最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

追い詰められているのはどちらか?

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――陣に逃げ帰ったガルファンは幕の中に引きこもり、苛立ちを隠せず瓶に入った酒を飲みながら机と椅子を蹴り飛ばす。その様子を兵士達は怯えた表情を浮かべながら見つめ、逆鱗に触れないように大人しく待機するしかなかった。


「くそ、忌々しい!!あの魔術師め……何処まで俺の邪魔をする!!ちっ、新しい酒を持ってこい!!」
「が、ガルファン様、これ以上は……」
「何だと!?貴様、この俺に逆らう気か?」
「ひっ!?わ、分かりました!!」


ガルファンの身体を心配した兵士が酒を飲むのを止めるように忠告するが、そんな兵士の言葉を聞いてガルファンは背中に抱えた紅蓮に手を伸ばして睨みつける。慌てて兵士は新しい酒を用意するために抜け出し、その間にもガルファンは空になった瓶を地面に叩きつける。

すぐに新しい酒が運び込まれ、既に何十杯の酒を飲んでいるにも関わらずにガルファンは完全に酔い切れることが出来ず、昼間の騒動を思い出すだけで怒りで頭がおかしくなりそうになる。自分の計画を邪魔したルノにガルファンは我慢できずに酒の入った瓶を兵士に投げつけてしまう。


「あの男め!!」
「ぐあっ!?」
「将軍!?一体何を……!?」


瓶を叩きつけられた兵士は頭から血を流しながら跪き、慌てて他の兵士達が介抱を行う。そんな彼等の様子にも気づいた風もなくガルファンはうろうろと幕の中で歩き回り、次の策を考える。


「くそ、このままではどうしようも出来ん……あの魔術師をどうにかしない限りは攻める事も出来ん。どうにか奴を街の外へ引きずり出せば……」
『…………』


自分一人だけの世界に入ったガルファンを見て兵士達は不満気な表情を浮かべ、傷を負った兵士を幕の外へ退出させる。その一方でガルファンは酒を飲みながら幕の中を歩き回り、やがて妙案を思いつく。


「そうだ!!魔術兵を使えばいい、奴らを街の四方に配備させて一斉に攻撃を行えばいくら奴でも防ぐ事は出来まい!!ふははははっ!!こんな名案を思い付くとは流石だな!!」
「大将軍、魔術兵は本日の戦闘で魔力を激しく消耗しています。流石にこれ以上の魔法は控えさせた方が……」
「何だと!?貴様、俺の考えた策にケチをつける気か!?」
「い、いえ、そういうわけでは……」


魔術兵は昼間の戦闘で大半の兵士が魔力を消耗しきっており、完全には魔力を回復しきれていない状態で魔法を使用させるのは身体に危険過ぎた。ルノのような初級魔法は魔力消費量が少なく、少し時間を空ければ簡単に魔力を回復するが普通の魔術師が扱う砲撃魔法は威力は大きいがその分に魔力の消費量が激しく、使用後にはある程度の時間を空けなければ回復はしない。

薬の類を使用して魔力を補う方法もあるが、生憎と軍隊が所有している薬品の殆どは兵士の治療用のための回復薬しか存在せず、魔術兵の魔力を回復させる魔力回復薬の類は少ない。これは獣人国が傷の治療の薬草の類は豊富なのに対して魔力を回復させる類の素材が少ない事が原因である。


「すぐに魔術兵を用意しろ!!今日の夜に街を攻撃する!!貴様等も準備をしろ!!」
「将軍!!お言葉ですが奴等はガルル王子を匿っているのですよ!?これ以上に無暗に攻撃すれば王子の身が……!!」
「やかましい!!お前達は俺の言う事だけを聞いていればいいのだ!!馬鹿者どもが……」
『っ……!!』


酒に酔っ払って普段以上に横暴な態度を取るガルファンに兵士達は不満の表情を浮かべるが、そんな彼等の反応に気づいた様子もなくガルファンは座り込み、夜襲を行う事を命じた。幕の中に残っていた兵士達は渋々とガルファンからの報告を他の兵士に伝えるために抜け出し、残されたガルファンは椅子に座り込んで机に足を乗せる。


「全く、無能な部下共が……ひっく、少し飲み過ぎたか……?」


急な睡魔に襲われたガルファンは座った状態で意識を失ってしまう――




――次にガルファンが目を覚ましたのは幕の外から聞こえてくる兵士達の悲鳴を耳にした時であり、何事かと目を覚ましたガルファンの元に慌てた様子の兵士達が中に入り込んできた。


「将軍!!目をお覚まし下さい!!寝ている場合ではありません」
「な、何だ……何の騒ぎだ?」
「敵襲です!!賊が我々の陣内に侵入した模様です」
「何だと……あいでっ!?」


敵襲という言葉を聞いてガルファンは自分が机に足を乗せていたことを忘れて立ち上がろうとしてしまい、椅子から転げ落ちてしまう。その様子を見て呆れた表情で兵士達が彼を抱き起し、現状の報告を行う。


「陣内に運び込んでいたはずの物資が次々と奪われています!!食料、水、武器……ありとあらゆる物が消えています!!」
「そんなバカな……警備は何をしていた!?」
「そ、それが……実は牙竜が北側の方に出現して騎兵隊の馬を襲っているんです!!大半の兵士達は牙竜の対応に向かっています!!その間に物資が奪われたようで……」
「牙竜だと……例の報告にあった個体か!?」


ガルファンは先方隊として送り込んだ5000の騎兵が発見したという牙竜の存在を思い出し、慌てて立ち上がって指揮を取ろうとするが、飲み過ぎたせいか未だに頭がはっきりとせず、まともに立ち上がる事も出来ずに転んでしまう。
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