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五章 毎日、毎日、貴方を好きになる。
十六話 土曜日は彼と語り合う(3)
しおりを挟むそこで白銀は、常の整い切った作り笑いをやめていっそきらきらしいほどの笑みへと変えた。
「ところで、伊都さん。この話はどこまで続けるつもりですか?」
「はい?」
美麗な笑みにつられ間抜けに答えてしまった伊都に、彼は優雅に手を差し伸べて続ける。
「折角のデートなのに、無粋じゃないですか」
切れ長の瞳を眼鏡の奥で細めて、艶っぽく彼は言う。
「デート……」
伸べられた手におのが手を重ねて、妙に甘酸っぱい単語に頬を染め、夢見心地で伊都は小さく呟いた。
確かに今は、休日で。二人ともに私服で、そして今は外出中だ。いわば、お外デート。
白銀さんと、デート。
何て心躍るシチュエーションであろうか。
「はい、デートです。貴女は私が好きで、私は貴女が好きなのですから、二人で外出している今はそういう事です。さあ、席を立って。次は何処に行きましょうか?」
白銀は最近容赦がない。
毎日の朝の挨拶に始まって、夜毎の夢で囁いてくる。
もともとマメなタイプの人ではあったが、ただの隣人では済ませずに距離を詰めてくる辺り、ジルバーこそが本性だと言うだけあって強引さすら感じるのだが、それすら彼なら嫌ではない。
そうして彼は、早くこの手に落ちろと、彼は伊都を誘うのだ。
恋愛ごとには慣れない、初心者な伊都には彼の誘惑は恐ろしい程に効く。
だから、ぽうっとしてしまって。
「えっと、次は白銀さんの……おすすめの場所に行きましょう」
などと、真面目な話から脱線したまま答える伊都である。
「ええ。では新しいアクセサリーショップが出来たようですので、そこに向かいましょうか。手頃な価格のジュエリーが並んでるそうですよ。駅のすぐ裏の通りにあるそうです」
「そうなんですか。編み物の邪魔になるからアクセサリーは余り買いませんが、宝石を見るのは好きなんです。ふふ、楽しみです」
白銀の誘惑にすっかり乗せられてしまい、伊都は難しい事を忘れ笑顔を浮かべたのだった。
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