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砂漠の脅威
第941話 巨人国の軍船
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「くそっ……俺の持っている方位磁石も壊れている」
「王子のも!?」
「ええっ……じゃあ、どうやって進めばいいんですか?」
王子が所有していた方位磁石も壊れている事が判明し、完全に砂漠で迷ってしまう。方向を分からない状態で闇雲に進むのは危険過ぎるが、だからといって大人しくしているわけにもいかない。
風は強くなり始める一方で有り、もう間もなくすれば砂嵐が訪れる。砂嵐に巻き込まれればいくらナイ達でも命はなく、一刻も早く避難する必要があった。
「王子、危険ですが道を引き返しましょう!!」
「だが、元に戻るにしても既に随分と離れている……第一にこの視界の悪い中、戻れる自信はあるのか?」
「それは……」
リンは戻る事を提案したが、既に強風の影響で大量の砂が舞って視界も悪かった。このまま進むのは危険だが、ここへ残っていても生き埋めにされる事に変わりはない。
(いったいどうすればいいんだ……そうだ、高い所に移動して何か見えないかな?)
ナイは砂丘を登って周囲の状況を確認できないかと考え、大量の砂が舞って視界は悪いが、彼には「観察眼」の技能がある。砂嵐の中でもナイの観察眼ならば砂漠にある物を見分ける事はできるはずだった。
「あの、砂丘に移動しましょう!!もしかしたら何か見つかるかもしれません!!」
「……それしか方法はないか」
「分かった、行くぞお前達!!」
「「「シャアアッ……!!」」」
リザードマン達はリンの命令を受けて強風の中を進み、どうにか砂丘まで辿り着く。だが、砂丘の方も徐々に強まる風のせいで崩れ始めており、あまり長居はできない。
砂丘の上に移動したナイは周囲の状況を把握して避難できそうな場所を探すが、視線を凝らしてナイは前方の方角を確認すると、巨大な影を発見した。
「え、あれは……!?」
「どうした、何か見えたのか?」
「砂嵐が見えたのか?」
「いいえ、違います!!船です、しかも物凄く大きい船が近付いています!!」
「船だと……!?」
ナイの言葉にバッシュもリンも驚き、二人もナイと同じ方角に視線を凝らす。最初は舞い上がる大量の砂のせいでよく見えなかったが、やがて時間が経過すると砂煙の中から船の影らしき物を視界に捉える。
「やっぱり、こっちに向かっています!!あの砂船に乗せてもらましょう!!」
「待て!!また砂賊の類ではないのか!?」
「いや……大丈夫だ、あの船の旗を見ろ。あれは巨人国の軍船だ」
リンは砂賊ではないかと警戒するが、バッシュの言う通りに船には巨人国の紋様が記された旗を掲げていた。巨人国の軍船はナイ達がいる方向へ向けて移動しており、助けてもらうならば今しかない。
「あの船に乗せてもらいましょう!!」
「あ、ああ……だが、どうやって知らせる!?」
「任せて下さい!!」
接近する軍船を見てナイは旋斧を掲げると、この時にナイは旋斧に聖属性の魔力を送り込む。すると旋斧の刃が光り輝き、それを照明代わりに利用して軍船に自分達の位置を知らせる。
魔法剣を利用してナイは合図を軍船に送ると、軍船はナイ達の存在に気付いたのか移動速度を落として徐々に接近してくる。軍船の大きさは昨日に砂賊が乗っていた砂船よりも2倍近くの大きさを誇り、ナイ達が乗ってきた飛行船よりも大きさは遥かに上回る。
「で、でかい……何という大きさだ!?」
「間違いない、この船の大きさ……巨人族の船だ」
「こっちに近付いてきますね……」
あまりの船の巨大さにナイ達は圧倒されるが、軍船はナイ達の傍で停止して甲板の方から縄梯子が下ろされた――
――奇跡的にも巨人国の軍船に拾い上げられたナイ達は彼等に保護されると、早速ではあるが船内に通されて軍船を動かす人物と対面する。軍船を動かしていたのはこの国の大将軍にして現在はアチイ砂漠に出現した魔物の調査を行う「テラン」だった。
テランは噂通りに巨人族の中でも大柄な体格でナイが今まで出会った巨人族の誰よりも背が高く、筋骨隆々の大男だった。噂ではトロールを殴り殺した事があると言われているが、実際に彼の姿を目の当たりにするとそれぐらいの芸当はできてもおかしくはないと思わされる。
「バッシュ王子……まさかこのような形で再会するとは思いませんでしたな」
「久しぶりだな、テラン大将軍……まずは我々を救助してくれて礼を言う」
「お気になさらずに……ドリス殿に教えてもらった居場所を頼りに我々は貴公らの船に移動する途中だった」
「なるほど……そう言う事だったか」
現在のバッシュはテランと机を挟んで向き合う形だったが、生憎と船内に用意されている机と椅子は巨人族用の物であるため、まるで子供と大人が向かい合って座っているようにしか見えない。一応はバッシュも人間にしては身長は高い方だが、テランと比べると子供と大人並の身長差だった。
「それでバッシュ王子……先に送られた使者から話は伺っているが、我々は貴国に求めたのは風属性の魔石の提供のみだ。それにも関わらずに何故、我が国の領地に騎士団を派遣された?」
「……生憎だが我々としては貴国の軍勢だけで例の超大型魔物……我々の国では「土鯨」と呼ばれているが、その魔物を貴国の軍勢だけで倒すのは困難かと判断し、こうして騎士団を連れて加勢に参った」
「ほう、それは……我々の軍力ではたかが一匹の魔物も葬れないという事か?」
テランとバッシュの間に緊張感が走り、彼等を取り囲む巨人族の兵士の表情が険しくなる。その一方でバッシュの後ろに立つリンは腰に差している剣に手を伸ばし、ナイの方も二人のやり取りを見て困った表情を浮かべる。
二人はあくまでも交渉しているだけだが、今回の交渉の内容によっては両国の対立に発展してしまうかもしれない。だからこそ言葉には気を付けなければならないが、バッシュはあくまでも媚びへつらわずに堂々とした態度を貫く。
「無論、貴国の軍隊が強い事はよく知っている。実際に貴国だけでは手に余る相手だからこそ、我々の国に協力を求めてきたのだろう?」
「むっ……」
「将軍はたかが一匹の魔物といったが、その魔物を倒すためにはこの巨大な軍船を動かす必要がある。しかし、軍船を動かすために必要な風属性の魔石はもう貴国の国だけでは準備する事ができない。だからこそ我々の国に魔石の提供を求めたのでは?」
「確かにその通りだ。その事に関しては感謝している……しかし、貴国の騎士団を派遣するのはそれとこれとは別の話だろう」
「いいから俺の話は最後まで聞いてほしい」
テランとしては風属性の魔石の提供は求めたが、王国の最強の戦力で「王国騎士団」の派遣に関しては求めていない事を主張する。しかし、バッシュはここで引くわけには行かずに言い返す。
「父上……我が国の王が王国騎士団を派遣したのはあくまでも貴国の危機を救いたいがためだ。知っての通り、この数年の間に我が国では様々な魔物の脅威に襲われた」
「……確かにその噂は聞いている」
「火竜を始めにゴーレムキング、更にはゴブリンキングなどの災害級の魔物が現れた。我が国はこれらの魔物を倒すために全力を尽くしたが、犠牲も大きかった……テラン大将軍、魔物とは恐るべき存在だ。決して侮ってはならない」
「つまり……バッシュ王子は我が領地に現れた土鯨も災害級の力を誇る魔物だといいたいのか?」
「実際に我々の国は既に大きな被害を被っている。土鯨が出現した事で両国の商業が途絶え、現在も大将軍が軍勢を率いて出向いている。これを災害と称して何か間違っているか?」
「…………」
バッシュの言葉を聞いてテランも思う所があるのか何も言い返さず、巨人国になくて王国にある強みは「災害級の魔物」の恐ろしさを知っている事だった。
「テラン大将軍も我々の領地に生息していた火竜の噂は知っているだろう。火竜はお恐ろしい存在だ、火竜の討伐のために我々はマジク魔導士という偉大な魔術師を失った」
「王子は土鯨が火竜に匹敵する恐ろしい存在だと言い張るつもりか?」
「これは我が国で保管されていた資料だが……土鯨に関する記録が残っている。今、この場で拝見してくれ」
「何だと?」
バッシュは迷宮都市の古城にて発見された魔物図鑑を取り出し、こちらの本は元々はイリアが管理していた代物だが、バッシュはテランとの交渉の際に利用できると考えて彼女から借りてきた。
古ぼけた図鑑を差し出されたテランは不思議に思いながらも図鑑を指先で開き、書かれている文字を読もうとした。しかし、人間よりも体格が大きすぎる彼は図鑑の文字が小さすぎて解読するのに少し時間が掛かったが、確かに砂漠に現れた土鯨の記録が記されている事を知る。
「この本は……いったいどういう事だ。何故、砂漠に現れた奴の記録が残されている?」
「簡単な話だ。土鯨と呼ばれる魔物は今の時代に生まれた魔物ではない、遥か昔から存在する魔物だ」
――アチイ砂漠に出現した土鯨と魔物図鑑に記録されている土鯨は同一個体である可能性がある。その事に最初に気付いたのはイリアだった。
記録によれば土鯨は一定の周期で姿を眩ませるらしく、魔物図鑑に記された記録によれば今までに一度も「討伐された事がない」と明確に記されていた。この事から土鯨は数百年前から生き続ける魔物であり、土鯨はある時期にしか地上に姿を現す事はない。
土鯨が姿を現す時期は世界中の魔物が最も繁殖する時期であり、現在の時代がそれに当てはまる。数年前までは人間が暮らす地域では魔物は殆ど見かけなかったが、今現在は世界中の至る場所に魔物が溢れかえっている。
この図鑑の記録が正しければ土鯨は数百年も討伐されなかった「災害級」の魔物である事が証明され、かつて一度も討伐された事がない魔物など竜種を含めたとしても数えるほどしかいない。だからこそバッシュはこれを理由に王国と巨人国が共闘する事を求める。
「王子のも!?」
「ええっ……じゃあ、どうやって進めばいいんですか?」
王子が所有していた方位磁石も壊れている事が判明し、完全に砂漠で迷ってしまう。方向を分からない状態で闇雲に進むのは危険過ぎるが、だからといって大人しくしているわけにもいかない。
風は強くなり始める一方で有り、もう間もなくすれば砂嵐が訪れる。砂嵐に巻き込まれればいくらナイ達でも命はなく、一刻も早く避難する必要があった。
「王子、危険ですが道を引き返しましょう!!」
「だが、元に戻るにしても既に随分と離れている……第一にこの視界の悪い中、戻れる自信はあるのか?」
「それは……」
リンは戻る事を提案したが、既に強風の影響で大量の砂が舞って視界も悪かった。このまま進むのは危険だが、ここへ残っていても生き埋めにされる事に変わりはない。
(いったいどうすればいいんだ……そうだ、高い所に移動して何か見えないかな?)
ナイは砂丘を登って周囲の状況を確認できないかと考え、大量の砂が舞って視界は悪いが、彼には「観察眼」の技能がある。砂嵐の中でもナイの観察眼ならば砂漠にある物を見分ける事はできるはずだった。
「あの、砂丘に移動しましょう!!もしかしたら何か見つかるかもしれません!!」
「……それしか方法はないか」
「分かった、行くぞお前達!!」
「「「シャアアッ……!!」」」
リザードマン達はリンの命令を受けて強風の中を進み、どうにか砂丘まで辿り着く。だが、砂丘の方も徐々に強まる風のせいで崩れ始めており、あまり長居はできない。
砂丘の上に移動したナイは周囲の状況を把握して避難できそうな場所を探すが、視線を凝らしてナイは前方の方角を確認すると、巨大な影を発見した。
「え、あれは……!?」
「どうした、何か見えたのか?」
「砂嵐が見えたのか?」
「いいえ、違います!!船です、しかも物凄く大きい船が近付いています!!」
「船だと……!?」
ナイの言葉にバッシュもリンも驚き、二人もナイと同じ方角に視線を凝らす。最初は舞い上がる大量の砂のせいでよく見えなかったが、やがて時間が経過すると砂煙の中から船の影らしき物を視界に捉える。
「やっぱり、こっちに向かっています!!あの砂船に乗せてもらましょう!!」
「待て!!また砂賊の類ではないのか!?」
「いや……大丈夫だ、あの船の旗を見ろ。あれは巨人国の軍船だ」
リンは砂賊ではないかと警戒するが、バッシュの言う通りに船には巨人国の紋様が記された旗を掲げていた。巨人国の軍船はナイ達がいる方向へ向けて移動しており、助けてもらうならば今しかない。
「あの船に乗せてもらいましょう!!」
「あ、ああ……だが、どうやって知らせる!?」
「任せて下さい!!」
接近する軍船を見てナイは旋斧を掲げると、この時にナイは旋斧に聖属性の魔力を送り込む。すると旋斧の刃が光り輝き、それを照明代わりに利用して軍船に自分達の位置を知らせる。
魔法剣を利用してナイは合図を軍船に送ると、軍船はナイ達の存在に気付いたのか移動速度を落として徐々に接近してくる。軍船の大きさは昨日に砂賊が乗っていた砂船よりも2倍近くの大きさを誇り、ナイ達が乗ってきた飛行船よりも大きさは遥かに上回る。
「で、でかい……何という大きさだ!?」
「間違いない、この船の大きさ……巨人族の船だ」
「こっちに近付いてきますね……」
あまりの船の巨大さにナイ達は圧倒されるが、軍船はナイ達の傍で停止して甲板の方から縄梯子が下ろされた――
――奇跡的にも巨人国の軍船に拾い上げられたナイ達は彼等に保護されると、早速ではあるが船内に通されて軍船を動かす人物と対面する。軍船を動かしていたのはこの国の大将軍にして現在はアチイ砂漠に出現した魔物の調査を行う「テラン」だった。
テランは噂通りに巨人族の中でも大柄な体格でナイが今まで出会った巨人族の誰よりも背が高く、筋骨隆々の大男だった。噂ではトロールを殴り殺した事があると言われているが、実際に彼の姿を目の当たりにするとそれぐらいの芸当はできてもおかしくはないと思わされる。
「バッシュ王子……まさかこのような形で再会するとは思いませんでしたな」
「久しぶりだな、テラン大将軍……まずは我々を救助してくれて礼を言う」
「お気になさらずに……ドリス殿に教えてもらった居場所を頼りに我々は貴公らの船に移動する途中だった」
「なるほど……そう言う事だったか」
現在のバッシュはテランと机を挟んで向き合う形だったが、生憎と船内に用意されている机と椅子は巨人族用の物であるため、まるで子供と大人が向かい合って座っているようにしか見えない。一応はバッシュも人間にしては身長は高い方だが、テランと比べると子供と大人並の身長差だった。
「それでバッシュ王子……先に送られた使者から話は伺っているが、我々は貴国に求めたのは風属性の魔石の提供のみだ。それにも関わらずに何故、我が国の領地に騎士団を派遣された?」
「……生憎だが我々としては貴国の軍勢だけで例の超大型魔物……我々の国では「土鯨」と呼ばれているが、その魔物を貴国の軍勢だけで倒すのは困難かと判断し、こうして騎士団を連れて加勢に参った」
「ほう、それは……我々の軍力ではたかが一匹の魔物も葬れないという事か?」
テランとバッシュの間に緊張感が走り、彼等を取り囲む巨人族の兵士の表情が険しくなる。その一方でバッシュの後ろに立つリンは腰に差している剣に手を伸ばし、ナイの方も二人のやり取りを見て困った表情を浮かべる。
二人はあくまでも交渉しているだけだが、今回の交渉の内容によっては両国の対立に発展してしまうかもしれない。だからこそ言葉には気を付けなければならないが、バッシュはあくまでも媚びへつらわずに堂々とした態度を貫く。
「無論、貴国の軍隊が強い事はよく知っている。実際に貴国だけでは手に余る相手だからこそ、我々の国に協力を求めてきたのだろう?」
「むっ……」
「将軍はたかが一匹の魔物といったが、その魔物を倒すためにはこの巨大な軍船を動かす必要がある。しかし、軍船を動かすために必要な風属性の魔石はもう貴国の国だけでは準備する事ができない。だからこそ我々の国に魔石の提供を求めたのでは?」
「確かにその通りだ。その事に関しては感謝している……しかし、貴国の騎士団を派遣するのはそれとこれとは別の話だろう」
「いいから俺の話は最後まで聞いてほしい」
テランとしては風属性の魔石の提供は求めたが、王国の最強の戦力で「王国騎士団」の派遣に関しては求めていない事を主張する。しかし、バッシュはここで引くわけには行かずに言い返す。
「父上……我が国の王が王国騎士団を派遣したのはあくまでも貴国の危機を救いたいがためだ。知っての通り、この数年の間に我が国では様々な魔物の脅威に襲われた」
「……確かにその噂は聞いている」
「火竜を始めにゴーレムキング、更にはゴブリンキングなどの災害級の魔物が現れた。我が国はこれらの魔物を倒すために全力を尽くしたが、犠牲も大きかった……テラン大将軍、魔物とは恐るべき存在だ。決して侮ってはならない」
「つまり……バッシュ王子は我が領地に現れた土鯨も災害級の力を誇る魔物だといいたいのか?」
「実際に我々の国は既に大きな被害を被っている。土鯨が出現した事で両国の商業が途絶え、現在も大将軍が軍勢を率いて出向いている。これを災害と称して何か間違っているか?」
「…………」
バッシュの言葉を聞いてテランも思う所があるのか何も言い返さず、巨人国になくて王国にある強みは「災害級の魔物」の恐ろしさを知っている事だった。
「テラン大将軍も我々の領地に生息していた火竜の噂は知っているだろう。火竜はお恐ろしい存在だ、火竜の討伐のために我々はマジク魔導士という偉大な魔術師を失った」
「王子は土鯨が火竜に匹敵する恐ろしい存在だと言い張るつもりか?」
「これは我が国で保管されていた資料だが……土鯨に関する記録が残っている。今、この場で拝見してくれ」
「何だと?」
バッシュは迷宮都市の古城にて発見された魔物図鑑を取り出し、こちらの本は元々はイリアが管理していた代物だが、バッシュはテランとの交渉の際に利用できると考えて彼女から借りてきた。
古ぼけた図鑑を差し出されたテランは不思議に思いながらも図鑑を指先で開き、書かれている文字を読もうとした。しかし、人間よりも体格が大きすぎる彼は図鑑の文字が小さすぎて解読するのに少し時間が掛かったが、確かに砂漠に現れた土鯨の記録が記されている事を知る。
「この本は……いったいどういう事だ。何故、砂漠に現れた奴の記録が残されている?」
「簡単な話だ。土鯨と呼ばれる魔物は今の時代に生まれた魔物ではない、遥か昔から存在する魔物だ」
――アチイ砂漠に出現した土鯨と魔物図鑑に記録されている土鯨は同一個体である可能性がある。その事に最初に気付いたのはイリアだった。
記録によれば土鯨は一定の周期で姿を眩ませるらしく、魔物図鑑に記された記録によれば今までに一度も「討伐された事がない」と明確に記されていた。この事から土鯨は数百年前から生き続ける魔物であり、土鯨はある時期にしか地上に姿を現す事はない。
土鯨が姿を現す時期は世界中の魔物が最も繁殖する時期であり、現在の時代がそれに当てはまる。数年前までは人間が暮らす地域では魔物は殆ど見かけなかったが、今現在は世界中の至る場所に魔物が溢れかえっている。
この図鑑の記録が正しければ土鯨は数百年も討伐されなかった「災害級」の魔物である事が証明され、かつて一度も討伐された事がない魔物など竜種を含めたとしても数えるほどしかいない。だからこそバッシュはこれを理由に王国と巨人国が共闘する事を求める。
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