最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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エルフ王国 決戦編

帝国軍の善戦

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「おらああっ!!」
『ギルゥッ!?』
「抜刀」
『ギアッ!?』


空中から降下してきた2体の蟷螂に対してダンテは両手の盾で挟み込むと地面に叩きつけ、ギリョウは目にも見えない速度で鞘から剣を引き抜いて首筋を切り裂く。地面に倒した昆虫種に対してダンテは盾を振り下ろすと頭を潰し、ギリョウは既に兵士に襲い掛かろうとしていた蟷螂の背中を切り裂く。


「ふんっ!!中々に硬いな……油断するな!!」
「分かってるよ!!おら、退け!!」
「将軍達に続け!!」
「魔術師部隊!!迎撃せよ!!」


地上に降下した蟷螂に対して兵士達が応対し、空中に滞空する蟷螂に対しては魔術師が砲撃魔法で迎撃する。無数の光線が夜空に放たれ、やがて冒険者達も動き出す。


二重魔法ダブルマジック!!フレイムランスですわ!!」
『ギィイイイッ……!?』


S級冒険者のドリスの周囲に二つの魔法陣が誕生すると、彼女の掛け声と共に熱線が放出されて次々と蟷螂を撃ち落とす。魔術師の中でも高レベルの人間にしか扱えない上級魔法を駆使する彼女に対し、ルノが訪れる前は帝国一と呼ばれていたドリアも負けずに魔法を発動させる。


「広域魔法……ブリザード!!」
『ギィッ――!?』


ドリアの杖先から吹雪を想像させる氷の魔力が放たれ、散らばっていた蟷螂達を一気に氷結化させて絶命させる。昆虫種の弱点は冷気である事を見抜いたドリアは魔力回復薬が入った小瓶を飲み込んで次の魔法を放つ。その間に陣内に黒い影の集団が疾走し、地上へ降りてきた蟷螂達を次々と暗闇から奇襲を仕掛ける。


「辻切り」
『ギルゥッ!?』
「闇討ち」
『ギィッ!?』
「不意打ち」
『ギィアッ!?』


ヒカゲが率いる日影の集団が次々と蟷螂の首筋や頭部に攻撃を仕掛け、確実に敵の急所を切り裂きながら陣内を疾走する。助けられた兵士達の目には唐突に蟷螂が倒れたようにしか見えない程の速度と隠密性の高さを見せつけながら彼女達は陣内に侵入した昆虫種を仕留めた。

他の兵士達や冒険者も負けておられず、空から舞い降りてくる蟷螂を数の利を利用して襲い掛かって確実に仕留める。ここに集まったのは帝都の中でも精鋭の兵士と冒険者達であり、彼等の中にはルノやドリスには及ばずとも腕利きの冒険者は多い。


「おらっ!!虫如きに負けるかよ!!」
「回転!!」
「兜割り!!」
「正拳突き!!」
『ギルルッ……!?』


連携して自分達に対抗してくる軍隊に対して昆虫種は苦戦を強いられるが、どれほど追い詰めようと逃げる事はない。それどころか仲間がやられても躊躇なく襲い掛かり、鍛え上げられた業物のような刃を振りかざして襲い掛かる。


『ギルゥッ!!』
「ぎゃああっ!?」
「ぐあっ!?」
「や、止め……うわぁっ!?」
「くそっ!!こいつら全然怯まねえ……うわあっ!?」


遂に昆虫種によって犠牲者も現れ始め、徐々に帝国軍は劣勢に追い込まれていく。数は圧倒的に帝国軍の方が有利だが、蟷螂達は自由自在に空を飛んで奇襲を仕掛け、魔術兵達も徐々に魔法の連続使用で魔力が枯渇し、戦闘不能に陥る人間も続出した。


「くそっ!!こいつら、オークやゴブリンなんぞとは比べ物にならねえぞ!!」
「当り前じゃ。一時期は人類を滅ぼす魔物として恐れられた魔物じゃぞ」
「く、このままでは……!!」
「駄目ですわドリアさん!!それ以上の薬品の使用は……!!」


ダンテとギリョウは蟷螂の集団に囲まれ、ドリアは魔力回復薬を何本も飲み込んだせいで顔色が悪くなり、ドリスに止められる。通常の回復薬と違い、魔力回復薬は速効性は存在せず、あくまでも魔力を回復する能力を強化する程度の効果しない。なので失った魔力を即座に取り戻す事までは出来ない。

昆虫種の数は半数近くは仕留める事には成功したが、反面に帝国軍の方は倍以上の被害も出ており、大国の中でも最強と謳われたエルフ王国の軍隊を壊滅させたという昆虫種の戦闘能力の凄まじさを思い知らされる。それでも数は減ってきている事は事実のため、軍隊は必死に反撃を試みる。


「おらあああっ!!帝国の強者はあの坊主だけじゃねえ!!俺達だっているんだぞ!!」
「老体には答えるのう……だが、ここで退くわけにはいかん」
「魔法が使えずとも……僕にはこの杖がある!!」
「ちょっと疲れてきた……でも、頑張る!!」
「将軍達に続け!!あと少しだ!!」
『うおおおおっ!!』


奮戦する帝国四天王の勇姿を見て兵士達の士気も高まり、まだ残っている蟷螂へ襲い掛かる。既に数は1000を切っており、あと少しで殲滅出来る状態に陥った。


「あと少しだ!!全員、踏ん張りやがれ!!」
「喋っている暇があれば戦わんか……ぬんっ!!」
「うおおおおっ!!」
「ちょ、ドリアさん!?杖だけで挑むのは無謀では……」


魔法が使えずとも杖で殴りつけるドリアを慌ててドリスが止めようとすると、陣内を走り回っていたヒカゲが立ち止まり、何かに気づいたように彼女らしからぬ大声で叫び声をあげた。
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