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外伝 〈一人旅〉
キジン
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「おう、待たせたなお前等!!」
「あ、親分!!」
「待ってましたよ!!」
「……でかいな」
城門が内側から押し開かれ、姿を現したのは4メートル程の身長を誇る大男が現れ、すぐにルノは相手が「巨人族」である事に気付く。帝国でも何度か見かけた種族であり、全種族の中でも体格と腕力に特化した種族であり、名前の通りに普通の人間とは比べ物にならない巨体を誇る。
「何だ?こいつが漂流者なのか?ただのガキじゃねえかっ!!」
「ゆ、油断しないで下さい親分!!こいつ、魔術師です!!」
「ほう……そいつは面白そうだな」
「あんたがここの代表?なら、少し話をしたいんだけど」
キジンと呼ばれている大男はルノと向かい合い、自分に対して全く臆した様子がないルノに笑みを浮かべ、腕を組みながら話しかけてきた。
「おう!!俺がこの島の主のキジンだ。お前の名前は?」
「霧崎ルノ」
「きりさき……?変な名前だな、まあいい。それで、どうして俺様の元に訪れたんだ?」
「じゃあ、単刀直入に言わせてもらうけど、しばらくの間だけこの島に滞在したい。出来れば食糧と身体を休める場所を提供してもらいたい」
「無理だな」
ルノの言葉を聞いて即座にキジンは否定する。予想通りの返答とはいえ、即答で答えてきた相手にルノは戸惑い、一応は理由を尋ねる。
「どうしても無理?」
「ああ、別に意地悪で言っているわけじゃねえ。見てみろよこの有様を?俺達も自分達の食う分を確保するだけで精一杯なんだよ。あんたのような余所者に食料を分ける余裕なんぞねえ」
キジンは街の周囲で農作業を行う囚人達を指差し、必死に働いている彼等を示して食料の有が無い事を伝える。しかし、ルノとしても何もせずに世話になるつもりはなく、ある取引を申し込む。
「だったら俺もあんた達に利がある条件を付ける」
「ほう、どんな条件だ?」
「農作物の回収を手伝う、それでどう?」
「……話にならねえな。言っておくが、今働いている奴等は「農民」の職業の人間達だぞ?魔術師のお前が農作業を手伝ったところで碌なもんは作れないだろうが」
――この世界の大半の人間は「農民」と呼ばれる生産職の職業であり、彼等は生まれた時から農作物を育てるのに適した技能スキルを習得している。彼等の耕した畑の農作物は普通の人間が作り出す者よりも成長速度が高く、栄養価も高い。だからこそこちらの世界では食料問題に悩まされるような事態は滅多に陥らず、飢饉に悩まされた事もない。
しかし、農民以外の職業の人間が農作業を行っても入手できる農作物はどれだけ良い肥料や環境が整っていても農民が作り出す物には及ばず、価値は低い。しかも一般的に魔術師の職業の人間は運動能力が低いため、仮に農作業を手伝わせても碌な成果は得られないとキジンは判断した。
「違うよ。農作業を手伝うんじゃなくて、農作物の回収を手伝うと言ったでしょ?」
「はあ?どういう意味だそれは?」
「論より証拠、今から俺の魔法を見てもらう。きっとこれを見たら納得してくれるから……ニオ、ロナク!!そこの人達から種を分けてきてもらってよ!!」
「えっ!?」
「た、種ですか!?」
ルノは種まきを行っている囚人を発見し、ニオとロナクに声を掛けて種を分けて貰うように指示を出す。唐突に呼び出された二人は驚くが、キジンもルノの言葉に興味を抱いたのか二人に指示を出す。
「面白い……何を見せてくれるのか知らねえが、別にいいだろ。おい!!種を持って来い!!」
「は、はい!!」
「すぐに持ってきます!!」
二人は慌てて種まきを行っている囚人の元に赴き、数種類の植物の種を受け取ると、ルノの元に戻って差し出す。彼等から種を受け取ったルノは全員を見渡し、皆が見える位置で掌を差し出す。
「じゃあ、よく見ておいてね。今からこの種を育てるから」
「育てる?どういう意味だ?」
「いいから黙ってみてなよ……光球!!」
種の一つを抱えた状態でルノは魔法を発動させ、掌の真横に光の球体を作り出す。別に光球の魔法自体は珍しい物ではなく、魔術師以外の人間も扱えるので得に囚人達は驚ろかない。
「……おい、何の真似だ?そうやって種に光を当てれば勝手に育つと思ているのか?」
「思っているよ。ほら、ちゃんと見ててよ」
ルノの行動の意図を読めずにキジンが苛立つが、そんな彼の前にルノは掌を差し出し、そして強化スキル「浄化」を発動させた。直後に光球の色合いが「銀色」へと変色し、光球から放たれる魔力の光を浴びた種に異変が生じ、種から芽が誕生すると急速的な速度で成長する。
「うおおっ!?」
「な、何だっ!?」
「おっとと……これでよし」
掌の中で尋常ではない速度で育つ植物をルノは慌てて地面に降ろし、根本の部分を地中に埋める。やがて光球が縮小化して消失する頃にはルノ達の前には立派な「樹木」に成長した植物の姿があり、枝の部分には大量の木の実が出来上がっていた。
「あ、親分!!」
「待ってましたよ!!」
「……でかいな」
城門が内側から押し開かれ、姿を現したのは4メートル程の身長を誇る大男が現れ、すぐにルノは相手が「巨人族」である事に気付く。帝国でも何度か見かけた種族であり、全種族の中でも体格と腕力に特化した種族であり、名前の通りに普通の人間とは比べ物にならない巨体を誇る。
「何だ?こいつが漂流者なのか?ただのガキじゃねえかっ!!」
「ゆ、油断しないで下さい親分!!こいつ、魔術師です!!」
「ほう……そいつは面白そうだな」
「あんたがここの代表?なら、少し話をしたいんだけど」
キジンと呼ばれている大男はルノと向かい合い、自分に対して全く臆した様子がないルノに笑みを浮かべ、腕を組みながら話しかけてきた。
「おう!!俺がこの島の主のキジンだ。お前の名前は?」
「霧崎ルノ」
「きりさき……?変な名前だな、まあいい。それで、どうして俺様の元に訪れたんだ?」
「じゃあ、単刀直入に言わせてもらうけど、しばらくの間だけこの島に滞在したい。出来れば食糧と身体を休める場所を提供してもらいたい」
「無理だな」
ルノの言葉を聞いて即座にキジンは否定する。予想通りの返答とはいえ、即答で答えてきた相手にルノは戸惑い、一応は理由を尋ねる。
「どうしても無理?」
「ああ、別に意地悪で言っているわけじゃねえ。見てみろよこの有様を?俺達も自分達の食う分を確保するだけで精一杯なんだよ。あんたのような余所者に食料を分ける余裕なんぞねえ」
キジンは街の周囲で農作業を行う囚人達を指差し、必死に働いている彼等を示して食料の有が無い事を伝える。しかし、ルノとしても何もせずに世話になるつもりはなく、ある取引を申し込む。
「だったら俺もあんた達に利がある条件を付ける」
「ほう、どんな条件だ?」
「農作物の回収を手伝う、それでどう?」
「……話にならねえな。言っておくが、今働いている奴等は「農民」の職業の人間達だぞ?魔術師のお前が農作業を手伝ったところで碌なもんは作れないだろうが」
――この世界の大半の人間は「農民」と呼ばれる生産職の職業であり、彼等は生まれた時から農作物を育てるのに適した技能スキルを習得している。彼等の耕した畑の農作物は普通の人間が作り出す者よりも成長速度が高く、栄養価も高い。だからこそこちらの世界では食料問題に悩まされるような事態は滅多に陥らず、飢饉に悩まされた事もない。
しかし、農民以外の職業の人間が農作業を行っても入手できる農作物はどれだけ良い肥料や環境が整っていても農民が作り出す物には及ばず、価値は低い。しかも一般的に魔術師の職業の人間は運動能力が低いため、仮に農作業を手伝わせても碌な成果は得られないとキジンは判断した。
「違うよ。農作業を手伝うんじゃなくて、農作物の回収を手伝うと言ったでしょ?」
「はあ?どういう意味だそれは?」
「論より証拠、今から俺の魔法を見てもらう。きっとこれを見たら納得してくれるから……ニオ、ロナク!!そこの人達から種を分けてきてもらってよ!!」
「えっ!?」
「た、種ですか!?」
ルノは種まきを行っている囚人を発見し、ニオとロナクに声を掛けて種を分けて貰うように指示を出す。唐突に呼び出された二人は驚くが、キジンもルノの言葉に興味を抱いたのか二人に指示を出す。
「面白い……何を見せてくれるのか知らねえが、別にいいだろ。おい!!種を持って来い!!」
「は、はい!!」
「すぐに持ってきます!!」
二人は慌てて種まきを行っている囚人の元に赴き、数種類の植物の種を受け取ると、ルノの元に戻って差し出す。彼等から種を受け取ったルノは全員を見渡し、皆が見える位置で掌を差し出す。
「じゃあ、よく見ておいてね。今からこの種を育てるから」
「育てる?どういう意味だ?」
「いいから黙ってみてなよ……光球!!」
種の一つを抱えた状態でルノは魔法を発動させ、掌の真横に光の球体を作り出す。別に光球の魔法自体は珍しい物ではなく、魔術師以外の人間も扱えるので得に囚人達は驚ろかない。
「……おい、何の真似だ?そうやって種に光を当てれば勝手に育つと思ているのか?」
「思っているよ。ほら、ちゃんと見ててよ」
ルノの行動の意図を読めずにキジンが苛立つが、そんな彼の前にルノは掌を差し出し、そして強化スキル「浄化」を発動させた。直後に光球の色合いが「銀色」へと変色し、光球から放たれる魔力の光を浴びた種に異変が生じ、種から芽が誕生すると急速的な速度で成長する。
「うおおっ!?」
「な、何だっ!?」
「おっとと……これでよし」
掌の中で尋常ではない速度で育つ植物をルノは慌てて地面に降ろし、根本の部分を地中に埋める。やがて光球が縮小化して消失する頃にはルノ達の前には立派な「樹木」に成長した植物の姿があり、枝の部分には大量の木の実が出来上がっていた。
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