伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第52話 新たな仲間

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「――ううっ、寒いっす」
「ビャク、平気か?」
「クゥ~ンッ(ブルブルッ)」


焚火の前で毛布に身を包んだナイとエリナは火に当たり、ビャクも冷えた身体を温める。湖に落ちた際に濡れた衣服が乾くまではどうすることもできなかった。


「ふうっ、ようやく温まってきた。そういえばボアの奴はどうなったのかな?」
「それならあそこで楽しそうに泳いでますよ」
「ウォンッ!?」


一緒に湖に跳び込んだボアだけは元気そうに泳いでおり、ナイ達に襲い掛かる様子もなく水浴びを楽しんでいる様子だった。


「フゴゴッ♪」
「なんだかあいつ楽しそうだな……襲ってくる様子もなさそうだし、放っておこうか」
「でも、ボアを仕留めれば美味しい肉と毛皮も手に入りますよ。ビャク君の餌にもなるし、余った分は街で売れば高く買い取ってもらえると思いますけど」
「ジュルリッ……」
「フゴォッ!?」


不穏な気配を感じたボアはナイ達の方に振り返り、エリナの言葉は一理あるがボアのお陰で街を脱出できたのも事実のため、ナイは今回だけは見逃してやることにした。


「大丈夫、売れそうな物なら他にもあるし、干し肉もたくさんあるからビャクの餌も当分は困らないよ」
「兄貴がそういうならいいんですけど……」
「ウォンッ(命拾いしたな)」
「フゴゴッ(ほっ)」


自分の命を狙われないと知ったボアは水浴びを再開し、その様子を見てナイは不思議に思う。ホブゴブリンに躾けられていたせいか、野生のボアと違って無暗に他の生物に襲い掛かる真似はしない。

ボアを観察していると水浴びにも飽きたのか湖から抜け出し、身体を振るって水を弾く。それでも寒いのかナイ達の囲む焚火に近付いて暖を取ろうとしてきた。


「フゴゴッ……」
「うわ、何すか!?あたし達を襲う気なら容赦しないっすよ!!」
「エリナ、落ち着け……火に当たりたいだけだよな?」
「ウォンッ」


ビャクが仕方ないとばかりに焚火から退くと、ボアは身体を寄せて焚火に当たる。ナイ達に襲い掛かる様子はなく、それを見てナイは良いことを思いつく。


「そうだ。ニノの街までこいつに乗って移動するのはどうかな?」
「ええっ!?兄貴、それ本気で言ってるんですか!?」
「ウォンッ!?」
「フゴッ?」


イチノから脱出した時のようにボアに乗り込んでニノの街に向かえないかとナイは考えるが、その案に対してエリナは驚愕のあまりに身に纏う毛布を落としそうになり、慌ててナイが注意する。


「ちょ、エリナ!!毛布がずれ落ちる!!」
「いやん!?兄貴のえっち……じゃなくて!!本気でボアを連れて行くつもりっすか!?」
「えっと、何か問題ある?」
「そりゃ問題ありますよ!!街に魔物を連れ込んだら大騒ぎになりますよ!?」


ビャクだけならば狼として誤魔化しきれなくもないが、ボアは巨体のせいで普通の猪と誤魔化す事はできない。もしも街にボアを連れ込もうとすればエリナの言う通りに大騒ぎになってしまう。


「ボアを街に連れて行くのは無理があるっすよ。このまま野生に逃がした方がいいと思いますけど……」
「エリナの言う事も分かるけど、今の俺達には足がないんだ。ニノまでどれくらいかかるか分からないし、それにこいつの見た目なら力の弱い魔物は近寄りもしないだろ?」
「うっ、それはそうかもしれませんけど……」
「フゴゴッ」


ボアは自分をホブゴブリンから解放してくれたナイに懐いているのか、鼻先を押し付けて甘えて来る。そんなボアにナイは異空間に収納していた山菜を取り出して与える。


「次の街に辿り着いたらこいつとはお別れする。ニノでちゃんとした乗り物を買えば問題ないでしょ?」
「まあ、それなら……」
「ウォンッ!!」
「フゴフゴッ……」


エリナもナイの提案に納得し、ニノの街に辿り着くまでの間はボアの世話になる事にした――





――山菜で手懐けたボアの背中にナイとエリナは乗り込み、ビャクは自分の足で後を付いて行く。ニノの街があると思われる方向にナイは移動するように指示すると、ボアは凄まじい速度で移動を開始する。


「フゴォオオオッ!!」
「ちょ、早過ぎるって!?」
「ひいいっ!?やっぱり無理があったんすよ!!」
「ウォオンッ!!」


全速力で駆け抜けるボアにナイとエリナは振り落とされない様にしがみつくのが精いっぱいであり、ビャクも後れを取らずにボアの後に続く。馬よりも素早く走るためにこの調子で移動すればニノまですぐに辿り着けると思われたが、走り始めてからしばらく経つとボアの移動速度が一気に落ちた。


「フゴッ、フゴッ……」
「あれ?急にどうした?」
「兄貴、多分ですけどへばったんじゃないですか?」
「ウォンッ?」


最初の内は凄まじい移動速度で走っていたが、一定の距離を移動すると体力が尽きたのかボアはへばってしまう。ナイとエリナを乗せているせいでいつも通りに動けないらしく、体力の限界を迎えたボアは地面に寝そべる。


「フゴゴッ……」
「ありゃりゃっ……これはしばらく休ませないと無理そうだな」
「でも、大分先に進みましたね。イチノも見えなくなりましたよ」


ボアのお陰でイチノから大分離れた場所に辿り着き、この調子で移動すれば思っていたよりも早くにニノに辿り着けるかもしれない。ナイは水筒を取り出して湖で汲んできた水をボアの口元に流し込む。


「あと少しだ。頑張ってくれよ」
「フゴゴッ」
「グルルルッ……!!」
「兄貴、ビャク君が嫉妬してますよ」


自分の主人が他の獣に構う姿にビャクは嫉妬を露わにするが、エリナがなんとか宥める。ナイはボアを休ませている間に自分が異空間に収納した道具の確認を行う。


(食料と水はまだ余裕があるな。お金も師匠から貰ったのがあるし、日用品もだいたい揃ってるか……)


山で暮らしていた頃からナイは生活に必要な道具は全て異空間に収納していた。そのお陰で旅に必要な道具は取り揃えているが、問題があるとすれば武器だった。

これまでは小石や岩だけを射出して戦ってきたが、そろそろ代わりとなる新しい「投擲具」を探す必要があるかもしれない。今回のホブゴブリンのように装備を整えた相手が敵となると攻撃手段が石礫だけでは心許ない。


(街に辿り着いたら護身用の武器も買っておかないとな)


これまでは魔法に頼って生き延びてきたが、万が一の場合に備えて身を守る武器も必要だった。そんな風に考えているとビャクを宥めていたエリナの耳がわずかに震える。


「んっ!?兄貴、馬車がこっちに向かってきます!!」
「馬車?」
「はい!!しかも一台じゃありません!!」


エルフであるエリナの聴覚は人間よりも優れており、ナイは周囲を見渡すと遠方から砂煙が上がっている事に気が付く。エリナの言う通りに数台の馬車がこちらに向かっており、山育ちで目が良いナイは馬車を観察して正体を探る。

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