最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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外伝 〈一人旅〉

国の闇

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「じゃあ……この島の物資が限られているから新しく来る人間を殺しているの?」
「察しがいいな……俺は只の見張り役だ。無事に島まで泳ぎ切った新人共を殺し、役立ちそうな奴がいたら島の中に入れるんだ」
「見張り役はあんただけ?」
「そうだ。最もそろそろ交代役の人間が訪れるはずだが……それよりもあんた、魔法を使ってたよな?魔術師なのか?」


話を最後まで聞いてくれたルノに親近感でも抱いたのか、ナロクは敬語を忘れて話しかける。しかし、ルノは彼の質問に答えずに腕を組み、自分がとんでもないばしょに訪れた事を理解した。


「まさか囚人だけの島に辿り着くとは……そういえばここに送り込まれる囚人は何処の国から来てるの?」
「色んな国からさ。獣人国、巨人国、王国、帝国……日の国からも訪れてるぜ」
「そんなに!?」


予想外の言葉にルノは驚き、ナロクによると世界中の死刑囚がこの海獄島に送り込まれているという。この島は別に一国だけが管理しているわけではなく、国が不要と判断した人物を送り込んでいるらしい。


「この島にいる人間は世界中の悪党どもだけだよ。だから他の人間を心の底から信用する事は誰も出来ねえ……どんなに協力し合おうが、全員が死刑の判決を下される程の大罪人だからな」
「ちなみにあんたはどんな罪を犯したの?」
「へへっ……知りたいか?」
「……やっぱり止めとく」


ルノの言葉にナロクは誇らしげな表情を浮かべるが、その態度にルノは眉を顰める。自分の悪行を自慢げに話そうとする彼に不快感を抱き、ルノは最後の質問を行う。


「そういえば俺が魔法を使う時に随分とバカにしていたけど、どうして俺が魔法を使えないと思っていたの?」
「それは……ここに送り込まれる囚人の中には魔術師も当然いる。だが、そいつらは必ず魔法が扱えないように「魔封じの首輪」という物を取り付けられる。この首輪を装着された人間は体内の魔力を乱されて魔法を使う事が出来なくなるらしい」
「そんな魔道具があるの?」


魔法を封じる魔道具など聞いた事がなく、最初にルノと遭遇したナロクは彼が首輪をつけていない事から魔術師ではないと思い込んでいたらしい。


「なあ、あんたこれからどうする気だ?言っておくが、俺を捕まえても人質の価値なんかねえぞ?他の奴等に見つかったら真っ先に殺されるぞ」
「余計なお世話だよ。そんなに危険な場所だと分かってたらこんな場所に降りなかったよ」
「降りなかったって……」
「それよりもあの死体は何?わざとらしく豪華な指輪なんか付けて……指輪を回収しようとした人間を殺すつもりだったの?」
「え、いや、それは……」


ルノは砂浜に埋まっている死体を指さすと、ナロクは慌てふためきながら言い訳しようとするが、唐突に彼の背後から声が上がった。


「おいナロク!!そろそろ交代の時間だぞ……ん?誰だそいつは!!」
「あ、兄貴!?」
「兄貴?」


砂浜に男性の声が響き渡り、現れたのは背中に棍棒を抱えた額に十字傷が存在する青年が現れる。ナロクは彼を見て兄貴と発言したが、外見から考えてもナロクの方が明らかに年上であり、本当の兄弟ではないだろう。


「おい、誰だそいつは?新人か?」
「え、えっとですね……兄貴、この方は……」
「ナロク!!労働力になりそうな奴以外は生かすなと言われただろうが!!ガキなんて何の役にも立たねえ!!さっさと殺せっ!!」
「ガキね……」


唐突に現れた青年にナロクは冷や汗を流し、ルノと彼を交互に見つめる。その彼の反応に青年は訝しみ、ルノは溜息を吐いて青年に顔を向ける。


「人殺しは犯罪ですよ?」
「はあ?馬鹿かお前はっ!!てめえも人を殺ってここに送り込まれたんだろうが!!」
「……人を殺したことはありません
「じゃあ、何の罪で送り込まれたんだよ?その可愛い顔で女でも騙したのか?ぎゃははははっ!!」
「もうそういうのいいですから……風圧」
「ぎゃああっ!?」
「ああっ……」


ルノの魔法によって下品な笑い声をあげていた青年は吹き飛ばされ、それを目撃したナロクは頭を抑える――




――数分後、砂浜には武器を押収されてナロクと共に正座する青年の姿が存在し、ルノは彼の名前から尋ねた。


「じゃあ、名前を教えてくてください」
「……ニオだ」
「ニオダ?」
「ニオ!!ニオが名前だ!!」
「兄貴……口を慎んだ方がいいですよ」


ニオと名乗った青年は正座をしながらもルノに突っかかり、今にも飛び掛かりかねないが、慌ててナロクが抑える。そんな彼にルノは溜息を吐き出し、回収した棍棒を見せつける。


「これを見てください」
「な、何だよ!?」
「ひいっ!?」


自分達が殴りつけられると思ったのか、二人は顔色を青くするが、そんな彼等の前でルノは棍棒を左手で握り締めると、そのまま握りつぶす。


「ふんっ!!」
「なっ!?」
「嘘っ!?」


長さが野球バットほど存在する棍棒をルノは左手のみで握り潰し、真っ二つに割る。その光景にニオとナロクは目を見開き、ルノは質問を再開した。
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