最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

空の倉庫

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――時刻は数分前に遡り、ガオンから脅されて広間から抜け出した兵士達は一目散に外へ向けて移動していた。彼等は金で雇われただけの傭兵であり、決して獣人国に忠誠を誓っているわけでもガオンに恩義があるわけでもない。


「くそっ!!やってられるかこんな仕事!!」
「そうだな……金払いが良いから引き受けたが、正直にこんな事になるなんて思いもしなかったぜ」
「何が将軍だ!!偉そうにしやがって……文句があるなら自分で何とかしやがれ!!」


広間を抜け出した傭兵達はガオンの姿が見えなくなった瞬間に悪態を吐き、彼等の殆どは自分の仕事を放棄して逃走を計る。ガオンに逆らう事になるが、それでも構わずに彼等は逃走を選択した。


「お、おい……本当にこのまま逃げるのか?もしも俺達が逃げたのがばれたら、後でヤバい事になるんじゃないのか?」
「いいんだよ!!そもそもあんな化物に勝てるはずがないだろ!!あのゴリでさえもやられたんだぞ?俺達が束になっても勝てねえよ!!」
「だよな……けど、このまま逃げても今度は俺達がお尋ね者として指名手配されるんじゃないのか?」
「どうせ指名手配される前に例の侵入者がガオンをどうにかするだろ。それにもしも指名手配されても問題ないように倉庫から使えるもんは全部奪って逃げればいいんだよ」
「そうだな……あれだけの食料と武器があればしばらくは身を潜められるからな」


兵士達が真っ先に向かったのは1階に存在する食糧庫、武器庫、薬品庫へ向かい、民衆からかき集めた物資を奪い取ろうと考えていた。金庫を狙わないのは現在は内乱の影響で物価が高騰化しているために現在は金銭よりも物品の方が色々と都合が良いからである。


「幸い、他の奴等が先に逃げたせいでここにいるのは俺達だけだ。ガオンの奴に気付かれる前にありったけの物資を運び出すぞ!!」
「けど、もしも将軍が追っ手を差し向けたらどうするんだよ?」
「その時はその時だ!!今は一刻も早く逃げるぞ!!」


傭兵達は自分達では敵わない相手と戦うよりは雇用主を裏切って物資を奪い、身を隠す事を決断して早急に建物の一階に向かう。この建物にはガオンの部隊が数日も掛けて民衆から集めた大量の物資が保管されているため、侵入者やガオンの配下に気付かれる前に傭兵達は物資を運び出そうとした。


「よし、ここだ……ちょっと待て、もう鍵が外されているぞ!?」
「何だと!?先客がいたのか?」
「他の奴等が先に来てたのか!?」


最初に傭兵達が訪れたのは「薬品庫」であり、彼等が到着した時には既に扉は開け放たれていた。最初は自分達以外の人間が先に物資を盗難するために入り込んだのかと傭兵達は考えたが、彼等は扉を開いて中を確認した瞬間に目を見開く。


「な、何だこりゃっ!?」
「薬が……ない!?」
「そんな馬鹿なっ!?」


薬品庫内に保管されていたはずの全ての薬剤が存在せず、棚の中に並べられていた薬品全てが姿を消していた。慌てて傭兵達は部屋の隅から隅まで調べてみたが、薬草すらも残っていなかった。


「ど、どうなってやがる!?あれだけあった薬は何処に消えた!?」
「有り得ねえ……俺は昼間にここに寄った時には確かに薬は存在したぞ!!一体誰がこんな事を……!?」
「落ち着け!!くそ、こうなったら他の倉庫に向かうぞ!!」


嫌な予感を覚えながらも薬が一つも残っていない薬品庫を後にした傭兵達は今度は食糧庫に向かうと、こちらも薬品庫の時と同様に扉が開け放たれており、彼等が中に入り込んだ時には既に食料品は既に運び出された後のように何も残っていない。


「おい、嘘だろ!?食料も全部持っていかれているぞ!!」
「あ、有り得ねえ……この食糧庫には50頭以上のマダラバイソンの干し肉が保管されていたんだぞ!?それに米や酒や調味料の類まで無くなってるぞ!?」
「どうなってるんだ……ま、まさか武器庫も!?」
「急げ!!」


食糧庫さえも空になっている事が判明し、焦りを抱いた傭兵達は最後の武器庫へ向かう。予想通りというべきか既に傭兵達が到着した時には武器庫の扉も開け放たれ、嫌な予感を抱いた兵士達が中に入り込もうとすると、倉庫内から数人の人間の声が聞こえてきた。


「おい、静かにしろ……誰か居るぞ?」
「まさか、薬品庫と食糧庫に入った奴か?」
「いいから静かにしろっ……気付かれない様に覗けよ」


扉の前に集まった傭兵達は武器庫の中を覗き込むと、そこには異様な光景が広がっていた。大量の武器が並べられている倉庫の中で氷鎧を装備した状態のルノが次々と武器を集め、氷塊の魔法で生み出した大きな箱の中に武器を収めていた。


『結構いっぱいあるな……流石にアイテムボックスの能力でも全部は持って行けそうにないし、この中に入れて保管しておくかな』
「ねえ!!こっちの方には魔石も保管されているわよ!!」
「こっちの方にはいっぱい木箱が並んでいます!!」


氷塊製の大きな箱の中に武器を収めるルノに対し、武器庫の別の場所からリディアとワン子が声を掛ける。その光景を見た傭兵達は唖然とした表情を浮かべ、状況を理解するのに十数秒の時間を要する。
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