最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
256 / 657
帝国の危機

空間移動

しおりを挟む
「じゃあ、俺の身体にしっかりとしがみついて下さい。振り落とされないように気を付けて下さい」
「いや、それは分かりましたけど……別に縄で縛る必要あるんですか?」


城外へ抜け出した直央は縄を利用してリーリスと自分の身体を縛り付ける。彼女の身体を背負い込んだ状態で縄で胴体を縛り付け、しっかりと固定化する。一応は城の外とはいえ、他の人間に見られたら非常に不味い状況である事は間違いなく、リーリスは他の人間に見られていないのかを警戒しながら直央に尋ねる。


「例の空間魔法で移動するという事は分かりましたけど……どうやってここから移動するんですか?」
「それは今から分かるよ。じゃあ、まずはあの屋根の上に移動しようか」
「え?屋根って……おわっ!?」


話している間にも直央は近くの建物の屋根に視線を向け、空間魔法を発動させる。ほぼ同時に二人の目の前と屋根の上に人間が通れる程の黒渦が誕生し、直央は渦の中に入り込む。


「ほら、移動しましたよ」
「うわ、本当に繋がっているんですね。まるでどこでも〇アみたい……」
「え?どこでもド〇?」
「いえ、何でもないです。この話はここまでにしましょう。これ以上続けるとヤバそうですし……」


空間魔法で移動した感想は特になにも感じられず、黒渦に関しても霧のようなもので特に感触はない。直央の背中の中でリーリスは内心この魔法の恐ろしさを考える。


(もしもエルフ王国とバルトロス帝国が敵対した場合、直央さんのこの能力は厄介ですね。条件はありますけどこの空間魔法は一瞬で長距離を移動できるという点では瞬間移動のような物ですね。もしも空間移動を利用して城内に兵士を送り込まれたら……帝国は為す術がないかもしれません)


今までバルトロス帝国が他国よりも秀でた点があるとすれば異世界人のルノの存在が大きく、竜種を圧倒できる戦闘力を持つ人間などルノしか存在しないだろう。しかし、エルフ王国に召喚された勇者の直央の力も侮れず、彼の空間魔法は使い道によっては大きな脅威になる。


(仮に将来的に帝国と王国が敵対した場合、ルノさんと直央さんだとどちらが厄介なんですかね?今のところは直央さんの力はルノさんに及ばないそうですが、それでも将来的にはルノさんに匹敵する程に成長する可能性もありますね……)


直央は「貧弱」と呼ばれる能力のせいで初期のステータスは最低の状態で召喚されたというが、彼の異能の特徴は「レベル」の上昇率が高く、大量のSPを入手できるという点である。素の能力はルノに及ばずとも、大量の能力をSPを消費して覚えた場合は大幅な能力強化も行えるため、絶対にルノが勝るとは限らない。


(ルノさんが早期熟成型なら直央さんは大器晩成型ですね。ルノさんがいる限りは帝国の一大強国も健在かと思いましたが、これは分からなくなってきましたね……)


現在はルノという存在がいるお陰で帝国は他国から優れていたが、勇者である直央の能力も決して侮れず、将来的にはルノを超える逸材になるかもしれない。


「じゃあ、ここからは急いでいくからリーリスさんも気を付けてね」
「この状態で何を気を付けろというんですか?あ、知り合いに見つかっても新手のSMプレイだと勘違いされないようにマスクでも被りますか?」
「それはちょっと……だいたいマスクを付けると俺の空間魔法も上手く発動しない可能性もあるから」
「冗談ですよ。ルノさんと違って直央さんは冗談が通じにくいタイプですね」
「この状況で冗談を言えるリーリスさんが凄いよ……はあ、リンと比べると背中の感触も微妙だし」
「それは暗に私の胸が小さいと言っているんですか?ねえ?こっち向いて下さいよ」


直央はリーリスの言葉を無視して能力スキルを発動させ、遠方の景色を確認する。観察能力を上昇させる「観察眼」視力を上昇させる「遠視」の技能スキルを発揮し、直央は空間移動を行う。


「ここからは急ぎ足で行くよ!!」
「うわっ!?」


リーリスは振り落とされないように直央にしがみつくと、彼は屋根の上から飛び降りる。そのまま地面に向けて降下する寸前、足元に黒渦を発生させて別の建物の屋根の上に移動を行う。


「一気に行くから気を付けてね!!」
「おわぁっ!?」


跳躍を行う度に黒渦を通過して別の建物の屋根の上に移動を行い、遂には帝都を取り囲む城壁にまで移動を行う。途中、城壁の上で兵士と会話していたダンテが二人の姿を確認して驚きの声を上げた。


「うおっ!?な、何だ!?」
「あ、どうも……」
「ううっ……ちょっと酔ってきました」
「えっ……あの、出来れば背中で吐かないで下さい」
「頑張りますから早く移動してください……あ、ちょっと外出するだけですからお気になさらずに」
「はあっ!?おい、どういう意味だ!?」


唐突に現れた二人にダンテは激しく混乱するが、今は状況を説明する暇もないので直央はリーリスを背負ったまま城壁を飛び降りる。その光景に城壁に立っていた兵士達は悲鳴を上げ、ダンテも目を見開く。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。