氷弾の魔術師

カタナヅキ

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王都での日常

第72話 魔力測定器

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――放課後を迎えるとコオリは学園長室に赴き、既にバルルとミイナが待ち構えていた。急にマリアに呼び出されたのでコオリは緊張してしまうが、学園長室の机の上には人数分の紅茶と御茶菓子を用意されていた。


「ほら、さっさと座りな。別に叱られるわけじゃないんだからさ」
「あ、はい……」
「コオリ、こっちに座って」


コオリはミイナとバルルの間に挟まれる形で座り込み、マリアとは正面から向き合う形となった。彼女は笑顔を浮かべて話しかける。


「コオリ君、この間の試合は見事だったわ。惜しかったわね、あと少しで勝てたのに……」
「あ、いえ……」
「たくっ、あの試合の決着は未だに納得できないよ。どう見てもコオリの勝ちだったのに……」
「私もそう思う」


先日のバルトとコオリの試合の結果に関してはバルトとミイナは不満を抱くが、コオリとしてはバルトと引き分けになった事は特に不満はない。むしろ学園内でも指折りの実力を誇る彼と引き分けた事に嬉しく思う。

あのときの試合はコオリは全力を出し切って戦い、バルトもそれに応えて手加減せずに戦った。無論、バルトの方はコオリを本気で倒すつもりで戦ったのだが、コオリとしては自分の全力を出し切れて戦えた事に満足していた。


「あの試合からバルト君とはどうかしら?」
「最近はバルト先輩に魔術師としての戦い方を教わってるですけど、分かりやすく色々と教えてくれるから助かってます」
「そう……彼もやっと闇から抜け出したのね」
「闇?」


バルトの心境が変化した事はマリアも快く思い、一方で事情を深く知らないコオリは何の話をしているのかと不思議に思う。


「それはそうと実は面白い物が手に入ったの。貴方達を呼び出したのはこれの実験に付き合ってほしいからよ」
「……何だいそれは?」


マリアは水晶玉を机の上に置き、全員が覗き込む。見た限りではただの透明な水晶玉にしか見えないが、マリアはバルルに声をかけた。


「バルル、これに触れて見なさい」
「あ、あたしが?」


言われるがままにバルルは水晶玉に手を伸ばして触れると、水晶玉の内部が赤色に光始め、やがて水晶玉の中に炎が灯る。それを見た他の者たちは驚き、慌ててバルルも手を離す。


「うわっ!?な、何だいこれは!?」
「最新式の魔力測定器よ」
「そ、測定器?」
「これって教会にある水晶玉と似ているような……」
「ええ、同じ素材で構成されているわ。但し、教会が管理する代物と違ってこの測定器は魔力量を正確に測る事ができるわ」


マリアによれば水晶玉に触れるだけでその人物の魔力の量と適性が判明するらしく、火属性の適性を持つバルルの場合は水晶玉に触れると内部に炎が誕生し、その炎の大きさから彼女の魔力量を計る事ができるという。


「バルル、熱くはならないから水晶玉に触れ続けなさい」
「こ、こうかい?」
「そう、そのままよ……この炎の大きさが貴女の魔力量を現わしているわ」
「……結構大きい」


水晶玉の大きさは両手で抱える程の大きさを誇り、バルルの炎は水晶玉の内部を埋め尽くすほどの大きさはあった。彼女が手を離すと自然と炎も小さくなって消えていき、水晶玉の輝きも失う。

この水晶玉が反応するのは魔力を持つ人間だけらしく、仮に魔力を持たない人間が触れた所で何の変化も起きない。魔力を持つ人間が触れる場合のみに反応し、その人間の属性と魔力量を読み取る機能がある。


「この水晶玉に触れると火属性の適性を持つ人間は炎、風属性の場合は竜巻、水属性は水の塊、雷属性は電流、地属性の場合は土の塊、聖属性は白い霧、闇属性は黒い霧といった風に発生するわ」
「へえ……教会の水晶玉は色で属性を判別するけど、この水晶玉はそれぞれの魔法の属性の特徴が現れるのかい」
「面白そう、私も試していい?」
「構わないわ」


興味を抱いたミイナが水晶玉に触れると、先ほどバルルが触れた時のように水晶玉に炎が灯る。但し、彼女の場合はバルル程の炎の大きさはなく、せいぜい水晶玉の半分を満たす程度の大きさの炎しか発生せず、少し不満そうな表情を抱く。


「むうっ……バルルのより小さい」
「炎の大きさが魔力量を現わしているわ。残念ながらまだ貴方の魔力量はバルルよりも小さいという事ね」
「はっ!!いくらなんでもガキに負けるほどの魔力量じゃないよ!!」
「むううっ……」
「気にしないでいいわ、魔力量が多ければ必ずしも優れた魔術師や魔拳士になれるとは限らないのだから」
「あの……僕も触っていいですか?」


魔力量がバルルよりも少ない事にミイナは悔しそうな表情を浮かべるが、コオリは自分も試しに水晶玉に触れる事を提案すると、マリアは頷いて彼に水晶玉を触れさせる。


「触るだけでいいんですよね?」
「ええ、緊張する必要はないわ」


皆に見られながらもコオリは慎重に水晶玉に手を伸ばすと、彼の掌が水晶玉の表面に触れた瞬間、水晶玉の内部に異変が起きる。水晶玉の中心部に「氷弾」を思わせる小さな氷塊が出現した。


「えっ……こ、これは?」
「……小っちゃくて可愛い」
「あたしの炎の十分の一ぐらいかね」
「……なるほど、面白い結果ね」


水晶玉の中心に出現した小さな氷塊に全員が呆然とする中、マリアだけは興味深そうに水晶玉を覗き込む。先ほどバルルが触れた時は水晶玉の内部を埋め尽くすほどの炎が誕生し、ミイナが触れた時は水晶玉の半分程の大きさの炎が生まれた。しかし、コオリの場合はミイナの五分の一程度の氷塊しか生み出せなかった。


「数値で表すとバルルは十、ミイナちゃんは五、コオリ君は……一ぐらいね」
「そ、それは多いのですか?」
「中級魔法を扱える魔術師の魔力量は最低でも三は必要……つまり、コオリ君が中級魔法を扱う場合は今の三倍の魔力量がなければ使えないという事ね」
「そ、そうですか……」


自分の魔力量が少ない事は知っていたが、まさか「一」しかない事に彼は酷く落ち込む。単純な魔力量はコオリはバルルの十分の一、ミイナの五分の一という事が明かされた。


「ま、まあ落ち込む必要はないよ。魔力量が少ない事は前から知っていたし、これから魔力量を伸ばせばいいんだよ」
「大丈夫、魔力量が少なくてもコオリは十分に強い」
「……ありがとう」


バルル達の慰めの言葉を掛けられてもコオリの気分は晴れず、改めて自分の魔力量の少なさに落ち込む。しかし、そんな彼に対してマリアは思いもよらぬ言葉を告げた。


「別に落ち込む事はないわ。なのよ」
「えっ!?」
「才能って……どういう意味だい先生?」
「ちょっと待ちなさい。ようやく来たようね」


思いもよらぬマリアの言葉にコオリは驚愕したが、彼女は学園長室の扉に視線を向ける。しばらくするとノックされ、部屋の中に入ってきたのは生徒会副会長のリンダだった。


「学園長、申し訳ございません!!会議が長引きまして……って、どうして貴方達がここに?」
「リンダさん!?」
「どうしてここに?」
「私が事前に呼んでいたのよ」


リンダが現れた事にコオリ達は驚くが、マリアは彼女が来ると羊皮紙を机の上に並べる。そこには全校生徒の名前と数字が記されており、学校の生徒の魔力量の数値を示されていた。


「これを見なさい、この学園の生徒達の魔力量よ」
「ええっ!?」
「ちょ、そんなの見せていいのかい?」
「本当なら問題があるけれど、貴方達が他言しなければ問題ないわ。それよりもリンダはこれを見て何か気付いた事はあるかしら?」
「どういう意味でしょう?」


リンダはマリアの言葉に不思議に思い、彼女は三年生の生徒の名前を確認する。彼女が同級生の魔力数値を把握した途端、驚いた表情を浮かべた。
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