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七章 間章 目を覚ませば、そこは見慣れた。
十一話 間章 お散歩は続くよ。(2)
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軽く息が上がってきて、肩下げ鞄から布を取り出し汗を拭った伊都は、保護者役で走り回っている若い狼を捕まえて小さな声で囁く。
「あの、お昼までに、何処かで、休憩出来る場所を……見つけないと、いけない、かも……知れないわ、ね」
肩で息をしつつの途切れ途切れの言葉。全身これ疲労、という伊都の様子を見て、若い狼は納得いったといったようにうんうんと首を頷かせ。
「……ああ、あんた、全然動けないからなぁ。まあそんなもんだろ」
さらりと若い狼に酷評された伊都は、静かに動揺し、汗拭きの布をぎゅっと握りしめる。
彼の指摘は、全くもって正しい。ぐっさり刺さった言葉に勝手に傷付いても、それは体を動かさない自分自身の自業自得で、彼のせいではないのだ。
だから伊都は同様を表面に出さず、ただ「世話を掛けてごめんなさいね」 と、謝罪だけを口にした。
「いや、連れて来たのは俺だし、どっちかと言うと管理不足の俺の責任だろ。群れのペース管理も、俺の仕事だ」
謝罪はいらんと、フンと鼻を鳴らし。
「疲れたんなら先に休み入れとくか? ガキらも安全な場所に魔女を案内するって言えば、喜んで行くだろうし」
その世話焼き気質は、誰に似たものか。
口が悪く意地悪なくせに、どうしてこういう時だけは頼りになるんだろうかと、伊都は若い狼をまじまじと見つめてしまう。
(誰にって、それはもう、ジルバーに決まっているけれど)
ここに居ない彼との共通点を見つけて、伊都はくすりと小さく笑う。
「おいっ、ガキども。魔女が疲れたって言ってるから、休める所行くぞ。大人しく案内しろ」
わんっと若い狼がひと鳴きすると、わらわらと集まってきた仔狼らが口々に言う。
「あんなーい? どこ?」
「魔女のこと、つれてくのー?」
小首を傾げて、若い狼に聞けば、「そうだ」 と端的な言葉が返るので。
わんわん。
「じゃあねー、僕のお気に入りの場所にいこー」
きゃんきゃん。
「俺の秘密の場所を教えてもいいぜ」
ばうわう。
「えー、ぼくのお気に入りの方が休めるよー」
きゃんきゃんと、総勢十五の仔らが騒ぐので、どうにも収集がつかない。
「あー……うん。お前らがやる気があるのはよく分かったが、全然わからん。だから俺のいいと思う所に連れて行く事にする」
若い狼は、仔狼ら落ち着かせるのを諦めて、そう言い切った。
「えー」
「なになに」
「それずるーい」
……夢の世界の二日目は、皆が伊都の……魔女の歓心を買う為に非常に盛り上がっているようだ。
肝心の伊都をかやの外に置いて、ではあるが。
「あの、お昼までに、何処かで、休憩出来る場所を……見つけないと、いけない、かも……知れないわ、ね」
肩で息をしつつの途切れ途切れの言葉。全身これ疲労、という伊都の様子を見て、若い狼は納得いったといったようにうんうんと首を頷かせ。
「……ああ、あんた、全然動けないからなぁ。まあそんなもんだろ」
さらりと若い狼に酷評された伊都は、静かに動揺し、汗拭きの布をぎゅっと握りしめる。
彼の指摘は、全くもって正しい。ぐっさり刺さった言葉に勝手に傷付いても、それは体を動かさない自分自身の自業自得で、彼のせいではないのだ。
だから伊都は同様を表面に出さず、ただ「世話を掛けてごめんなさいね」 と、謝罪だけを口にした。
「いや、連れて来たのは俺だし、どっちかと言うと管理不足の俺の責任だろ。群れのペース管理も、俺の仕事だ」
謝罪はいらんと、フンと鼻を鳴らし。
「疲れたんなら先に休み入れとくか? ガキらも安全な場所に魔女を案内するって言えば、喜んで行くだろうし」
その世話焼き気質は、誰に似たものか。
口が悪く意地悪なくせに、どうしてこういう時だけは頼りになるんだろうかと、伊都は若い狼をまじまじと見つめてしまう。
(誰にって、それはもう、ジルバーに決まっているけれど)
ここに居ない彼との共通点を見つけて、伊都はくすりと小さく笑う。
「おいっ、ガキども。魔女が疲れたって言ってるから、休める所行くぞ。大人しく案内しろ」
わんっと若い狼がひと鳴きすると、わらわらと集まってきた仔狼らが口々に言う。
「あんなーい? どこ?」
「魔女のこと、つれてくのー?」
小首を傾げて、若い狼に聞けば、「そうだ」 と端的な言葉が返るので。
わんわん。
「じゃあねー、僕のお気に入りの場所にいこー」
きゃんきゃん。
「俺の秘密の場所を教えてもいいぜ」
ばうわう。
「えー、ぼくのお気に入りの方が休めるよー」
きゃんきゃんと、総勢十五の仔らが騒ぐので、どうにも収集がつかない。
「あー……うん。お前らがやる気があるのはよく分かったが、全然わからん。だから俺のいいと思う所に連れて行く事にする」
若い狼は、仔狼ら落ち着かせるのを諦めて、そう言い切った。
「えー」
「なになに」
「それずるーい」
……夢の世界の二日目は、皆が伊都の……魔女の歓心を買う為に非常に盛り上がっているようだ。
肝心の伊都をかやの外に置いて、ではあるが。
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