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番外編 獣人国の刺客
第881話 上級回復薬
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――時は遡り、商人へと偽装したリョフイは王都へ赴いて調査を行う。商人といってもバーリと接してきたときのような闇商人ではなく、獣人国で栽培を行っている薬を取り扱う商人として赴いた。
バーリが捕まったという情報は彼の耳にも届いており、念のために「変装」の技能を駆使し、別人のように化けてから王都へ赴く。だが、到着早々にリョフイは思わぬ事態に陥る。
「えっ……ど、どういう意味ですか?」
「だからさ、悪いんだけどあんたの所とは取引できないよ。わざわざ獣人国まで来てくれたみたいで悪いんだけどね……悪いけどこの程度の薬なら買う必要もないんだよ」
リョフイは持参したのは獣人国で生産された回復薬を販売しようとしたのだが、薬屋に赴いて早々に彼は取引を断られてしまう。彼が持参した回復薬の類は獣人国が作り出せる最高品質の薬品なのだが、あっさりと断られた事に戸惑う。
「お、お待ちください!!この薬は我が国で作り出した最高品質の薬です!!」
「あ~……少し前に来てくれたら買っていたかもしれないね。けどね、王都《うち》ではもう普通の薬は扱わないんだよ」
「ど、どういう意味ですか!?」
店主はリョフイの話を聞いて困った表情を浮かべ、リョフイとしては本来の任務は王都の調査であるため、別に薬の販売に拘る必要はない。しかし、商人としてリョフイは自分の品物を取引しない店主の言い分を聞かずにはいられない。
納得しないリョフイに大して薬やは仕方なく彼の前に一本の薬を置く。それを見た途端に優れた商人であるリョフイは一目見ただけで彼がおいたのは只の回復薬ではない事を見抜く。
「こ、これは?」
「うちが扱っている「上級回復薬《ハイ・ポーション》」と呼ばれる代物だよ。今の王都ではこの薬が主流なんだ」
「上級回復薬……!?」
上級回復薬の名前はリョフイも聞いた事があり、数年前ほど前から販売されている代物である。製作者は魔導士のイリアであり、この上級回復薬は普通の回復薬よりも効果が高い事で有名だった。
だが、上級回復薬は素材の調達などの問題で普通の回復薬よりも高級品として扱われていたはずだった。しかし、店主によると一か月ほど前から王都では普通の回復薬から上級回復薬の販売が主流になったという。
「いや、実は一か月前に魔導士イリア様がこの上級回復薬の新しい精製方法を発見してね。そのお陰で王都では上級回復薬が流通されて普通の回復薬なんて以前の半分以下の値段で売られる始末だよ」
「そ、そんな!?」
「魔物による被害も未だに増え続けているし、店としては効果が高い薬が大量に手に入るのなら有難いだろう。だから、悪いけどあんたの所の回復薬を輸入する理由はないわけ」
「…………」
リョフイは商談を断られた事に衝撃を受け、彼は上級回復薬を見つめて唖然とする。そして上級回復薬の効果を確かめるため、震える指で蓋を開いて中身を飲む。
上級回復薬の効果は素晴らしく、口に含んだだけでリョフイの長旅の疲れが一気に吹き飛び、彼は自分の身体の異変に気付いて戸惑う。
「し、信じられない……」
「凄い効果だろう?あの人は天才だよ、薬師じゃなくて魔導士なのが不思議なくらいだ」
「こ、この上級回復薬の製作方法は……」
「さあな。俺の店は薬を仕入れているだけだからな。だから取引は無しだ、帰ってくれ」
リョフイは上級回復薬の効果を知って何としても生成方法を知りたかったが、店主としても大切な商品の作り方を他国の商人に教えつもりはなく、彼にお引き取りを願う――
――そのあともリョフイは商業区中を回って回復薬の取引を持ち込むが、全て断られてしまった。理由としてはリョフイの用意した回復薬は普通の回復薬と比べれば少しだけ効果が高い程度であり、上級回復薬には遠く及ばない。
上級回復薬程度の効果を見込めない回復薬ではわざわざ取引を行う商人はおらず、リョフイの人生の中で初めて彼は商売を失敗してしまった。
――時はさらに遡り、イリアは白面が使用していた地下施設を利用し、特殊な薬草の栽培を行っていた。白面の施設ではこれまで毒薬の製作に必要な植物の育成が行われていたが、現在はそれらの植物は除去される。
白面が利用していた施設は取り壊すべきだという提案もあったが、植物を育てる環境は整っていたのでイリアの提案で今後は回復薬の製作に必要な植物の育成を行う事になった。シンの命令でイリアは毒薬の制作を行っていたが、その反面に解毒薬の製作に必要な素材の植物の育成も行っていた。
「さあ、これから人助けのために薬をばんばん作りますよ!!」
「……お前が言うと説得力がないな」
「それはお互い様でしょう」
王国専属の医師であるイシも彼女に協力してくれ、二人は人々の役立つ薬の製作のために尽力し、白面の施設を利用して薬草の育成を行う。この時に意外な事に拉致されて毒薬の製作に協力していた薬師たちも協力してくれた。
「俺達も手伝わせてくれ!!」
「俺達のせいで人が死んだんだ……なら、せめて罪滅ぼしさせてくれ」
彼等は誘拐されてあくまでも毒薬製作を協力されていたに過ぎないが、人を救うために薬師になったのに人を殺す薬を作り続けてきた事に彼は苦しんでいた。そこで今までの罪を償うため、彼等は一緒に薬草の育成に励む。
薬草の栽培は非常に難しく、かなりの困難を極めた。しかし、イリアはある時に植物型の魔物である「樹精霊《プラント》」を利用した新しい薬草の栽培を思いつく。
『ジュルルルッ……』
「やっぱり、樹精霊はちゃんと肥料を与えて綺麗な水で育てれば狂暴性を失うみたいですね」
「それを調べるために僕達を呼んで捕まえさせたのかい……」
「か、かなり苦労しましたよ」
「死ぬかと思った」
「僕なんて触手に捕まって大変な事になりそうだったよ……ううっ、もうお嫁にいけないかも」
「ま、まあまあ……」
イリアは白狼騎士団と黄金級冒険者のリーナとついでにナイに頼み込み、樹精霊の「捕獲」を頼む。かなりの苦労をさせられたがイリア達は捕縛には成功し、無事に樹精霊を王都の地下の施設に運び出す。
最初は狂暴だった樹精霊だったが、植物が育つ環境としては最高の場所を用意すると、すぐに樹精霊は狂暴性を失ってしまう。それどころか自分に栄養を与える存在に警戒心を失い、水や肥料を与えてくれる人間のために樹液を分けてくれた。
『ジュルルルッ……』
「お、樹液をくれるんですか?ありがとうございますね、これで研究も捗ります」
「……イリアさんは魔物使いの素質があるんでしょうか?」
「もしかして薬師よりも才能があるかもしれないね」
「ちょっと、聞こえてますよ!!」
樹精霊を手懐けたイリアは樹液を分けてもらい、樹精霊の樹液を研究した結果、実は樹液は薬草と組み合わせればより回復効果を高める事が判明した。
その後はイリアの研究が進み、数十回の試行錯誤の結果、上級回復薬の新しい製作方法が遂に判明した。こちらの方法は従来の上級回復薬の製作方法よりも素材の消耗が少なく、大量生産も可能でイリアはすぐに報告を行う。
その後、王都では新しく作り出された上級回復薬が流通し、この上級回復薬の事を知った他の街からも商人が多く訪れ、数か月経つ頃には王国中に流通する
「いや~私、またなんかやっちゃいましたか?」
「調子に乗るんじゃねえよ……だが、よくやったな」
こうしてイリアと薬師たちの活躍のお陰で王国では上級回復薬が流通化した事により、他国から回復薬の類の輸入をする必要がなくなった。これによって後に獣人国はかなりの損害を受ける事になるのは別の話である――
バーリが捕まったという情報は彼の耳にも届いており、念のために「変装」の技能を駆使し、別人のように化けてから王都へ赴く。だが、到着早々にリョフイは思わぬ事態に陥る。
「えっ……ど、どういう意味ですか?」
「だからさ、悪いんだけどあんたの所とは取引できないよ。わざわざ獣人国まで来てくれたみたいで悪いんだけどね……悪いけどこの程度の薬なら買う必要もないんだよ」
リョフイは持参したのは獣人国で生産された回復薬を販売しようとしたのだが、薬屋に赴いて早々に彼は取引を断られてしまう。彼が持参した回復薬の類は獣人国が作り出せる最高品質の薬品なのだが、あっさりと断られた事に戸惑う。
「お、お待ちください!!この薬は我が国で作り出した最高品質の薬です!!」
「あ~……少し前に来てくれたら買っていたかもしれないね。けどね、王都《うち》ではもう普通の薬は扱わないんだよ」
「ど、どういう意味ですか!?」
店主はリョフイの話を聞いて困った表情を浮かべ、リョフイとしては本来の任務は王都の調査であるため、別に薬の販売に拘る必要はない。しかし、商人としてリョフイは自分の品物を取引しない店主の言い分を聞かずにはいられない。
納得しないリョフイに大して薬やは仕方なく彼の前に一本の薬を置く。それを見た途端に優れた商人であるリョフイは一目見ただけで彼がおいたのは只の回復薬ではない事を見抜く。
「こ、これは?」
「うちが扱っている「上級回復薬《ハイ・ポーション》」と呼ばれる代物だよ。今の王都ではこの薬が主流なんだ」
「上級回復薬……!?」
上級回復薬の名前はリョフイも聞いた事があり、数年前ほど前から販売されている代物である。製作者は魔導士のイリアであり、この上級回復薬は普通の回復薬よりも効果が高い事で有名だった。
だが、上級回復薬は素材の調達などの問題で普通の回復薬よりも高級品として扱われていたはずだった。しかし、店主によると一か月ほど前から王都では普通の回復薬から上級回復薬の販売が主流になったという。
「いや、実は一か月前に魔導士イリア様がこの上級回復薬の新しい精製方法を発見してね。そのお陰で王都では上級回復薬が流通されて普通の回復薬なんて以前の半分以下の値段で売られる始末だよ」
「そ、そんな!?」
「魔物による被害も未だに増え続けているし、店としては効果が高い薬が大量に手に入るのなら有難いだろう。だから、悪いけどあんたの所の回復薬を輸入する理由はないわけ」
「…………」
リョフイは商談を断られた事に衝撃を受け、彼は上級回復薬を見つめて唖然とする。そして上級回復薬の効果を確かめるため、震える指で蓋を開いて中身を飲む。
上級回復薬の効果は素晴らしく、口に含んだだけでリョフイの長旅の疲れが一気に吹き飛び、彼は自分の身体の異変に気付いて戸惑う。
「し、信じられない……」
「凄い効果だろう?あの人は天才だよ、薬師じゃなくて魔導士なのが不思議なくらいだ」
「こ、この上級回復薬の製作方法は……」
「さあな。俺の店は薬を仕入れているだけだからな。だから取引は無しだ、帰ってくれ」
リョフイは上級回復薬の効果を知って何としても生成方法を知りたかったが、店主としても大切な商品の作り方を他国の商人に教えつもりはなく、彼にお引き取りを願う――
――そのあともリョフイは商業区中を回って回復薬の取引を持ち込むが、全て断られてしまった。理由としてはリョフイの用意した回復薬は普通の回復薬と比べれば少しだけ効果が高い程度であり、上級回復薬には遠く及ばない。
上級回復薬程度の効果を見込めない回復薬ではわざわざ取引を行う商人はおらず、リョフイの人生の中で初めて彼は商売を失敗してしまった。
――時はさらに遡り、イリアは白面が使用していた地下施設を利用し、特殊な薬草の栽培を行っていた。白面の施設ではこれまで毒薬の製作に必要な植物の育成が行われていたが、現在はそれらの植物は除去される。
白面が利用していた施設は取り壊すべきだという提案もあったが、植物を育てる環境は整っていたのでイリアの提案で今後は回復薬の製作に必要な植物の育成を行う事になった。シンの命令でイリアは毒薬の制作を行っていたが、その反面に解毒薬の製作に必要な素材の植物の育成も行っていた。
「さあ、これから人助けのために薬をばんばん作りますよ!!」
「……お前が言うと説得力がないな」
「それはお互い様でしょう」
王国専属の医師であるイシも彼女に協力してくれ、二人は人々の役立つ薬の製作のために尽力し、白面の施設を利用して薬草の育成を行う。この時に意外な事に拉致されて毒薬の製作に協力していた薬師たちも協力してくれた。
「俺達も手伝わせてくれ!!」
「俺達のせいで人が死んだんだ……なら、せめて罪滅ぼしさせてくれ」
彼等は誘拐されてあくまでも毒薬製作を協力されていたに過ぎないが、人を救うために薬師になったのに人を殺す薬を作り続けてきた事に彼は苦しんでいた。そこで今までの罪を償うため、彼等は一緒に薬草の育成に励む。
薬草の栽培は非常に難しく、かなりの困難を極めた。しかし、イリアはある時に植物型の魔物である「樹精霊《プラント》」を利用した新しい薬草の栽培を思いつく。
『ジュルルルッ……』
「やっぱり、樹精霊はちゃんと肥料を与えて綺麗な水で育てれば狂暴性を失うみたいですね」
「それを調べるために僕達を呼んで捕まえさせたのかい……」
「か、かなり苦労しましたよ」
「死ぬかと思った」
「僕なんて触手に捕まって大変な事になりそうだったよ……ううっ、もうお嫁にいけないかも」
「ま、まあまあ……」
イリアは白狼騎士団と黄金級冒険者のリーナとついでにナイに頼み込み、樹精霊の「捕獲」を頼む。かなりの苦労をさせられたがイリア達は捕縛には成功し、無事に樹精霊を王都の地下の施設に運び出す。
最初は狂暴だった樹精霊だったが、植物が育つ環境としては最高の場所を用意すると、すぐに樹精霊は狂暴性を失ってしまう。それどころか自分に栄養を与える存在に警戒心を失い、水や肥料を与えてくれる人間のために樹液を分けてくれた。
『ジュルルルッ……』
「お、樹液をくれるんですか?ありがとうございますね、これで研究も捗ります」
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樹精霊を手懐けたイリアは樹液を分けてもらい、樹精霊の樹液を研究した結果、実は樹液は薬草と組み合わせればより回復効果を高める事が判明した。
その後はイリアの研究が進み、数十回の試行錯誤の結果、上級回復薬の新しい製作方法が遂に判明した。こちらの方法は従来の上級回復薬の製作方法よりも素材の消耗が少なく、大量生産も可能でイリアはすぐに報告を行う。
その後、王都では新しく作り出された上級回復薬が流通し、この上級回復薬の事を知った他の街からも商人が多く訪れ、数か月経つ頃には王国中に流通する
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