おっと、すいませんね。だが、こいつの仕置きもするんで少し我慢してください」
「あ、ああっ……」
「何だ、もう気絶したのか……おら、起きろっ!!」
「ぐええっ!?」


気絶していたガリュウにイサムはもう一度机に叩きこむと、血が周囲に散らばり、ガリュウの額の皮膚が破れる。その光景に何人かの客が悲鳴を上げるが、イサムは気にせずにガリュウに語り掛けた。


「なあ、兄さん……別に俺達は青空組の名前を語って悪さをした事を怒っているわけじゃないんだよ」
「あ、ああっ……」
「だがな、てめえみたいな三下が帯刀している事だけは許さねえ。この国の掟は知っているな?帯刀を許されるのはお上に許された人間だけなんだよ!!」
「うげぇっ!?」


ガリュウの腹部にイサムの拳が叩きつけられ、内臓にまで響いたのか血を吐き出し、イサムが手を離すとガリュウは腹部を抑えながら跪く。


「ひいいっ……ゆ、許して……」
「どっちにしろ帯刀した人間は処刑の決まりだ。今ここでぶった切ってやる」
「おい、トシゾウ!!」
「隊長は黙っていてくれ、こいつは俺が切る!!」


涙目で血を流しながらガリュウは助けを求めるが、そんな彼を相手にトシゾウが腰の刀を引き抜き、頭上から刃を振り下ろそうとする。その行動にイサムも咄嗟に止めようとしたが、彼より先にトシゾウの行動を止める人間が居た。


「あの、ちょっと待ってください」
「うおっ!?」
「何っ!?」
「えっ……」


何時の間にか席から離れていたルノはトシゾウの上段から振り落とした刃に対し、正面から親指と人差し指だけで「真剣白刃取り」を行い、ガリュウを助ける。その行動に客の誰もが目を見開き、刃を簡単に止められたトシゾウは目を丸くする。


「な、何だお前は!!」
「何だと言われたら困るんですけど……この人、もう反省しているようだし、許したらどうですか?流石にここで殺すのはお店に人にも迷惑かなと……」
「ひいいっ……!!か、刀は返します!!だから許してください!!」


ルノの言葉にガリュウは刀を投げ捨て、土下座を行う。その行動にトシゾウは眉を顰め、ルノが指を離すと彼は渋々と刀を鞘に戻す。


「あんた……何者だ?ここらじゃ見ない顔だな。それにその恰好、どうして異国人の服を着ている」
「異国人?あ、そういう事か……」


現在のルノはアイリスに塗ってもらった退魔のローブを着込んでおり、この日の国は黒髪黒目の人間が多いため、ここの住民だと間違われたらしい。そんな彼の態度にトシゾウは疑問を抱き、隣の少年が声を掛ける。


「何やってんですかトシさん、こんなガキに刃を受け止められるなんて、剣の腕が鈍ったんじゃないです?」
「ソウシ……てめえは黙っていろ」
「落ち着けトシゾウ。なあ、兄さん……こいつを庇う事の意味を理解してんのか?」


ソウシと呼ばれた少年の言葉にトシゾウは睨みつけるが、イサムがそれを抑えてルノを睨みつける。それなりの迫力だが、様々な化物と遭遇したルノにとっては威圧など感じられず、正直に自分の考えを告げる。


「この人が罪を犯して罰を与えようとしているのは分かります。だけど、ここまで痛めつけたんですからもういいんじゃないですか?」
「いいかどうかは俺達が決める。あんた、青空組の事を知らないのか?俺達はこの国の治安を守るために働いているんだよ」
「でも、今は働いてないでしょう?今日は非番だと言ったじゃないですか?」
「なるほど、確かに言われてみれば……こりゃ一本取られましたねトシゾウさん」
「うるせえっ!!屁理屈を言うな!!」


ルノの言葉にソウシがからかうようにトシゾウに声を掛けると、彼はソウシを怒鳴りつけるが、イサムがルノの言い分を聞いて腕を組みながら考え込む。


「……それであんたは何が言いたいんだい?」
「この人を見逃せとまではいいませんけど、ここで殺すような真似はしないで下さい。お店の人だって店の中で人が殺されたら迷惑でしょ?営業にも支障が出るかも知れませんし……」
「え、ま、まあ……」


唐突に話しかけられた店員はルノの言葉に戸惑いながらも頷き、人が殺された店だと噂されたら当然だが客も寄りにくくなる。黙って話を聞いていたリーリスも立ち上がり、ルノ達の間に割り込む。


「まあまあ、落ち着いてくださいよ」
「あんたは?」
「あ、この人の保護者です」
「保護者だったの?」


リーリスの言葉にルノが素で驚くが、彼女は青空組の3人にある提案を行う。



※前話が中途半端に感じたので二話目を投稿しました。
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