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最終章
第1064話 封印の方法
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巨大剣をダイダラボッチが破壊できなかったのは触れる度にダイダラボッチの生命力(魔力)を奪い、自己修復を行っていたというのがアルトの推理だった。しかし、ダイダラボッチにとってはこの巨大剣は長年の間、自分を封じ込め続けてきた忌々しい魔剣である。
昨日のダイダラボッチの様子を見る限り、ダイダラボッチはこの巨大剣を破壊しようと考えているのは間違いない。だが、どうしてダイダラボッチがこの巨大剣に拘り続けるのかアルトは気になった。
(この巨大剣をダイダラボッチが憎んでいるのは間違いない。しかし、それでも破壊する事に拘るのに他に理由があるんだろうか?)
ダイダラボッチが巨大剣を酷く憎んでいたとしても、破壊に失敗した途端に地面に突き刺して去っていった事にアルトは違和感を抱く。もしかしたらダイダラボッチは自分を封じていた巨大剣を未だに恐れているのかもしれない。
「これはあくまでも僕の予測に過ぎないが、ダイダラボッチが一番恐れている事はこの剣に再び封印される事じゃないか?」
「封印?そんな事ができるんですか?」
「この巨大剣はダイダラボッチの身体に元々突き刺さっていた物だ。今まで何百年も魔力を吸い上げていたお陰でダイダラボッチは地中に眠らざるを得なかったんだ」
「それは……十分に有り得るね」
魔力切れを引き起こすと大抵の生物はまともに動く事もできず、それはダイダラボッチであろうと例外ではない。魔力切れを引き起こせばダイダラボッチも自力では殆ど動けず、だからこそ今まで地中深くに封じられていたと思われた。
「待ってください!!それならこの巨大剣をもう一度ダイダラボッチに突き刺せばもう一度封印できるんじゃないですか!?」
「その可能性はある。実際、この魔剣は効力を失っていない。その証拠に魔剣の周囲の植物が枯れている所をみるに今も尚、この魔剣は周囲から魔力を吸収している」
「という事は……こいつを突き刺せばまたダイダラボッチは魔力を吸い上げられて動けなくなるという事かい!?」
アルトの言葉に全員が驚愕し、遂にダイダラボッチを封印する方法が判明した。しかし、ここでミイナが素朴な疑問を口にする。
「……でも、それならどうしてダイダラボッチは復活したの?ダイダラボッチは自力でこの馬鹿でかい剣を抜いて復活したんじゃないの?」
「そう、そこが一番気になる事だ」
ダイダラボッチが復活した時、その光景を見ていた者達はダイダラボッチが大穴から抜け出す時には既に背中に突き刺さっていたはずの巨大剣を手にしていたアルトは報告している。
どうして巨大剣で封じられているはずのダイダラボッチが復活したのか理由が分からず、その原因を知る可能性があるとすれば現場に存在したナイしかいない。そろそろ彼も起きる頃合いだと判断し、一旦アルトは引き返す事にした――
――アルト達が飛行船の医療室に戻ると既にナイは意識を取り戻しており、怪我の方も完治していた。イリアの薬のお陰で彼の身体も回復し、今日の所はゆっくりと身体を休めれば、明日には普通に動けるはずだとイリアは告げる。
「ナイさんの回復力は凄いですね、これなら明日には普通に動けるようになりますよ」
「そうか、それは良かった」
「ごめん、皆……色々と迷惑をかけて」
「謝らなくていいよ~」
「うん、無事で良かった……でも、これからはもう一人で無茶をしたら駄目だよ?」
「ぷるんっ(心配させたらあかんで)」
ナイの傍にはモモとリーナの姿もあり、プルミンもイリアの頭の上に居た。まずはナイが無事である事にアルト達は安堵するが、ダイダラボッチが復活した時に何が起きたのかを確認するため、アルトは率直に尋ねる。
「ナイ君、病み上がりの所を悪いんだが何が起きたのか詳しく話してくれるかい?アンがどうなったのか、ダイダラボッチが復活した時の様子を教えてほしい」
「うん、分かったよ」
アルトの質問にナイは頷き、彼は昨日起きた出来事を全て語る。唐突に発生し地割れに牙竜が巻き込まれた事、そしてアンは自分と共にダイダラボッチの攻撃を受けた事を話す。
反魔の盾を所有していたナイは奇跡的に地面の中に埋もれても生きていたが、アンの場合は彼のような強靭な肉体を持ち合わせておらず、ダイダラボッチに踏み潰されたとしか考えられない。
「なるほど、そんな事が起きていたのか……」
「じゃあ、アンの奴はもう死んじまったのかい……まあ、あんな化物に踏み潰されたら死体も跡形もなく吹き飛んだんだろうね」
「牙竜は地割れに落ちたまま消えちゃったんだ……その地割れもダイダラボッチが引き起こしたのかな?」
ナイから話を聞いた者達は戦闘の際中に発生した地震が偶然なのか、あるいはダイダラボッチが引き起こしたのか、そしてアンの従えていた牙竜はどうなったのか気になって話し合いを行う。
最初の問題は地震が自然に発生したのかどうかであり、この答えはアンの反応から察するにダイダラボッチの仕業である可能性が高いとナイは告げる。
「地震が起きる前にアンの様子がおかしかった。地中にいるダイダラボッチの力が強まったみたいな事を言っていたし、きっとダイダラボッチのせいで地震が起きたんだと思う」
「なら、ナイさんが戦っている時にはダイダラボッチは既に復活してたんですかね?」
「いや、それは分からない。巨大剣で魔力を奪われていると言っても、魔力切れの状態でも身体をわずかに動かす事はできるはずだ」
「それぐらいはまあ、できるだろうね……」
魔力が完全に切れたとしても意識を失うまでは肉体を少しだけ動かす事はできる。ダイダラボッチの巨体ならば地中の中でもわずかに身動きしただけで地震のような振動が起きてもおかしくはない。
それにアルトが気になったのは地震が発生した際、地割れが牙竜を飲み込んだ事だった。牙竜が落ちた先はダイダラボッチが封じられている場所で間違いなく、その後に牙竜の姿は目撃されていない。
「牙竜が地割れに落ちた事が気になるな……ナイ君、地割れに落ちた後に牙竜の姿は見ていないのかい?」
「うん、大穴からはダイダラボッチしか出てこなかったよ」
「という事は牙竜はダイダラボッチと遭遇した事になる。その後に牙竜の姿を確認した者はいないはずだから……既にダイダラボッチに殺されている可能性もあるな」
「確かにその可能性はあるね、いくら牙竜といってもあんなデカブツが相手だと勝ち目はないからね」
ダイダラボッチが封じられている地の底に牙竜が落下し、その後に姿を見せなくなったという事はダイダラボッチが牙竜を始末した可能性は十分にある。しかし、アルトが気になったのは牙竜が落下した後に取った行動だった。
「……これはあくまでも僕の予想に過ぎないが、もしかしたらダイダラボッチが復活した原因は牙竜のせいだと思う」
「牙竜が!?」
「ど、どうして牙竜のせいなの!?」
「落ち着いて聞いてくれ……これはあくまでも僕の予測だ。だが、僕はこの予測が間違っているとは思えない」
アルトの推理では地割れの原因は地中に封じ込められたダイダラボッチのせいであり、地割れに関しては偶然か故意かは不明だが、牙竜はダイダラボッチが封じられている地の底まで落下した。
大分前にアルトはナイの旋斧を調べた時、旋斧は魔力を吸収する時は一定の量しか吸い込めない事が判明した。一度に吸収できる魔力には限りがあり、巨大剣も旋斧と同じ魔剣ならば仮に牙竜が巨大剣に触れていた場合、巨大剣はダイダラボッチと牙竜の魔力を同時に吸い上げようとする。この時に牙竜から吸い上げた魔力の分だけダイダラボッチの負担が減り、その瞬間を逃さずにダイダラボッチは一時的に復活を果たす。
「僕の仮説は牙竜が落下した時、この剣の真上に落ちたんだ。巨大剣の上に落ちた牙竜は魔力を吸い上げられ、それによって巨大剣はダイダラボッチに吸い上げるはずの魔力を減らしてしまった。そのせいでダイダラボッチは自分の身体を動かせるようになって剣を抜いたんだ」
「そ、そんな事があり得るのかい?」
「有り得る、というよりもそうとしか考えられない。牙竜は竜種の中でも生命力に満ち溢れた存在だ。普通の生物なら死ぬような傷でも生き抜く事もあると言われている……この仮説が正しければダイダラボッチが復活した理由と、牙竜が姿を見せなくなった原因の辻褄が合う」
ダイダラボッチが復活したのは牙竜のせいであり、そして肝心の牙竜はダイダラボッチが封印から解かれた時に殺された。アルトの仮説を聞かされた者達は彼の推理を否定する証拠がなく、逆に言えば彼の仮説が正しいという証拠もないが、状況的に考えてもアルトの推理が間違っているとは思えなかった。
昨日のダイダラボッチの様子を見る限り、ダイダラボッチはこの巨大剣を破壊しようと考えているのは間違いない。だが、どうしてダイダラボッチがこの巨大剣に拘り続けるのかアルトは気になった。
(この巨大剣をダイダラボッチが憎んでいるのは間違いない。しかし、それでも破壊する事に拘るのに他に理由があるんだろうか?)
ダイダラボッチが巨大剣を酷く憎んでいたとしても、破壊に失敗した途端に地面に突き刺して去っていった事にアルトは違和感を抱く。もしかしたらダイダラボッチは自分を封じていた巨大剣を未だに恐れているのかもしれない。
「これはあくまでも僕の予測に過ぎないが、ダイダラボッチが一番恐れている事はこの剣に再び封印される事じゃないか?」
「封印?そんな事ができるんですか?」
「この巨大剣はダイダラボッチの身体に元々突き刺さっていた物だ。今まで何百年も魔力を吸い上げていたお陰でダイダラボッチは地中に眠らざるを得なかったんだ」
「それは……十分に有り得るね」
魔力切れを引き起こすと大抵の生物はまともに動く事もできず、それはダイダラボッチであろうと例外ではない。魔力切れを引き起こせばダイダラボッチも自力では殆ど動けず、だからこそ今まで地中深くに封じられていたと思われた。
「待ってください!!それならこの巨大剣をもう一度ダイダラボッチに突き刺せばもう一度封印できるんじゃないですか!?」
「その可能性はある。実際、この魔剣は効力を失っていない。その証拠に魔剣の周囲の植物が枯れている所をみるに今も尚、この魔剣は周囲から魔力を吸収している」
「という事は……こいつを突き刺せばまたダイダラボッチは魔力を吸い上げられて動けなくなるという事かい!?」
アルトの言葉に全員が驚愕し、遂にダイダラボッチを封印する方法が判明した。しかし、ここでミイナが素朴な疑問を口にする。
「……でも、それならどうしてダイダラボッチは復活したの?ダイダラボッチは自力でこの馬鹿でかい剣を抜いて復活したんじゃないの?」
「そう、そこが一番気になる事だ」
ダイダラボッチが復活した時、その光景を見ていた者達はダイダラボッチが大穴から抜け出す時には既に背中に突き刺さっていたはずの巨大剣を手にしていたアルトは報告している。
どうして巨大剣で封じられているはずのダイダラボッチが復活したのか理由が分からず、その原因を知る可能性があるとすれば現場に存在したナイしかいない。そろそろ彼も起きる頃合いだと判断し、一旦アルトは引き返す事にした――
――アルト達が飛行船の医療室に戻ると既にナイは意識を取り戻しており、怪我の方も完治していた。イリアの薬のお陰で彼の身体も回復し、今日の所はゆっくりと身体を休めれば、明日には普通に動けるはずだとイリアは告げる。
「ナイさんの回復力は凄いですね、これなら明日には普通に動けるようになりますよ」
「そうか、それは良かった」
「ごめん、皆……色々と迷惑をかけて」
「謝らなくていいよ~」
「うん、無事で良かった……でも、これからはもう一人で無茶をしたら駄目だよ?」
「ぷるんっ(心配させたらあかんで)」
ナイの傍にはモモとリーナの姿もあり、プルミンもイリアの頭の上に居た。まずはナイが無事である事にアルト達は安堵するが、ダイダラボッチが復活した時に何が起きたのかを確認するため、アルトは率直に尋ねる。
「ナイ君、病み上がりの所を悪いんだが何が起きたのか詳しく話してくれるかい?アンがどうなったのか、ダイダラボッチが復活した時の様子を教えてほしい」
「うん、分かったよ」
アルトの質問にナイは頷き、彼は昨日起きた出来事を全て語る。唐突に発生し地割れに牙竜が巻き込まれた事、そしてアンは自分と共にダイダラボッチの攻撃を受けた事を話す。
反魔の盾を所有していたナイは奇跡的に地面の中に埋もれても生きていたが、アンの場合は彼のような強靭な肉体を持ち合わせておらず、ダイダラボッチに踏み潰されたとしか考えられない。
「なるほど、そんな事が起きていたのか……」
「じゃあ、アンの奴はもう死んじまったのかい……まあ、あんな化物に踏み潰されたら死体も跡形もなく吹き飛んだんだろうね」
「牙竜は地割れに落ちたまま消えちゃったんだ……その地割れもダイダラボッチが引き起こしたのかな?」
ナイから話を聞いた者達は戦闘の際中に発生した地震が偶然なのか、あるいはダイダラボッチが引き起こしたのか、そしてアンの従えていた牙竜はどうなったのか気になって話し合いを行う。
最初の問題は地震が自然に発生したのかどうかであり、この答えはアンの反応から察するにダイダラボッチの仕業である可能性が高いとナイは告げる。
「地震が起きる前にアンの様子がおかしかった。地中にいるダイダラボッチの力が強まったみたいな事を言っていたし、きっとダイダラボッチのせいで地震が起きたんだと思う」
「なら、ナイさんが戦っている時にはダイダラボッチは既に復活してたんですかね?」
「いや、それは分からない。巨大剣で魔力を奪われていると言っても、魔力切れの状態でも身体をわずかに動かす事はできるはずだ」
「それぐらいはまあ、できるだろうね……」
魔力が完全に切れたとしても意識を失うまでは肉体を少しだけ動かす事はできる。ダイダラボッチの巨体ならば地中の中でもわずかに身動きしただけで地震のような振動が起きてもおかしくはない。
それにアルトが気になったのは地震が発生した際、地割れが牙竜を飲み込んだ事だった。牙竜が落ちた先はダイダラボッチが封じられている場所で間違いなく、その後に牙竜の姿は目撃されていない。
「牙竜が地割れに落ちた事が気になるな……ナイ君、地割れに落ちた後に牙竜の姿は見ていないのかい?」
「うん、大穴からはダイダラボッチしか出てこなかったよ」
「という事は牙竜はダイダラボッチと遭遇した事になる。その後に牙竜の姿を確認した者はいないはずだから……既にダイダラボッチに殺されている可能性もあるな」
「確かにその可能性はあるね、いくら牙竜といってもあんなデカブツが相手だと勝ち目はないからね」
ダイダラボッチが封じられている地の底に牙竜が落下し、その後に姿を見せなくなったという事はダイダラボッチが牙竜を始末した可能性は十分にある。しかし、アルトが気になったのは牙竜が落下した後に取った行動だった。
「……これはあくまでも僕の予想に過ぎないが、もしかしたらダイダラボッチが復活した原因は牙竜のせいだと思う」
「牙竜が!?」
「ど、どうして牙竜のせいなの!?」
「落ち着いて聞いてくれ……これはあくまでも僕の予測だ。だが、僕はこの予測が間違っているとは思えない」
アルトの推理では地割れの原因は地中に封じ込められたダイダラボッチのせいであり、地割れに関しては偶然か故意かは不明だが、牙竜はダイダラボッチが封じられている地の底まで落下した。
大分前にアルトはナイの旋斧を調べた時、旋斧は魔力を吸収する時は一定の量しか吸い込めない事が判明した。一度に吸収できる魔力には限りがあり、巨大剣も旋斧と同じ魔剣ならば仮に牙竜が巨大剣に触れていた場合、巨大剣はダイダラボッチと牙竜の魔力を同時に吸い上げようとする。この時に牙竜から吸い上げた魔力の分だけダイダラボッチの負担が減り、その瞬間を逃さずにダイダラボッチは一時的に復活を果たす。
「僕の仮説は牙竜が落下した時、この剣の真上に落ちたんだ。巨大剣の上に落ちた牙竜は魔力を吸い上げられ、それによって巨大剣はダイダラボッチに吸い上げるはずの魔力を減らしてしまった。そのせいでダイダラボッチは自分の身体を動かせるようになって剣を抜いたんだ」
「そ、そんな事があり得るのかい?」
「有り得る、というよりもそうとしか考えられない。牙竜は竜種の中でも生命力に満ち溢れた存在だ。普通の生物なら死ぬような傷でも生き抜く事もあると言われている……この仮説が正しければダイダラボッチが復活した理由と、牙竜が姿を見せなくなった原因の辻褄が合う」
ダイダラボッチが復活したのは牙竜のせいであり、そして肝心の牙竜はダイダラボッチが封印から解かれた時に殺された。アルトの仮説を聞かされた者達は彼の推理を否定する証拠がなく、逆に言えば彼の仮説が正しいという証拠もないが、状況的に考えてもアルトの推理が間違っているとは思えなかった。
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