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16章 女神の森に喫茶店を建てよう。

194.あくる日、朝食の席で。

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アルファポリス様のサイトに出荷予定日が掲載されたようです。
2月27日となります。
折角ですので、前日と当日くらいに何かアップできたらなー……などと考えております。

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「はあ? 創生女神と夢で会った?」
アレックスさんが、驚きに目を見開きまじまじと私を見る。

それは朝食の席の事だった。
今日はダイニングテーブルに二人で座り、籠盛りのパンの実と野生の鶏を使ったチキンサラダ、人参と大根の酢漬けに夕飯の残りのスープ……という、簡単な朝ご飯を食べていた私は、アレックスさんの大きな声にびっくりしてフォークを動かす手を止める。

「本当か? ああいや、こんな事でお前は嘘を吐かないよな……さすがは女神の薬師というところか」
「そんな、大げさな」
私はアレックスさんの言葉に苦笑する。
それにしても、いきなりの大声はやめて欲しいな、驚いちゃうよ。スープ飲んでた時じゃなくて良かったと思いつつ、殆ど食べ終わった木の皿の上にフォークを置く。
足元では、のんびりと角切りにした獣のお肉を食べるぽちが居て、なあにと言うようにこちらを見上げてくる。
それを撫でながら、続くアレックスさんの言葉に耳を傾けた。

「そりゃあ、大げさな事だろうよ。この女神信仰の廃れた国で、女神が夢に現れるなんて……殆ど奇跡に近い事だぞ」
額を押さえる彼を見て、あれは凄い事だったんだとやっと認識する。
何でもこの国では、細々続いてる大きな街などにある教会も、ボランティアみたいな人が時折掃除に来たり捧げものをするぐらいの廃れぶりで、本当に女神信仰は慣用句に残るぐらいの、昔の話のように思われてるんだって。
うーん、何だかそれは、悲しいね。

「そんなに信仰心が薄れてるんだ……残念だね。女神様には喫茶店の許可も頂いて、森の管理方法も教えて貰ったし
、せめて私だけでも本気でお祈りしないとなぁ……」

そう呟くと、アレックスさんはガタッと音を立てて椅子から立ち上がると、怖いぐらいに真剣な顔をして言った。
「待て、今何て言った?」
「喫茶店の許可を貰った……?」
私は驚きに肩を竦めながらも、質問の意図が分からず首を傾げてそう返す。
「それもそうだが、その次だ」
「森の管理方法を教えて貰った?」
「そう、それだ!」
えええ、そんな前のめりになって言う事かなと思いつつ、私は夢での流れを思い出しながら、彼に伝える。
「ええっと、確か、こんな感じで……」

思い出せる限りの内容を順に話すと、彼は納得するように頷いた。
人に順序立てて話そうと努力することで、曖昧だった記憶に整理が付くみたいだ。これはこれで良いかも知れない。
そして、話せば話す程、何だかすごい事だったんじゃない? という実感も湧いて来て……。
うーん、この夢の内容を、忘れないうちにスマホのメモ帳アプリにでも書き出しておこうかなぁ。

なんて考えてると、アレックスさんは頻りに頷きながら、

「人避けの魔法……か。そりゃあ、確かに今では廃れたものだな」
「そうなの?」
「ああ。昔は厳重管理の宝物庫や、危険な魔法道具の周りに不用意に人が近づかないよう使われていた魔法らしいが、そもそも、そこまで厳重に管理するような宝物も年を経るごとに失われてしまったからなぁ」
「なるほど……」
文化財の遺失とか盗難、あるいは、後継者問題での技術の喪失、とかかな? どこの国でも、大事なもの程失われていくよねぇ。
ふむふむと頷いていると、私が理解したのを確認して、アレックスさんは話を続けた。

「それに、だ。今となっては、古代魔法時代と比べて格段に人が生き辛くなった。魔力を持った人間が減ってモンスターとの戦いも厳しくなり、それによって生活圏が縮小し、人口も減った。こうなれば、誰もが協力し肩を寄せ合って生きていかなきゃいけなくなる」
「そうですね。喧嘩してる場合じゃない」
「そうだ。だが、人の力が減ったって事は、モンスターの餌場にもなり得る。実際、オレの爺さんくらいの世代からは魔物暴走スタンピードの起こる頻度も増えてるんだ。それによって、幾つかの村が消えていった」
「それは……死活問題ですね」
「ああ。そうしてモンスターとの抗争が増えた昨今は、人避けより動物避けの魔法の方が重宝される。人避けは、だから昔の魔法なんだな。……まさかあの魔法が、この森に掛かっていたとは知らなかった」
彼は全く盲点だったと言って、再び椅子に座った。

成る程、確かに。
人が強大な魔力を持っていたという古代と違い、現代では魔力を持つ人すらも希少となっている。
そんな時代だ。人々はより協力しながら片寄せあって暮らすのが一般的なのだろう。

人避けの魔法。
アレックスさん曰く、それは古い魔法の一つで、今では後ろ暗い事をするような裏の人々が限定的に使う魔法になっているとのこと。
人払いしたい人なんて、まあ限定されるしね。
ギルドの会議室に掛かってる魔法? あれは防音だからそれとは違うらしいよ。

そんな、少なからずアレックスさんが衝撃を受け、私がまた一つこの世界の常識を学べた日。
覚えたばかりの森の魔力を感じる同調法を試しながら、私はケーキの試作なんかをしてのんびり過ごしたのでした。
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