最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
614 / 657
外伝〈転移石を求めて〉

隠し扉

しおりを挟む
「まさか大迷宮で魔物が消える理由が転移石を作り出すための養分として吸収されているなんて……」
「というか、本当に大迷宮って勇者が作り出したの?一体どんな技術力があればこんな大きな建物を……大工さんの勇者も居たのかな?」
「いやいや、流石にこれだけの規模の建物を一から作り出したとは考えられませんよ。多分ですけど、何か特殊能力を持つ勇者が作り出したのかもしれません。ルノさんの「成長」やナオさんの「貧弱」の異能のように地球人の方々は途轍もない能力を所有して召喚されますからね」


分電によると大迷宮は同時期に世界各地に建てられたため、これほどの規模の建物を作り出すのにどれだけの人材と費用と時間が掛かるのか分からず、恐らくは召喚された勇者が持つ「異能」の力で作り出された可能性が高い。


「それよりも気になるのは質の悪い転移結晶石が大迷宮の外に出ると消失してしまうという点です。もしもこの話が事実だとしたら、私達の発見した転移石が粗悪品だった場合は外に脱出した時に失ってしまう事です。そうなるとここまでの苦労が水の泡と化しますよ」
「でも、大迷宮の魔物を倒せば転移石が誕生するんでしょ?ならいっぱい魔物を倒して転移石を集めればいいだけじゃないの?もしかしたら1つぐらいは良質な転移石も誕生するかもしれないし……」
「何言ってるんですか、その転移石が何処で誕生するのか私達には分からないじゃないですか。第四階層で発見した転移石に関しても偶然発見したような物ですし、これからも上手く転移石を発見出来るとは限りませんよ?」


リーリスの言葉も一理あるため、ルノ達は手に入れた転移石を取り出して確認する。見た目だけでは粗悪品なのかは分からず、もしもこの転移石が大迷宮から抜け出したときに消失してしまったらと考えるだけで恐ろしい。


「だけどさ、ここに住んでいた人は何度も地球に帰還して動物のDNAを集めてたんだよね?その人はそれだけの転移石をどうやって集めたのかな?」
「言われてみればそこが気になるんですよね。これだけの研究が行われている所をみると、ここの研究者は頻繁に地球へ帰還していたようですね。問題なのは転移石を利用してどのような手段で帰還していたかですけど……」
「ぬおっ!?おい、皆この本棚を見ろ!!」


デブリが唐突に大声を上げ、全員が彼に視線を向けるとデブリは壁際の本棚を引き寄せると、本棚の後ろに隠されていた扉を発見する。どうやら隠し扉らしく、扉を開いてみると隣の部屋が存在する事が判明した。


「おお、本棚の裏に隠し部屋とはやりますね。隠し場所としては雑ですが、ここの研究者とは趣味が合いそうです」
「わざわざ隠し扉まで作るなんて……中はどうなってるのかな?」
「扉を開けたら罠が作動するとかないよね?」
「……有り得る」


ルノ達は慎重に扉の取っ手を握り締め、中を覗く。隠し扉の先に待ち構えていた物を見た瞬間、ルノ達は驚愕する。


「こ、これは……便座!?」
「浴槽と手洗い場もあるよ!!分かった、これユニットバスだ!!お風呂とトイレが一緒なタイプの奴だ!!」
「くだらねえもんを隠してんじゃないですよ!!いや、確かに必要な物かもしれませんけど!!」
「なんでわざわざこんな物を隠してるだ……?」
「……用事を済ませた後に本棚を戻す事を考えるとかなり間抜けに思える」


扉の先には研究者が利用していたと思われるユニットバスが存在し、どうやら研究者はここで生活を行っていたらしく、わざわざ本棚で隠していた所を見ると他の人間には知られたくなかったらしい。折角何かあるのではないかと期待していたルノ達だが、デブリが今度は別の本棚の後ろを確認して声を上げた。


「師匠!!どうやらこっちの本棚の後ろにも扉がありますぞ!!」
「え?本当に?」
「……あまり期待出来ませんが、とりあえず開けてみましょう」


デブリの言葉にルノ達は全員で本棚を移動させると、新しい隠し扉を開く。すると今度はユニットバスではなく、それなりに大きな部屋に繋がっていた。


「ここは……ダイニングキッチン?ここで食事をしてたのかな?」
「なるほど、ユニットバスがある時点で期待してませんでしたけど、少なくとも研究者はここで生活を過ごしていた事は分かりました」
「この感じだと他の本棚も調べた方が良いかもね」


ルノ達は片っ端から壁際に設置されている本棚を動かして確かめると、案の定というべきか隠し扉が存在し、寝室と思われるベッドが設置されている部屋、物置部屋と思われる掃除用具品が収納された部屋も発見された。どうやら研究者はここで生活を送っていた事は間違いなく、ルノ達は最後の隠し扉を前に立つ


「この扉で最後みたいだね。一体何が出てくるのかな……」
「ここまで来てろくでもない部屋だったら暴れたくなりますね」
「どうかリーリスさんが切れるような部屋じゃありませんように……」
「……王子、開けて」
「よし、任せろ……ふんぬっ!!」


デブリが気合を入れて扉を開いた瞬間、部屋の中身はルノ達の予想を覆す光景が広がっていた。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【状態異常無効】の俺、呪われた秘境に捨てられたけど、毒沼はただの温泉だし、呪いの果実は極上の美味でした

夏見ナイ
ファンタジー
支援術師ルインは【状態異常無効】という地味なスキルしか持たないことから、パーティを追放され、生きては帰れない『魔瘴の森』に捨てられてしまう。 しかし、彼にとってそこは楽園だった!致死性の毒沼は極上の温泉に、呪いの果実は栄養満点の美味に。唯一無二のスキルで死の土地を快適な拠点に変え、自由気ままなスローライフを満喫する。 やがて呪いで石化したエルフの少女を救い、もふもふの神獣を仲間に加え、彼の楽園はさらに賑やかになっていく。 一方、ルインを捨てた元パーティは崩壊寸前で……。 これは、追放された青年が、意図せず世界を救う拠点を作り上げてしまう、勘違い無自覚スローライフ・ファンタジー!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。