最弱職の初級魔術師　初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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獣人国

獣人国軍の投降

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「ふうっ……これで俺の勝ちでいいんですよね」
「あ、ああっ……」
「将軍が負けた……」
「武力しか取り柄のなかった将軍が……」

地面に落ちた紅蓮をルノは拾い上げ、気絶したガルファンに視線を向ける光景に遂に周囲の兵士達も戦意を失い、武器を下ろす。反乱に加担していた者達もルノに敵意が無い事を示すために慌てて両手を上げ、降伏を示す。

「わ、我々の負けです！！どうか、お許しください！！」
「お願いします！！私達は将軍の命令に従っていただけです！！」
「どうかご慈悲を……」
「えっと……困ったな、どうしよう……」

ルノは次々と命乞いを行う兵士達に視線を向け、彼等にどのような対応を行うべきか悩む。別に降伏してくれるのならばこれ以上は手出しするつもりはないが、まずは仲間達に事情を説明する必要があった。ルノは上空を見上げると、空を浮かぶガーゴイルがこちらの様子を伺っている事に気付き、降りてくるように促す。

「リディア！！聞こえてるんでしょ？ちょっと皆にこの状況の事を伝えて！！」
「り、リディア？」
「誰だ？」

上空に向けて大声を発したルノに兵士達は空を見上げると、そこにはガーゴイルが浮かんでいる事に気付き、彼等はガーゴイルをリディアとルノが呼んでいるのか驚く。だが、そんな兵士の反応に気付かずにガーゴイルは頷く素振りを行い、地上へと着陸する。

「シャアアッ！！」
「うわ、ガーゴイルだと！？」
「ば、馬鹿！！口が過ぎるぞ……どうか我等の事をお許しくださいリディア様」
「り、リディア様……！！」
「シャアッ？」

何故か自分の主人の名前で呼びかけてくる兵士達にガーゴイルは首を傾げ、そんな彼等の反応を見てルノは苦笑いを浮かべながらガーゴイル越しにこちらの様子を観察しているはずのリディアに事情を話す。既に将軍を打ち倒し、この場の兵士達は降伏した事を説明した――

――数時間後、１３番街の防壁の前には５万を超える兵士が集まり、彼等は装備を没収された状態でガオンの配下と街の警備兵に取り囲まれていた。既に降伏をしたとはいえ、数の上では２倍以上の兵力差が存在するため、いつ反旗を翻すか分からない以上は警戒する必要がある。そのため、しばらくの間は彼等は街の外で待機させる事が決まった。

「ほら、これが今日の分の配給だ。数はあるから皆と分け合え」
「あ、ありがとうございます！！」
「やった、食べ物だ！！」
「腹減ったな……」

ガオンの配下の兵士が用意した食事が兵士達に分け与えられ、彼等は嬉しそうにまともな食事を味わう。ガルファンが指揮していた頃は食事の量も減らされていたので気が立っていた点もあり、そんな彼等の胸中を察したガオンはすぐに食事を用意させる。

５万の兵士の食料を用意出来たのは当然ながらルノの力が大きく、今回も植物を急成長させて入手した果物や野菜を多めに用意していた。また、牙竜の嗅覚で探し出した大型の魔獣の肉も確保しており、どうにか街の住民と獣人国軍の食料を用意する事に成功した。

「うう、美味い……こんなに美味いスープは初めてだ」
「俺達、まともな食事なんて何時ぶりだ？」
「港町を出てからは乾いたパンや川の水しか飲んでない気がするな……」
「もう家に帰りてえな……早くおっかちゃんの飯が食いたい」

余程腹をすかしていたのか、配給のために用意された簡素な調理しか行えていない食事でさえも兵士達は歓喜し、その様子を見たガオンが彼等に声を掛ける。

「遠慮はするな！！おかわりはいくらでもあるぞ！！」
『うおおおおっ！！』

ガオンの言葉に空になった容器を抱えた兵士達が殺到し、その様子を見たリディアは呆れた表情を浮かべながらも心配した声を掛ける。

「ねえ、まさかこいつらの面倒まで見る気？いくら何でも数が多すぎるでしょ、そのうちにまた食料が不足するわよ」
「問題ない、こいつらは近日中に解散させるからな」
「え？解散？」
「兵士にも家はある。今のこいつらならば十分な食料を渡してやれば解放した所で問題を起こす事はないだろう」
「ちょっと待ちなさいよ。それってこいつらを自由にさせるっていうの？そんな事をしたらまた襲ってくるじゃないの！！」
「襲ってくると思うか？武具も防具も食料も薬剤もこちらが管理しているんだぞ？それに最も戦力となる魔術師の部隊は残ってもらう。仮にこいつらが王都に引き返して装備を整えたところで再び襲い掛かると思うのか？」
「あ～……まあ、言われてみればそうね」

５万の兵士を解放させる事にリディアは不満を抱くが、ガオンは兵士をこの場に留まる方が危険である事を説明し、彼等を解放させる事を決める。実際に彼等の大半はガルファンの命令に付き合わされていただけで実際に街を責めていたわけではなく、ルノ達のお陰で他の街や村への被害も未然に防いでいる。そう考えれば兵士を無理に従えさせる必要はなく、彼等を解放させる方が無難だろう。

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