貧弱の英雄

カタナヅキ

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グマグ火山決戦編

第391話 真の脅威

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「倒した、のか……」
「はあっ、はあっ……お、恐らくは……」
「や、やった!!やったぞ、倒したんだ!!」
「我々の勝利だ!!」


バッシュは黒焦げと化した火竜を見て呆然としながら呟くと、マジクは胸元を抑えながらも頷く。他の王国騎士や魔術兵は火竜を倒したと信じて歓声を上げる。災害の化身と恐れられた魔物を自分達の手で倒した事に喜ばずにはいられない。

マジクは杖を支えてどうにか立っているが、先ほどの広域魔法の影響で身体が思うように動かず、魔力を使いすぎてしまった。魔術兵も彼と同じように魔力を大分消耗し、全員がもう魔法が使える状態ではない。


「はあっ、はあっ……も、もう駄目だ」
「くそ、立っていられない」
「だ、大丈夫か?」
「お前達もよくやったぞ!!」


魔術兵は王国騎士が介抱を行う中、バッシュはナイ達の姿を探す。魔法を放つ前にリーナ達も離れている姿は確認したが、念のために広域魔法に巻き込まれていないのかを確かめようとすると、火竜から少し離れた場所に四人の姿を発見した。


「おい、ナイ!!起きな、目を覚まして早く怪我を治すんだよ!!」
「ナイ君!!しっかりして!!」
「ナイ、起きて……ビャクも心配している」
「クゥ~ンッ……」


地面に横たわったナイにテン達が声を掛け、その中には傷だらけながらも起き上がり、ナイの頬を舐めるビャクの姿もあった。とりあえずは全員が生きている事を確認するとバッシュは安堵する。


「生きていたか……全く、心配を掛けさせるな」
「ですが、あの少年のお陰で火竜を倒す事ができました……もしもあのまま戦闘になっていたら、儂等の命はなかったでしょう」
「……そうだな」


ナイが火竜を引き寄せていなければ今頃は討伐隊も無事では済まず、火竜に一方的に殲滅されていた可能性が高い。火竜が現れた時、バッシュは悔しい事に頭が混乱して何もできなかった。

バッシュ以外の者達も突如として現れた火竜に対処できず、怯えて震える事しか出来なかった。だが、ナイがビャクと共に火竜を引き寄せて討伐隊から引き離した事で冷静に考える余裕を取り戻す。


「ナイのお陰で我々は態勢を整えて火竜に攻撃を仕掛ける事が出来た。しかし、あんな無茶な真似をするとは……」
「儂も驚きました。火竜を見るのは儂も初めてですからな……だが、心なしかあの少年は火竜に対して怯えていなかったように見えますな」
「そうだな……」


全員が火竜を確認した際、真っ先に行動を起こしたのはナイだった。火竜を見るのはナイも初めてのはずであり、その恐ろしい風貌を見れば仮に一流の冒険者でも怖気づくだろう。



――しかし、ナイがこれまでに戦ってきた強敵はその殆どがナイを上回る圧倒的な力を持つ存在ばかりだった。子供の頃のホブゴブリンを筆頭に赤毛熊、ガーゴイル亜種、ミノタウロスなど、常に自分よりも強者と戦ってきたナイだからこそ、火竜を前にしてもすぐに対応できた。



戦う相手が自分よりも強い存在である事はナイも慣れており、その経験のお陰でナイは咄嗟に最良の判断を下す事ができた。だが、流石に今回は相手が悪く、もしも討伐隊の到着が少しでも遅れればナイは死んでいただろう。


「マジク、お前の方は大丈夫か?」
「何……しばらくは魔法が使えないでしょうが、死にはしません。それよりも火竜を確実に始末しなければ……」
「そうだな……」


火竜は完全には死んでおらず、僅かに身体を痙攣させていた。この事からまだ火竜は生きているのは間違いなく、確実に止めを刺さなければならない。

バッシュは新たな命令を下そうとした際、この時に地面に振動が走る。最初は地震かと思われたが、様子がおかしかった。


「何だ!?」
「じ、地震!?」
「全員、馬から下りろ!!転倒するぞ!?」
「ヒヒィンッ!?」


火山全体が震えているかのように激しい振動が襲い掛かり、やがて火口の方から聞いた事もない音が響き渡る。バッシュは火山が噴火しようとしているのかと思ったが、火山の頂上を見上げると、そこには思いがけない光景が広がっていた。




――オァアアアアッ……!!




火山の火口から出現したのは全長が10メートルを超える巨大なレッドゴーレムであり、それはかつて火竜と共に激闘を繰り広げ、溶岩の中に沈んだはずの大型ゴーレムだった――
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