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王国の闇
第743話 イリアの思惑
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「お前達、どうしてここに!?」
「まさか、お前達まで裏切っていたのか!?」
「……申し訳ございません、副団長」
「見ての通りです、あの時に船に乗っていた王国騎士の四分の一は私と同じ立場だったんですよ」
「そ、そんな馬鹿な……!?」
地下に降りてきたのは20名ほどの王国騎士であり、彼等の中には騎士団の結成当時から在籍する王国騎士も含まれていた。そんな彼等を見てリンは歯を食いしばり、アッシュも彼等の裏切りに気付けなかった事に悔し気な表情を浮かべる。
飛行船の四人の侵入者を直接的に殺したのはイリアではなく、飛行船に同行していた王国騎士達の仕業だった。彼等はお互いの口裏を合わせる事で殺人を犯した事を誤魔化し、他の者達は誰も怪しまなかった。当然と言えば当然の話であり、これだけの人数が口裏を合わせていれば犯人が特定するはずがない。
彼等の裏切りに気付けなかったのも無理はなく、裏でシンの指示には従っていたが、普段は王国騎士としての務めを立派に果たしていた。しかし、彼等が忠誠を誓う相手はバッシュやリノではなく、シンであった。
「お前達……よくも私達の前に顔を出せたな!!この場で切り伏せてやる!!」
「うっ……」
「ふ、副団長……」
「檻の中で怒鳴られても全然怖くありませんよ。その様子を見る限りだと元気そうですね、それじゃあ私達はこれで……」
「ま、待て!!ドリスの怪我を治せ!!このままだと危険だぞ!!」
「ううっ……」
立ち去ろうとするイリア達に対してリンは思い出したように語り掛け、先ほどオロカの鞭を受けたドリスの背中は酷い怪我を負っており、このままでは失血死してしまう。
リンの言葉に対してイリアはドリスの背中に視線を向け、イーシャンに振り返る。イーシャンは先ほどオロカに差した注射器とは別の注射器を取り出し、それをイリアに渡す。
「仕方ありませんね……じゃあ、回復薬を渡しておきますからそれを打ってください」
「うわっ!?」
イリアは注射器に回復薬を注入すると、それを無造作にドリスとリンの檻の中に放り込む。この時の彼女の行動にリンは怒りを抱くが、すぐに彼女は注射器を見てある事に気付く。
「それじゃあ、皆さん。ごきげんよう~」
「待て、イリア!!」
「ふざけおって……!!」
「ここから出しやがれっ!!」
立ち去っていくイリア達の姿に怒声を浴びせるが、彼女達は気にした風もなく階段を上がって姿を消し去り、見張りさえも残しておかない。
リンは注射器に視線を向け、中身の確認を行う。中身は間違いなく回復薬であり、それを確認するとドリスの背中に差すのではなく、少しずつ垂らしていく。
「ドリス、大丈夫か?」
「あうっ……んんぅっ……そ、そこはぁっ……!!」
「へ、変な声を出すな……」
怪我の治療の際に悶えるドリスを見てリンは慌てふためくが、イリアが渡してくれた回復薬の効果は高く、背中の怪我が消えていく。やがて注射器が空になった時はドリスの怪我は治り、彼女は身体を起き上げる。
「ふうっ……まさか、鞭で背中を叩かれる日が来るとは思いませんでしたわ」
「大丈夫か?どうして私を庇った?」
「さあ、気づいていたら身体が勝手に動いていましたわ。だから気にしなくて結構です、私も怪我を治して貰いましたからね」
「全く……可愛げのない女だ」
「のう、御二人さん……友情を深めている所を悪いが、少しいいか?」
ドリスの言葉にリンは苦笑いを浮かべると、ここで隣の檻に閉じ込められていたハマーンが口を挟む。ハマーンはリンがイリアから受け取った注射器に視線を向け、それを自分に渡す様に促す。
「その注射器……もしかしたら鍵を開けるのに使えるかもしれん」
「なっ!?爺さん、それ本当か!?」
「さっきも言ったであろう、先が尖っている物さえあれば鍵を開けるとな」
ハマーンの言葉を聞いてリンはすぐに檻の隙間から手を伸ばし、彼に注射器を渡す。この時にリンはイリアが去っていた方向に視線を向ける。
(まさか……わざとか?)
イリアがわざわざ回復薬を注射器に含めて渡した事に彼女は疑問を抱き、普通に怪我を治療するだけならば注射器などわざわざ使う必要はない。
基本的に回復薬の類は傷口に注ぐのが一般的であり、体内に注入したとしても体力は回復し、自然回復力は高める効果はある。しかし、今回のような怪我を負った場合は傷口に注ぐ方が効果的であり、わざわざ注射器を使用する理由はない。
どうしてイリアはこの状況下で注射器ごと渡してきた事にリンは疑問を抱くが、ハマーンに注射器を渡す。彼は自分の檻の鍵穴に注射器の針を差し込む。
「ど、どうだ爺さん?」
「話しかけるな、集中しとるんじゃ……よし、これならば鍵を開けられるぞ」
「本当か!?」
「だから話しかけるな……集中して鍵を開けん」
ハマーンは自分が設計した檻の鍵の事も熟知しており、彼は注射器の針だけで解錠を試みる。しばらく時間が経過すると、鍵が開く音が鳴り響いた――
「まさか、お前達まで裏切っていたのか!?」
「……申し訳ございません、副団長」
「見ての通りです、あの時に船に乗っていた王国騎士の四分の一は私と同じ立場だったんですよ」
「そ、そんな馬鹿な……!?」
地下に降りてきたのは20名ほどの王国騎士であり、彼等の中には騎士団の結成当時から在籍する王国騎士も含まれていた。そんな彼等を見てリンは歯を食いしばり、アッシュも彼等の裏切りに気付けなかった事に悔し気な表情を浮かべる。
飛行船の四人の侵入者を直接的に殺したのはイリアではなく、飛行船に同行していた王国騎士達の仕業だった。彼等はお互いの口裏を合わせる事で殺人を犯した事を誤魔化し、他の者達は誰も怪しまなかった。当然と言えば当然の話であり、これだけの人数が口裏を合わせていれば犯人が特定するはずがない。
彼等の裏切りに気付けなかったのも無理はなく、裏でシンの指示には従っていたが、普段は王国騎士としての務めを立派に果たしていた。しかし、彼等が忠誠を誓う相手はバッシュやリノではなく、シンであった。
「お前達……よくも私達の前に顔を出せたな!!この場で切り伏せてやる!!」
「うっ……」
「ふ、副団長……」
「檻の中で怒鳴られても全然怖くありませんよ。その様子を見る限りだと元気そうですね、それじゃあ私達はこれで……」
「ま、待て!!ドリスの怪我を治せ!!このままだと危険だぞ!!」
「ううっ……」
立ち去ろうとするイリア達に対してリンは思い出したように語り掛け、先ほどオロカの鞭を受けたドリスの背中は酷い怪我を負っており、このままでは失血死してしまう。
リンの言葉に対してイリアはドリスの背中に視線を向け、イーシャンに振り返る。イーシャンは先ほどオロカに差した注射器とは別の注射器を取り出し、それをイリアに渡す。
「仕方ありませんね……じゃあ、回復薬を渡しておきますからそれを打ってください」
「うわっ!?」
イリアは注射器に回復薬を注入すると、それを無造作にドリスとリンの檻の中に放り込む。この時の彼女の行動にリンは怒りを抱くが、すぐに彼女は注射器を見てある事に気付く。
「それじゃあ、皆さん。ごきげんよう~」
「待て、イリア!!」
「ふざけおって……!!」
「ここから出しやがれっ!!」
立ち去っていくイリア達の姿に怒声を浴びせるが、彼女達は気にした風もなく階段を上がって姿を消し去り、見張りさえも残しておかない。
リンは注射器に視線を向け、中身の確認を行う。中身は間違いなく回復薬であり、それを確認するとドリスの背中に差すのではなく、少しずつ垂らしていく。
「ドリス、大丈夫か?」
「あうっ……んんぅっ……そ、そこはぁっ……!!」
「へ、変な声を出すな……」
怪我の治療の際に悶えるドリスを見てリンは慌てふためくが、イリアが渡してくれた回復薬の効果は高く、背中の怪我が消えていく。やがて注射器が空になった時はドリスの怪我は治り、彼女は身体を起き上げる。
「ふうっ……まさか、鞭で背中を叩かれる日が来るとは思いませんでしたわ」
「大丈夫か?どうして私を庇った?」
「さあ、気づいていたら身体が勝手に動いていましたわ。だから気にしなくて結構です、私も怪我を治して貰いましたからね」
「全く……可愛げのない女だ」
「のう、御二人さん……友情を深めている所を悪いが、少しいいか?」
ドリスの言葉にリンは苦笑いを浮かべると、ここで隣の檻に閉じ込められていたハマーンが口を挟む。ハマーンはリンがイリアから受け取った注射器に視線を向け、それを自分に渡す様に促す。
「その注射器……もしかしたら鍵を開けるのに使えるかもしれん」
「なっ!?爺さん、それ本当か!?」
「さっきも言ったであろう、先が尖っている物さえあれば鍵を開けるとな」
ハマーンの言葉を聞いてリンはすぐに檻の隙間から手を伸ばし、彼に注射器を渡す。この時にリンはイリアが去っていた方向に視線を向ける。
(まさか……わざとか?)
イリアがわざわざ回復薬を注射器に含めて渡した事に彼女は疑問を抱き、普通に怪我を治療するだけならば注射器などわざわざ使う必要はない。
基本的に回復薬の類は傷口に注ぐのが一般的であり、体内に注入したとしても体力は回復し、自然回復力は高める効果はある。しかし、今回のような怪我を負った場合は傷口に注ぐ方が効果的であり、わざわざ注射器を使用する理由はない。
どうしてイリアはこの状況下で注射器ごと渡してきた事にリンは疑問を抱くが、ハマーンに注射器を渡す。彼は自分の檻の鍵穴に注射器の針を差し込む。
「ど、どうだ爺さん?」
「話しかけるな、集中しとるんじゃ……よし、これならば鍵を開けられるぞ」
「本当か!?」
「だから話しかけるな……集中して鍵を開けん」
ハマーンは自分が設計した檻の鍵の事も熟知しており、彼は注射器の針だけで解錠を試みる。しばらく時間が経過すると、鍵が開く音が鳴り響いた――
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