貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
198 / 1,110
王都での騒動

第197話 大暴れ

しおりを挟む
(来やがれ!!次の攻撃を弾いた後、殴り殺してやる!!)


ゴウが身に付けている鋼拳は攻撃だけではなく、防御にも適していた。ゴウは両腕を構えて防御に専念すると、それを見たナイは何事か考え込み、黙って彼に近付く。

普通に歩いて自分の元に向かうナイにゴウは呆気に取られるが、そんな彼に対してナイは大剣を振りかざし、久々に自分が扱う剣技を行う。


「せぇのっ……」
「なっ!?」


ナイは剛力を発動させ、腕力を強化した状態で大剣を大きく振り回し、全力の一撃をゴウの両腕に叩き込む。鋼拳によって攻撃を防ぐ事には成功したが、全力で振り回されたナイの攻撃の衝撃は殺しきれず、ゴウの巨体が吹き飛ぶ。


「どりゃあっ!!」
「がはぁあああっ!?」
「きゃっ!?」
「にゃうっ……!?」
「す、凄~い!?」


ダンと同様に吹き飛ばされたゴウの肉体が壁にめり込み、そのまま壁を背中に預けながら気絶する。その光景を見ていたミイナ達は唖然とするが、一方でナイは満足そうに頷く。

魔物と戦う際にナイは取り囲まれた時、剣を一回転させるように攻撃を行う剣技を「円斧」と名付けた。使用するのはミイナとの戦いぶりだが、以前よりも筋力が身に着いたお陰で技の威力は向上していた。それに思っていたよりも大剣とは相性が良く、満足そうにナイは退魔刀を背中に背負う。


「よし、これで邪魔者は倒した……モモさん、ノイさんの様子は?」
「え?あ、うん……意識を失っているだけだと思う」
「ちょっと見せてくれる?」


ナイに話しかけられたモモは慌てて気絶しているノイを連れてくると、ナイはノイの様子を観察眼で確認すると、彼女の言う通りに気絶しているだけだった。念のためにナイは彼女に両手を向けて回復魔法を発動させる。


「ヒール!!」
「これは……回復魔法!?」
「ナイ君、回復魔法も使えたんだ!?凄いね!!」
「私は前に見た」


回復魔法をノイに施すナイの姿を見てヒナとモモは驚き、この世界では回復魔法を扱えるのは治癒魔導士か陽光教会の修道女ぐらいであり、特別な儀式を受けなければ回復魔法を扱えない。

だが、前にモモは回復魔法は扱えないといっていたが怪我をしていたヒイロを治しており、その事に関してはナイも後でモモに話を聞いてみようと思いながらもノイの治療を行う。ノイは回復魔法を受けると肌色が良くなり、表情も和らいだ。


「これでよし、後はノイさんを安全な場所に匿わないと……」
「ついでにこの二人はここへ閉じ込めた方が良い。また追いかけられてこられたら厄介」
「それもそうね。それにこいつらがここへ来たという事は私達の事もバレているかもしれないわ」
「なら急いであの豚さんを捕まえないとね!!」
「豚じゃなくてバーリね……」


モモの言葉に全員が頷き、武器を手に入れた以上は隠れ回る必要はなくなり、敵を蹴散らしてでもバーリを探し出す必要があった。ゴウとダンが動いている以上はナイ達が脱走した事も既に知られており、即座にナイ達は行動を開始する。


「ノイさんの事は私に任せて……3人とも、ここからは派手に暴れてやりなさい!!」
「了解、そういうのは得意分野」
「うん、頑張るよ!!」
「よし……行こう!!」


ナイ達は気合を込めて隠し倉庫から抜け出すと、まずはゴウとダンを閉じ込めるために本棚を移動させ、これでもう二人が出てくる事はない。この本棚の仕掛けを知っている人間は限られているはずであり、第一に本棚を仕掛けを解除する事ができる人間はバーリだけである。


「これでよし……なら、まずはバーリの私室に向かいましょう」
「まだあそこにいるのかな?」
「他の場所に隠れている可能性もあるから、探しながら行くしかない」
「……外の方から気配を感じる。どうやら本当にバレてたみたい」


ミイナの言葉を聞いてナイは気配感知を発動させると、屋敷内のあちこちで多数の気配が忙しなく動いており、既に他の兵士や傭兵が動き出している事が判明した。この分だとナイ達を連れてきたモウタツとヒイロの身も心配だが、今はバーリを見つけだすのが優先だった。


「モモさんはノイさんを背負っているヒナさんを守って!!ミイナさんは僕と一緒に他の奴を倒しましょう!!」
「うん、任せて!!」
「了解……でも、その前に一つだけ言わせて。私にさん付けしないでいい」
「え?」
「そうね、私達は同い年ぐらいでしょう?それにここまで一緒に戦ってるんだから、変な遠慮なんていらないわよ。普通に話してくれて構わないわ」
「あ、私も呼び捨ての方が嬉しいな~」
「……分かった、なら皆一緒に行こう!!」
「「「おお~っ!!」」」


ナイの言葉に全員が頷き、扉を蹴り飛ばす。通路には既に大勢の兵士が待ち構えており、書斎から出てきたナイ達を見て兵士達は驚愕の表情を浮かべる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白の魔女の世界救済譚

月乃彰
ファンタジー
 ※当作品は「小説家になろう」と「カクヨム」にも投稿されています。  白の魔女、エスト。彼女はその六百年間、『欲望』を叶えるべく過ごしていた。  しかしある日、700年前、大陸の中央部の国々を滅ぼしたとされる黒の魔女が復活した報せを聞き、エストは自らの『欲望』のため、黒の魔女を打倒することを決意した。  そしてそんな時、ウェレール王国は異世界人の召喚を行おうとしていた。黒の魔女であれば、他者の支配など簡単ということを知らずに──。

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

蒼天のグリモワール 〜最強のプリンセス・エリン〜

雪月風花
ファンタジー
 この世界には、悪魔の書と呼ばれる魔導書が存在する。書は選ばれし者の前に現れ所有者に人智を超えた強大な力を与えるが、同時に破滅をもたらすとも言われている。 遥か五百年の昔。天空の王国・イーシュファルトにおいて、王兄の息子レオンハルトが王国秘蔵の魔導書『蒼天のグリモワール』を盗み出した。強大な力を手にしたレオンハルトは王国に石化の呪いをかけて国を丸ごと石化させると、忽然と姿を消した。こうしてイーシュファルトは地上の人々から忘れ去られ、その歴史から姿を消すこととなった。  そして五百年の後。突如、王国の姫・エリン=イーシュファルトの石化が解ける。レオンハルトへの復讐と王国の再起を誓ったエリンは王国最奥部の秘密の宝物庫に赴き、そこに隠された悪魔の書を手にする。それこそがレオンハルトの持って行った儀式用の写本ではない、悪魔の王が封じられた本物の『蒼天のグリモワール』だったのだ。  王国イチの超絶美少女にして武芸も魔法も超一流、悪魔と契約し、絶大な力を入手したエリンの復讐の旅が今始まる。

【完結】イモリから始める異世界転生

里見知美
ファンタジー
井守聖子50歳。子猫を救おうとして用水路に転落して溺死。 気がついたら、白い部屋で神様と面接してました。 本当なら98歳で天寿を全うするところを、半分くらいでうっかり尽きてしまった私の命を拾った神様が言うことに。 「ちょっと人助けのバイトしない?」 人助けのバイトをして『徳』が貯まったら、次の人生は美味しいチート付きのを用意します、との事。 ええー、もう30年以上看護婦として仕事してきたんですよ、死んでもまだ仕事ですか。 ……でもチート付きの人生、ちょっと気になる。 まあバイトだと思えば、気も楽か。 というわけで私、転生しました。 ============================ 完結しました!ちょっと前に書いて、途中やりになっていた作品を書き直しています。 未完なので、ぼちぼち完成させようと思います。気長にお付き合いいただけると嬉しいです。 カクヨムとなろうでも同作同時掲載しています。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...