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廃墟編
人間発見
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――教会に引き返し、朝食を終えたレアは装備を確認すると、本格的にこの街からの脱出を考える。色々と考えた末、このままゴブリンが巣食う街に何日も過ごすのは危険であり、廃墟を抜け出して人間の住む街を向かう事にした。
「さてと……いい加減にこの街とはおさらばするか」
文字変換の能力があればこの教会内で生活するには問題ないが、流石に夜を迎える度に寝ている間に魔物に襲われる事を心配するような生活を送りたくはない。まずは移動する前に用意する物は食料と水、それに乗り物も必要不可欠だろう。文字変換の能力を使用すれば大抵の物は作り出す事は可能であり、場合によっては車やバイクのような乗り物を作り出す必要がある。
「スクーターぐらいなら練習すれば運転出来るようになるかも知れないし、今日の内に出発しよう」
この教会も絶対安全とは言い切れず、人間が存在した痕跡があるにも関わらずにこの廃墟の街でレアは他に人間と遭遇していない。このまま残っても人間と遭遇出来る可能性は低く、レアは腰に差している日本刀に視線を向け、折角作り出した武器なので装備する事にした。
「こっちの武器も練習しないとな。はあっ……本当に使えるのかな」
他の生物の命を奪う行為に今更気後れするわけではないが、刃物で他の生物(人間のような)を切り裂く経験などあるはずがなく、試しに拳銃を置いて日本刀を引き抜く。
「ちょっと試し切りしてみるか」
日本刀を作り出す際にレアは「疾風剣」の戦技も覚えており、名前の通りに凄まじい速度で相手を斬り付ける剣技だが、どうやら熟練度を高める度に更に攻撃速度と回数が増すらしい。装備を整えたレアは教会を抜け出し、途中で拳銃の試し撃ちに利用した銅像を見かけ、日本刀に視線を向ける。
「もう原型が留めていないけど、これで試し切りするか。折れないといいけど……」
日本刀を構えた状態で銅像に視線を向け、レアは刀を構えて戦技を発動させる。刀が折れる心配はあるが、その時は新しい日本刀を作り出せばいいだけの話であり、レアは日本刀を構えたまま戦技を発動させた。
「疾風剣!!」
次の瞬間、彼の手元が残像を生み出す速度で繰り出され、銅像の頭部が切り裂かれる。その驚くべき切れ味にレアは愕然とし、日本刀の刃に視線を向けると刃毀れ一つ起こしていない事に気付く。
「な、なんだこの切れ味っ!?あ、そういえば説明文に「頑丈」と改竄してたんだっけ……でも銅像を切り裂くなんてあり得ないだろ。これも腕力の能力値のお陰かな……?」
レア自身の能力値が大きく向上しているという理由もあるだろうが、恐るべき切れ味を誇る日本刀に彼は冷や汗を流し、同時に銅像を切り裂く程の力を持つ自分自身にレアは恐怖を感じた。それでも近付いてきた相手には日本刀は有効であり、接近戦の対策も整えた。
「武器はこれだけあれば十分だな、食料も別にわざわざ用意する必要ないか。必要な時に作ればいいだけだし、乗り物は街の外に出てから作り出すか」
わざわざ移動の際に余計な荷物を用意する必要はなく、食事の際に拳銃の弾丸を文字変換の能力で食料に換えれば問題ない。
「自動車は運転出来る自信ないし、バイクもちょっと危険そうだな。スクーターぐらいなら大丈夫かな……まあ、別に自転車でもいいか」
どのような乗物を作り出すべきかと考えながら移動していると、レアの耳元に悲鳴が響く。。
――ぎゃあああああっ!!
間違いなく、人間の男性の声がレアの背後から響き渡り、驚いて彼は振り返るとこちらに向けて近づく人影を発見した。彼の元に駆け出してきたのは青色の鎧を装備した青年であり、背後にはゴブリンの大群が存在した。何が起きているのに理解するのに一瞬だけ時間が掛かったが、レアは彼が襲われている事に気付いて拳銃を握りしめる。
「逃げろっ!!」
「た、助け……うわあああっ!!」
「ギギィッ!!」
「ギィイッ!!」
レアも男性に向けて駆け出すが、相手は彼の姿を見た瞬間に足をもつれて倒れてしまい、大量のゴブリンが群がる。ゴブリンは押し倒した男性の身体に両手で握りしめた石を叩きつけ、中には喉元に噛み付く個体も存在する。咄嗟にレアは拳銃を構えるが、ゴブリンだけを的確に撃ち抜く事は出来ず、血飛沫が舞う。
「あがぁああああっ……!?」
遂には断末魔の悲鳴が廃墟に響き渡り、急所を噛みちぎられた男性が地面に倒れ込む。その様子を確認したレアは咄嗟に視線を反らし、同時にゴブリンの大群は死骸に喰らい付く。
「くそっ……いい加減に離れろっ!!」
「イギャッ!?」
「ギィッ!?」
男性の死体に喰らい付くゴブリンにレアは拳銃を発砲し、次々とゴブリンを撃ち抜く。男性が生きていれば弾丸を撃つのに躊躇したが、既に死亡した事は間違いなく、彼はゴブリンに接近して日本刀を引き抜く。
「離れろっ!!」
「ギャアッ!?」
「アギィッ!?」
腕力が「15000」も存在する彼の攻撃は凄まじく、剣の素人にも関わらずに繰り出される日本刀の刃は武道の達人が扱うようにゴブリンの肉体を容易く切り裂く。予想外の力を持つ人間の登場にゴブリンの大群は慌てて逃げ出そうとするが、脚力も「15000」を超えるレアから逃げ延びられる個体は存在しなかった。
「逃がすかっ!!」
「ギィイッ!?」
最後のゴブリンの背中に刃を突き刺し、確実に心臓を貫く。全てのゴブリンを討伐した後は日本刀を引き抜き、こびり付いた血の跡に眉を顰め、彼は刃を一度振り払ってから鞘に戻す。
「助けられなかった……くそっ!!」
死亡してしまった男性の元に戻り、悔し気にレアは拳を地面に叩きつける。レアがもっと早く行動に移っていれば助けられた可能性があったが、悔やんだところで仕方がないのでレアは死体に向けて両手を合わせる。だが、死亡した男性には悪いが彼を埋葬する時間はなく、放っておいたら死肉や血の臭いを嗅ぎつけて他のゴブリンの大群が現れる可能性もあるため、先に急ぐ事にした。
「せめて瞼だけでも……何だ?」
見開かれた両目に手を伸ばし、男性の瞼を閉じさせてようとしたレアは彼の死体に違和感を覚え、鎧を着こんでいる男性の右足首に明らかに「火傷」と思われる傷跡が存在した。ゴブリンに焼かれたとは考えにくく、しかも火傷は未だに熱を持っている事から少し前に負った傷だと考えられる。
「そういえば……どうしてこんな街に人間がいるんだ?」
男性は鎧を着こんではいるが、レアが召喚された「バルトロス帝国」の兵士や将軍が着用していた鎧とはデザインが異なり、こちらの男性の鎧は「青銅」で構成されていた。武器らしき物は特に身に付けておらず、ゴブリンに奪われた時に落としてしまったのかは分からないが、少なくともこのような廃墟に入り込んだ人間が武器を最初から所持していないとは考えられない。
「あ、これ財布か?」
腰に取り付けられた巾着袋を発見し、中身を確認するとレアが教会で発見した「銅貨」が入っており、他にも鉄製の硬貨も入っていた。こちらの方も見た事もない人物の顔が刻まれており、鉄と言っても銅貨よりも厚さが小さくて軽く、大きさも現実世界の「1円玉」を想像させる。
「……置いて行こう」
普通に考えればここに放置した所でゴブリンから奪われるか、あるいは捨てられるだけだろうが、レアは死人の荷物を漁る事が出来ずに男性の死体に巾着袋を返す。甘い考えかも知れないが、少なくとも銅貨以外の通貨を発見出来ただけでも良しと判断し、彼はその場を離れようとする。
「もしかしたら他の人間も居るかも知れない。探してみよう」
この男性が単独で廃墟に入り込んだとは限らず、他の人間の捜索を行う。今更ゴブリンが現れた所で彼の敵ではなく、拳銃を構えながら急ぎ足で移動を行う。
「ん、これは……ゴブリンか?」
移動の最中、レアはゴブリンの死骸を発見する。既に死肉は喰らいつくされた後であり、ほぼ骸骨と化していた。
「あいつら同族でも容赦なく食うのか?一応、供養代わりに燃やしてやるか……」
冷静に考えれば先ほどの男性も燃やして置くべきだったかと考えながらも、レアは掌を構えて火球の魔法で燃やそうとした時、遠方の方から再び人間の悲鳴が聞こえてきた。
「さてと……いい加減にこの街とはおさらばするか」
文字変換の能力があればこの教会内で生活するには問題ないが、流石に夜を迎える度に寝ている間に魔物に襲われる事を心配するような生活を送りたくはない。まずは移動する前に用意する物は食料と水、それに乗り物も必要不可欠だろう。文字変換の能力を使用すれば大抵の物は作り出す事は可能であり、場合によっては車やバイクのような乗り物を作り出す必要がある。
「スクーターぐらいなら練習すれば運転出来るようになるかも知れないし、今日の内に出発しよう」
この教会も絶対安全とは言い切れず、人間が存在した痕跡があるにも関わらずにこの廃墟の街でレアは他に人間と遭遇していない。このまま残っても人間と遭遇出来る可能性は低く、レアは腰に差している日本刀に視線を向け、折角作り出した武器なので装備する事にした。
「こっちの武器も練習しないとな。はあっ……本当に使えるのかな」
他の生物の命を奪う行為に今更気後れするわけではないが、刃物で他の生物(人間のような)を切り裂く経験などあるはずがなく、試しに拳銃を置いて日本刀を引き抜く。
「ちょっと試し切りしてみるか」
日本刀を作り出す際にレアは「疾風剣」の戦技も覚えており、名前の通りに凄まじい速度で相手を斬り付ける剣技だが、どうやら熟練度を高める度に更に攻撃速度と回数が増すらしい。装備を整えたレアは教会を抜け出し、途中で拳銃の試し撃ちに利用した銅像を見かけ、日本刀に視線を向ける。
「もう原型が留めていないけど、これで試し切りするか。折れないといいけど……」
日本刀を構えた状態で銅像に視線を向け、レアは刀を構えて戦技を発動させる。刀が折れる心配はあるが、その時は新しい日本刀を作り出せばいいだけの話であり、レアは日本刀を構えたまま戦技を発動させた。
「疾風剣!!」
次の瞬間、彼の手元が残像を生み出す速度で繰り出され、銅像の頭部が切り裂かれる。その驚くべき切れ味にレアは愕然とし、日本刀の刃に視線を向けると刃毀れ一つ起こしていない事に気付く。
「な、なんだこの切れ味っ!?あ、そういえば説明文に「頑丈」と改竄してたんだっけ……でも銅像を切り裂くなんてあり得ないだろ。これも腕力の能力値のお陰かな……?」
レア自身の能力値が大きく向上しているという理由もあるだろうが、恐るべき切れ味を誇る日本刀に彼は冷や汗を流し、同時に銅像を切り裂く程の力を持つ自分自身にレアは恐怖を感じた。それでも近付いてきた相手には日本刀は有効であり、接近戦の対策も整えた。
「武器はこれだけあれば十分だな、食料も別にわざわざ用意する必要ないか。必要な時に作ればいいだけだし、乗り物は街の外に出てから作り出すか」
わざわざ移動の際に余計な荷物を用意する必要はなく、食事の際に拳銃の弾丸を文字変換の能力で食料に換えれば問題ない。
「自動車は運転出来る自信ないし、バイクもちょっと危険そうだな。スクーターぐらいなら大丈夫かな……まあ、別に自転車でもいいか」
どのような乗物を作り出すべきかと考えながら移動していると、レアの耳元に悲鳴が響く。。
――ぎゃあああああっ!!
間違いなく、人間の男性の声がレアの背後から響き渡り、驚いて彼は振り返るとこちらに向けて近づく人影を発見した。彼の元に駆け出してきたのは青色の鎧を装備した青年であり、背後にはゴブリンの大群が存在した。何が起きているのに理解するのに一瞬だけ時間が掛かったが、レアは彼が襲われている事に気付いて拳銃を握りしめる。
「逃げろっ!!」
「た、助け……うわあああっ!!」
「ギギィッ!!」
「ギィイッ!!」
レアも男性に向けて駆け出すが、相手は彼の姿を見た瞬間に足をもつれて倒れてしまい、大量のゴブリンが群がる。ゴブリンは押し倒した男性の身体に両手で握りしめた石を叩きつけ、中には喉元に噛み付く個体も存在する。咄嗟にレアは拳銃を構えるが、ゴブリンだけを的確に撃ち抜く事は出来ず、血飛沫が舞う。
「あがぁああああっ……!?」
遂には断末魔の悲鳴が廃墟に響き渡り、急所を噛みちぎられた男性が地面に倒れ込む。その様子を確認したレアは咄嗟に視線を反らし、同時にゴブリンの大群は死骸に喰らい付く。
「くそっ……いい加減に離れろっ!!」
「イギャッ!?」
「ギィッ!?」
男性の死体に喰らい付くゴブリンにレアは拳銃を発砲し、次々とゴブリンを撃ち抜く。男性が生きていれば弾丸を撃つのに躊躇したが、既に死亡した事は間違いなく、彼はゴブリンに接近して日本刀を引き抜く。
「離れろっ!!」
「ギャアッ!?」
「アギィッ!?」
腕力が「15000」も存在する彼の攻撃は凄まじく、剣の素人にも関わらずに繰り出される日本刀の刃は武道の達人が扱うようにゴブリンの肉体を容易く切り裂く。予想外の力を持つ人間の登場にゴブリンの大群は慌てて逃げ出そうとするが、脚力も「15000」を超えるレアから逃げ延びられる個体は存在しなかった。
「逃がすかっ!!」
「ギィイッ!?」
最後のゴブリンの背中に刃を突き刺し、確実に心臓を貫く。全てのゴブリンを討伐した後は日本刀を引き抜き、こびり付いた血の跡に眉を顰め、彼は刃を一度振り払ってから鞘に戻す。
「助けられなかった……くそっ!!」
死亡してしまった男性の元に戻り、悔し気にレアは拳を地面に叩きつける。レアがもっと早く行動に移っていれば助けられた可能性があったが、悔やんだところで仕方がないのでレアは死体に向けて両手を合わせる。だが、死亡した男性には悪いが彼を埋葬する時間はなく、放っておいたら死肉や血の臭いを嗅ぎつけて他のゴブリンの大群が現れる可能性もあるため、先に急ぐ事にした。
「せめて瞼だけでも……何だ?」
見開かれた両目に手を伸ばし、男性の瞼を閉じさせてようとしたレアは彼の死体に違和感を覚え、鎧を着こんでいる男性の右足首に明らかに「火傷」と思われる傷跡が存在した。ゴブリンに焼かれたとは考えにくく、しかも火傷は未だに熱を持っている事から少し前に負った傷だと考えられる。
「そういえば……どうしてこんな街に人間がいるんだ?」
男性は鎧を着こんではいるが、レアが召喚された「バルトロス帝国」の兵士や将軍が着用していた鎧とはデザインが異なり、こちらの男性の鎧は「青銅」で構成されていた。武器らしき物は特に身に付けておらず、ゴブリンに奪われた時に落としてしまったのかは分からないが、少なくともこのような廃墟に入り込んだ人間が武器を最初から所持していないとは考えられない。
「あ、これ財布か?」
腰に取り付けられた巾着袋を発見し、中身を確認するとレアが教会で発見した「銅貨」が入っており、他にも鉄製の硬貨も入っていた。こちらの方も見た事もない人物の顔が刻まれており、鉄と言っても銅貨よりも厚さが小さくて軽く、大きさも現実世界の「1円玉」を想像させる。
「……置いて行こう」
普通に考えればここに放置した所でゴブリンから奪われるか、あるいは捨てられるだけだろうが、レアは死人の荷物を漁る事が出来ずに男性の死体に巾着袋を返す。甘い考えかも知れないが、少なくとも銅貨以外の通貨を発見出来ただけでも良しと判断し、彼はその場を離れようとする。
「もしかしたら他の人間も居るかも知れない。探してみよう」
この男性が単独で廃墟に入り込んだとは限らず、他の人間の捜索を行う。今更ゴブリンが現れた所で彼の敵ではなく、拳銃を構えながら急ぎ足で移動を行う。
「ん、これは……ゴブリンか?」
移動の最中、レアはゴブリンの死骸を発見する。既に死肉は喰らいつくされた後であり、ほぼ骸骨と化していた。
「あいつら同族でも容赦なく食うのか?一応、供養代わりに燃やしてやるか……」
冷静に考えれば先ほどの男性も燃やして置くべきだったかと考えながらも、レアは掌を構えて火球の魔法で燃やそうとした時、遠方の方から再び人間の悲鳴が聞こえてきた。
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