氷弾の魔術師

カタナヅキ

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王都での日常

第26話 訓練の日々

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「今日は学園中を探したんだけどね、どうやら外に逃げ出してたみたいで捕まえるのができなかったんだよ」
「逃げ出したって……学園の外に!?」
「とんでもない問題児の世話を見る事になっちまったね……悪いけどそいつを捕まえるまではあたしは指導ができないからね。その代わりに明日からは学校に来なくてもいいよ。どうせ一人でこんな馬鹿みたいに広い教室を使うのもあれだしね……まあ、どうしても教室が使いたい時はこれを使いな」


当分の間はバルルはコオリの指導ができない代わりに教室の鍵を渡してくれた。この鍵があればいつでも教室に出入りする事ができるようになり、これからコオリは教室に自由に出入りして訓練を行える。


「じゃあ、あたしは帰らせてもらうよ。教員として色々と仕事が残ってるからね、あんたも今日は帰りな」
「あ、はい……」
「そうそう、それとこれも持って行きな。もう夕食も時間も過ぎてるしね、これを食べておくんだよ」
「あ、どうも」


去り際にバルルはコオリに包みを渡すと、中身は大きなおにぎりが入っていた。彼女に言われてコオリは今日は一度も食事をとっていない事に気付き、有難く受け取っておく事にした。

結局はコオリは今後も一人で訓練を行う事が決まり、バルルがを見つけ出すまでの間は一人で魔法の練習を行う事になった――




――それから更に二日ほど経過すると、コオリは学生寮に閉じこもって訓練を行う。教室の鍵を借りたのはいいが、誰もいない教室で一人で魔法の練習を行うよりは自分の部屋の中で訓練を行った方が集中できた。そして訓練を開始してから三日が経過すると、コオリは吸魔石を手に触れた状態でも殆ど魔力を吸われなくなっていた。


「くぅっ……よし、大分色が薄まって来たぞ」


コオリは机の上に置いた吸魔石を両手で触れても水晶玉は僅かに青色に染まるだけであり、最初の頃と比べても水晶玉の色合いが薄まっていた。今では一分以上も触れ続けても問題はなく、もう少しでコオリは魔力を操る感覚を完璧に掴めると確信する。


(集中しろ……魔法を扱うのに重要なのは精神力、取り乱したらいけないんだ)


両手で水晶玉に触れた状態でコオリは瞼を閉じて自分の体内に流れる魔力を感じ取る。この三日の間にコオリは体内の魔力の流れを感じ取れるようになり、そして遂に彼の手にした吸魔石から色が完全に失われる。

吸魔石が吸収しようとする魔力をコオリは体内に完全に留める事に成功し、彼は遂に「魔力操作」の技術を身に着けた事に嬉しく思う。


「よし、成功した……あっ!?」


しかし、少し気が緩んだ途端に水晶玉がまたもや青く光り輝き、慌ててコオリは魔力を体内に押し留める。どうやらまだ完全に魔力操作を極めたわけではなく、それでも最初に比べたら魔力を操る技術は上達していた。


(よし、今ならきっと魔法も……)


杖を取り出したコオリは緊張した表情を浮かべ、実を言えば訓練の間はコオリは一度も魔法を使用していない。理由としては訓練の成果を確かめるため、完全に吸魔石に魔力を吸われない段階まで訓練を進めるまでは魔法を使わないようにしていた。

そして遂にコオリは吸魔石に魔力を奪われずに済む段階まで到達し、今ならば前よりも精度の高い魔法を生み出せる自信があった。コオリは小杖を掴み、そして下級魔法「アイス」を発動させる。



「――アイス」



呪文を唱えた瞬間、杖の先端から唐突にが出現した。今までは魔法を発動する時は杖の先端から魔光が迸ったが、今回は全く光輝かずにしかも魔法を発動し続けても光は生まれない。


「やった、前よりも大きくなってる!!」


変化したのは杖の光だけではなく、コオリが作り出した氷の塊は以前よりも大きくなっていた。数日前のコオリの魔法では数センチほどの大きさの氷の欠片しか作り出せなかった。

しかし、現在のコオリは無駄な魔力を消費せずに魔法を発動する事に成功し、氷の大きさは数倍にまで増していた。この三日間の訓練でコオリの魔法は強化され、今ならば他の生徒にも劣らぬ下級魔法を繰り出せる。


(凄い、こんなに大きくなるなんて……これなら魔物との戦闘でも役立ちそうだ)


杖の先端に出現した氷塊を確認し、試しにコオリは氷塊を操作してみる事にした。だが、今まで通りに上手く動かせなかった。


「あれ?おかしいな……大きくなった分、操作が難しいのか」


魔光を生み出さずに全ての魔力を魔法に変換できるようになったが、今までは小さな氷の欠片を操作するのに慣れていたせいか、大きくなった氷塊を操作するのは難しい。


「このっ……動けって!!」


ならば細かい操作も可能だが、氷塊の場合は単純な操作しか行えず、完璧に使いこなすのは難しそうだった。


「はあっ……神経使うな。ちょっと休もうかな」


一先ずは吸魔石を輝かせないようになるまで魔力操作の技術を身に着けたコオリは、訓練は中断する事にした。バルルからは自分が戻るまでは訓練を続ける様に言われたが、この二日間は一度も彼女の顔を見ていない。

現在のバルルはもう一人の生徒を追いかけて今頃は学園の外に居るはずであり、まだ戻ってこない所を考えると相当に苦戦しているらしい。彼女が戻るまでは次の訓練に取り掛かる事もできず、不意にコオリは他の生徒ならばどんな訓練を受けているのか気になった。


(他の生徒はどんな授業を受けているんだろう?ちょっと気になるな……様子を探りに行こうか)


コオリは色々と考えた末、他の生徒がどのような訓練を受けているのか気になって調べに行く事にした――





――学生寮から校舎に赴いたコオリは教師に気付かれない様に他の教室を覗き込み、生徒達がどのような授業を受けているのかを確かめる。


「このように王国の歴史は……」
「今日は割り算を……」
「○○君は時速10キロで移動して……」


だが、コオリが覗いた教室の殆どは子供達に魔法以外の勉学を教えており、この時にコオリはバルルから聞いた話を思い出す。魔法学園は魔法の技術を学ぶだけではなく、子供達に一般教育を学ばせるために作り出されたという。

子供達の中には家庭の問題で碌な教育を受けられなかった子供も少なくはなく、そんな子供達のために社会に生きていくために必要な知識を与えるのも重要な事だった。それと魔法学園の生徒が魔法を悪用しないように学園には校則が存在し、その校則を破れば酷い罰則を与えられるという事もコオリは教わっていた。


(なんか思っていたよりつまらないな……あ、訓練場の方ならどうかな?)


コオリは前回訪れた訓練場に向かうと、丁度良く上級生と思われる生徒達が集まって訓練を開始していた。


「ではこれよりは中級魔法の練習を行え!!は邪魔にならない場所で見学しろ!!」
「「「はいっ!!」」」


訓練場にはコオリよりも年上の生徒達が集まり、その中にコオリは見知った顔の人物に気付く。魔法学園の生徒の中で一番最初に顔を合わせた「リンダ」が参加しており、彼女が訓練場に居るという事は授業を受けているのは三年生という事になる。

コオリよりも上級生の生徒達が訓練場に集まり、その内に半分近くが的当て用の人形の前に離れて立つ。一年生の担当教師であるマカセは十数メートルほど離れた場所で魔法を撃たせていたが、上級生となるとさらに倍の距離を離れた状態で魔法を放つ。


「出席番号一番のカールです!!よろしくお願いします!!」
「いちいち名乗り上げなくていい!!扱う魔法だけを教えろ!!」
「はい!!風属性の中級魔法スラッシュです!!」


一年生の担当教師であるセマカは生徒達に同時に魔法を撃たせていたが、三年生の場合は一人ずつ魔法の練習を行うらしく、担当教師と思われる白髪の男性に生徒は扱う魔法の報告を行う。


「よし、ではやってみろ!!」
「は、はい!!スラッシュ!!」


小杖を構えた男子生徒は魔法名を唱えながら杖を振り払うと、杖先から緑色の光を放つ。この時に振り払われた際に三日月状の風邪の刃が放たれ、それを見たコオリはリオンが扱っていたのと同じ魔法だと気付く。

リオンは使用した際は鋼鉄製の剣が叩き割れる程の硬度を誇るオークの肉体を真っ二つに切り裂いたが、男子生徒の放った風の刃は木造製の人形に衝突すると、人形を破壊する事には成功した。しかし、真っ二つに切れる事はなく、粉々に砕け散ってしまう。


「や、やった!!」
「馬鹿者!!この程度で喜ぶな、全く切れてないではないか!!本物のスラッシュならば人形を真っ二つに切っていたわ!!」
「そ、そんな……」


男子生徒は人形を破壊して嬉しがったが、すぐに白髪の教師は厳しく叱りつける。教師の態度に他の生徒はひそひそと話し合う。


「ちょっと厳しくないか?」
「切れていようとなかろうと壊れれば別にいいだろ……」
「うちの先生は本当に厳しいよな……」


魔法を当てる事には成功したのに全く褒めずにしかりつけた教師に生徒は不満を抱くが、コオリとしてはリオンの「スラッシュ」の魔法を見知っているだけに教師の言う事は理解できた。


(……リオンのスラッシュはもっと凄かったな)


リオンのスラッシュは先ほどの男子生徒が使用したスラッシュとは比べ物にならず、彼ならば人形を綺麗に真っ二つに切り裂けただろう。それに比べると男子生徒のスラッシュは見た目は派手だが、目標に衝突した際に衝撃が拡散して威力が格段に落ちていた。

コオリと同い年だと思われるリオンは既に三年生にも勝る練度の高い風属性の魔法を扱える事になる。改めてコオリはリオンの凄さを知り、同時に悔しく思う。
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